トルコCPIは急上昇。トルコは名実ともにハイパーインフレ国に
TUIK(トルコ統計局)は1月3日(月)に12月のCPI(消費者物価指数)を発表しました。12月のCPIは前年同月比で36.08%増となり、11月の21.31%増から急激に上昇し、2002年9月以来の高水準に。前月比では13.58%増となりました。コアCPIも31.88%増で記録的な伸びを見せました。
(出所:TUIK)
また、12月のPPI(生産者物価指数)は、79.89%増を記録しています。
(出所:TUIK)
データの中身を見ると、12月に価格上昇がもっとも大きかった項目は53.66%増の通運でした。原油高とトルコリラ安がダブルパンチになっているのが原因です。次に大きい項目は43.8%の食料・ノンアルコール飲料でした。
トルコのインフレ率は、TUIKの正式な数字では36.08%増ですが、実際にはすでに3ケタになっているのではないかと指摘している専門家もいます。
PPIの伸びが3ケタに近づいているので、私もその可能性が高いと思います。つまり、トルコは名実ともにハイパーインフレ国になりました。
【参考記事】
●【2022年のトルコリラ見通し】エルドアン大統領の新政策は、大失敗に終わる可能性。政権交代がなければ、本格的な上昇は難しい(2021年12月22日、エミン・ユルマズ)
エルドアン大統領のばらまき政策は、結果的にインフレをさらに加速させることになる。
トルコ政府は最近、一連の値上げを発表しています。トルコエネルギー市場監督当局は、2022年の電力価格を大幅に引き上げ、企業や生産者には最大で125%、一般市民には50%の引き上げを発表しています。同じくガソリンと天然ガスも20~50%の値上げが実施されました。
さらにエルドアン政権は、2022年の最低賃金を約50%引き上げ、4250リラにしました。また、公務員の給与も約30%賃上げされることになりました。最低賃金と公務員給与の引き上げは、高インフレ環境では妥当に見えますが、結果的にインフレをさらに加速させることになります。
エルドアン大統領のばらまきを賄える財源はトルコ政府にないので、結局、トルコリラを大量に印刷するしか方法はなく、これがインフレをさらに加速させる結果になるでしょう。
エルドアン政権は2022年の最低賃金を4250リラに約50%引き上げ。また、公務員の給与も約30%を賃上げされることに。ただ、トルコ政府に財源がないので、結果的にインフレをさらに加速させることになるという(C)Anadolu Agency/Getty Images
エルドアン大統領が最低賃金と公務員の賃上げを太っ腹に実施している背景に、今年(2022年)の夏に、解散総選挙をして勝ちたいという計画があると指摘されています。
確かにトルコリラにしても、トルコ経済全般にしても短期的に効果はあるけど、長期的に大きな被害しかもたらさない政策が次々に打ち出されています。
2022年前半は、安易なトルコリラの空売りに注意。慎重な強気スタンスが適切か
今週(1月3日~)のトルコリラですが、新年早々に軟調な展開で、米ドル/トルコリラは13.50リラ前後、トルコリラ/円は8.50円前後で動いていますが、個人的には今年(2022年)は安易にトルコリラを空売りすべきではないと考えています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
次の選挙はエルドアン政権にとっては生死に関わる問題です。そのため、ありとあらゆる手段を使って為替レートを操作しようとします。
12月に利上げをしないといいながら、ステルス利上げを行ったのと同様に、今後もどのタイミングで裏の手を使ってくるかわかりません。
また解散総選挙が発表された場合、政権交代期待でトルコリラは上昇する可能性が高いので、2022年前半のスタンスは積極的な弱気よりも、慎重な強気スタンスが適切だと考えます。
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