欧州では天然ガスが最高値を更新
クリスマス休暇の中、先週(12月20日~)の米国株は上がりました。
11月からの下落はオミクロンショックとも言われましたが、タックスロス・セリング(年度末の節税売り)だったようですね。
(出所:TradingView)
そうであれば、欧米勢が戻ってくる今週(12月27日~)からは「January Effect(1月効果)」で上がるということになりますね。
コモディティで話題となっているのが、欧州の天然ガス価格高騰。
欧州での天然ガス価格の指標となる「オランダTTF」は過去最高値を更新しており、原油価格に換算すると300ドル台に達しています。
ドイツを苦しませる「三重苦」
ロシアが欧州向けの天然ガスを止めている、という話ですね。
ロシアの意図はまだ判然としないのですが、ウクライナ情勢も絡んでいるようです。
それに加えて、ドイツはフランスから電力を購入しているのですが、フランスの原子力発電所4基が技術的な問題で操業を停止。
ドイツでは風況が悪く、風力発電の効率も悪化。
三重苦が天然ガスを高騰させたようです。
天然ガス高騰と聞くと、買いたくなるのが豪ドル。
豪州の天然ガスはアジア向けが多いのですが、資源国通貨にはポジティブな材料となります。
また、IEA(国際エネルギー機関)は来年(2022年)の石炭需要が過去最高になるとの見通しを示しました。
脱カーボンに逆行しますが、中国やインドでの需要増が主な原因だそうです。
中期的に見ても、資源国通貨はやはり強いのではないでしょうか。
【参考記事】
●豪ドルには、年に1度の「イージーマーケット」のチャンスがまだある! 天然ガスで格差が鮮明な豪ドルは、対ユーロで買い方向!(10月4日、西原宏一&大橋ひろこ)
●豪ドル/円は、8月20日がターニングポイント! 「脱炭素」を追い風に、底堅くなる豪ドル/円を押し目買い!(9月27日、西原宏一&大橋ひろこ)
市場の注目戦略は米ドル/カナダドルの売り
今回は年内最後の更新ということで、来年の見通しについても話しておきましょうか。
大手銀行などは、米ドル/カナダドルの売りに注目しているようです。
エネルギー価格の高騰もあり、1.20カナダドルを大きく割り込んで、カナダドル高が進むと見られています。
一部では1.12カナダドルとのターゲットも出ています。
(出所:TradingView)
西原さんご自身の予想は?
近年の為替市場の特徴は、プライス・イン(織り込み)の速さです。
経済指標や金融政策などの予想が出た瞬間に織り込んでしまい、動きが続きません。
カナダは来年4回の利上げが予想されていますが、利上げ観測が少しでも後退すればむしろ売られるリスクもある。
その意味で、同じ資源国通貨でも、利上げがまだ織り込まれていない豪ドルを選択したいと思います。
【参考記事】
●【2022年の見通し】2022年も豪ドルに注目! 鉄鉱石の反発は、中国経済復活の兆しか? 豪ドルは主要通貨に対し、大きく上昇しそう(12月23日、西原宏一)
2%インフレ達成で日銀は出口の議論へ?
円についてはいかがでしょうか。
菅政権で大きく下がった携帯料金は、物価の抑制圧力となりました。
実際、携帯料金を除いたCPI(消費者物価指数)はすでに前年比2%を超えている、との試算もあります。
携帯料金値下げの影響が薄れてくる2022年3月以降、CPIが2%を超えてくる可能性もありそう。
そうなると、日銀では金融緩和の出口が議題に上がってくるかもしれません。
米ドル/円については米ドル高・円安予想が多く、その根拠とされるのは米利上げ。
ところが、米5年債利回りも米10年債利回り(米長期金利)も金利はさっぱり上がりません。
(出所:TradingView)
米利上げで米ドル高と言っても、「上がりそう」という織り込みの段階が一番反応しやすく、実際に利上げしてもそれほど上がらない傾向がありますね。
意外と来年は、1米ドル=110円を割るような場面があるかもしれませんね。
インフレ高進でECBにタカ派転換のリスク
もうひとつ注目したいのがユーロ。
ドイツの11月CPIは6%(前年比)まで達しており、さらに足もとでは天然ガスが暴騰しています。
インフレ圧力により、ECBがタカ派に転換するサプライズも一部では話題に。
このサプライズが起きれば、ユーロは大きく上昇するのでしょう。
インフレの高進リスクが高まっていますし、私も今すぐではないですが、ユーロは買い目線です。
ユーロ/米ドルは来年(2022年)が1.18ドルまで、2025年には1.30ドルをターゲットにする予想も出ています。
今すぐ買うわけではありませんが、来年のどこかでユーロ買いとなる場面が出てくるのでしょう。
(出所:TradingView)
来週の更新はお休みとなり、新年は1月10日(月)からの更新となります(※)。
お正月の為替市場は1月3日(月)から。
日本勢がお休みとなるためフラッシュ・クラッシュを警戒する声も出ています。
念のため警戒したいですね。
(※編集部注:2022年1月10日(月)は祝日のため、ザイFX!サイト上の当コーナーでは記事公開をいたしません。西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では1月10日(月)の祝日も西原宏一さん&大橋ひろこさんによる「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」を配信予定ですので、ぜひ、「トレード戦略指令!」の購読をご検討ください)
【参考記事】
●欧米のクリスマスイブは祝日? 取引所は休場? 2021年末~2022年のクリスマスや年末年始にFXの取引時間が変則的にならない理由とは?
●日本のFX投資家による円売りは過去最大。年末年始のフラッシュ・クラッシュに注意! 米ドル/円かNZドル/円の売りが良さそう(12月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
今年1年もありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いします!
(構成/ミドルマン・高城泰)
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