トルコのインフレ加速。実質金利はマイナス40%超!
TUIK(トルコ統計局)が2月のCPI(消費者物価指数)を発表しました。2月のCPIは市場予想を大きく超え、54.44%増となりました。前月比で見ても4.81%増と2月にインフレの勢いが加速しているのがわかります。
(出所:TUIK)
項目別で見ると、2月にKDV(付加価値税)の減税が行われているのにもかかわらず、食料価格の伸びは著しく、前月比で8.41%増となりました。年間ベースでは運輸価格が75.75%の上昇で、もっとも価格が上がった項目です。
(出所:TUIK)
今回の発表のもうひとつの注目ポイントは、PPI(生産者物価指数)が前年同月比で100%を超えた(105.01%増)ことです。これによってPPIとCPIの乖離が史上最大を更新しました。
また、政策金利(1週間物レポ金利=14.00%)とインフレ率の差が40.44%となっているのも前代未聞です。つまり、トルコの実質金利はマイナス40.44%ということになります。
(出所:TUIK)
ウクライナ情勢悪化で、トルコ政府のインフレ抑制策は効果薄。CPI上昇要因はエネルギーだけで説明できない
2月にトルコ政府は、インフレ抑制対策として食料品へのKDV(付加価値税)を8%から1%に下げました。これを受けて、インフレ率の上昇が少し鈍化するのではないかと期待されましたが、ウクライナ情勢の悪化でトルコ政府の対策が期待された効果を生んでいません。
トルコ中銀は足元のインフレをエネルギー価格の上昇が最大要因と説明していますが、トルコのコアCPI(食品とエネルギーを除いたCPI)は44.05%です。つまり、CPI上昇の要因をエネルギー価格の上昇だけで説明できません。
(出所:TradingView)
ロシアとウクライナの戦争によって、ありとあらゆるコモディティ(商品)の価格が高騰していて、世界的なインフレを起こしています。
トルコがウクライナとロシアを仲介へ。3月10日の3カ国外相によるアンタルヤ会談に注目
今週(3月7日~)のトルコリラは軟調で、米ドル/トルコリラは14.50リラ前後に上昇し、トルコリラ/円は8.00円前後のレンジに下がっています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
ウクライナとロシアの停戦に向けての交渉は続いていますが、3回目の会談を終えてまだ大きな進展がありません。これを受け、トルコが両国の仲介に名乗り出ました。トルコ、ウクライナとロシアの外相を含めた3者会談が3月10日(木)に、トルコの南方にあるリゾート都市、アンタルヤで行われます。
アンタルヤが交渉の場に選ばれたのは偶然ではなく、実はアンタルヤを訪れる外国人観光客のほとんどがロシア人とウクライナ人だからです。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】ロシアのウクライナ侵攻で、トルコの米国やEUとの関係が改善し、トルコ経済が安定する可能性も(3月2日、エミン・ユルマズ)
●【トルコリラ見通し】ウクライナ危機の長期化は、トルコ経済にも悪影響。平和的かつ短期的な解決が、もっとも望ましいシナリオ(2月16日、エミン・ユルマズ)
アンタルヤ会談で大きな進展がなくても、戦争開始以来、ウクライナとロシア両国の外相が初めて直接対話をすることになるのでとても重要です。トルコはロシアからのフライトを止めておらず、ウクライナを支援しながらもロシアとの距離を守ろうとしていて、欧米諸国とは違うスタンスをとっています。
両国の停戦交渉に進展があればトルコリラに限らず、すべてのリスク資産が反発するのでアンタルヤサミットに注目したいです。
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