トランプ政権の発表に翻弄されるマーケットが続く。NVIDIAの株価は最高値から約25%下落
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 今年(2025年)になって、トランプ政権の発表に翻弄されるマーケットが続いていますが、先週(3月3日~)は欧州で重要な相場の転換が起こっており、それがトレンドになり得るのではないかと考えています。
それではまず、株の振り返りからいきましょうか?
MC叶内 はい、先週は日米株ともに下落しています。
先々週(2月24日~)に引き続き、米関税政策の動向に振り回され、米国によるウクライナへの支援問題などで、ちょっと落ち着いては急落するという不安定な展開でした。
また、3月3日(月)のISM米製造業景況感指数が悪化するなど、景気への懸念もくすぶります。仕入れ価格指数が急上昇していたことで、スタグフレーションという言葉も聞かれました。
3月5日(水)はトランプ大統領の施政方針演説が行われました。歴代最長で、非常に主張の鮮明なものでしたが、市場全体に大きな反応はなく、日本株では造船株が急伸するなど個別材料を提供しました。
週末の雇用統計で、非農業部門雇用者数は15.1万人増と予想を下回り、失業率は予想外に4.1%に上昇しましたが、市場の一部が懸念したほどひどくないとの見方だったようです。
連邦政府の雇用者は6700人減にとどまっています。ただ、広範な失業を示すU6失業率は8%と、2021年10月以来の高水準です。
そんななか、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が講演で、米国経済の堅調さを強調したことは、株式市場に落ち着きを与えています。
週間ベースで米国株は3指数とも下落し、NYダウは2.37%、ナスダック総合指数は3.45%、S&P500は3.10%安となりました。S&P500の下落率は9月上旬以来半年ぶりの大きさです。関税政策をめぐる混乱が投資家心理の重荷になりました。
また、AI相場のけん引役だった半導体大手NVIDIAの株価は1月7日(火)につけた最高値から約25%下落したことも変調を表しています。

(出所:TradingView)
日経平均は再び週末に急落し、前週末比268円(0.7%)安の3万6887円と、3週連続で下落しました。チャート上はレンジを明確に下抜けしており、値幅・日柄とも調整がどの程度になるのかが注目されます。
為替市場はいかがでしたか。
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米ドル/円はトランプ大統領の円安批判コメントで急落。「ドイツの財政拡大政策発表」という強烈なユーロ買いのニュース
トレーダー西原 先週は重要なポイントが二つありました。
まず、3月3日(月)のNY市場の為替市場で注目が集まったのが、トランプ大統領による「日本と中国の通貨安政策」に対する批判です。
【※関連記事はこちら!】
⇒ユーロは「ゲームチェンジ」! ドイツの劇的な財政改革案を受け、ドイツ債が過去35年で最大の下落幅となり、ユーロ買いで反応。米ドル/円はトランプの円安政策批判で続落(3月6日、西原宏一)
トランプ米大統領は3日、日本と中国が通貨安政策を取るなら米国は「不当に不利な立場に置かれる」と述べるとともに、そのような場合、関税措置を講じる可能性を示唆した。
(出所:Bloomberg)
この発言を受けて米ドル/円の下落は加速し、一時146.95円まで急落しています。
米ドル/円は引き続き軟調な展開ですが、短期筋の円ロングがかなり増えているため、戻りを丁寧に待つ展開です。

(出所:TradingView)
もうひとつはユーロ。
トランプ大統領が議会演説で「ウクライナが鉱物ディールを望んでいる」とコメントしたとの報道を受け、ウクライナ停戦期待が再燃。これがまず、ユーロ/スイスフランを急騰させています。
過去のコラムでもご紹介させていただいているように、「ウクライナが停戦に向かうとユーロ/スイスフランは大きく反発する」というのがマーケットのコンセンサス。
【※関連記事はこちら!】
⇒為替市場は米国の関税政策と、ロシアとウクライナの停戦をめぐる報道で変動! ユーロ/米ドルやユーロ/円より、ユーロ/スイスフランに注目すべき理由とは?(2月13日、西原宏一)
そして、さらに重要なのが、「ドイツの財政拡大政策発表」という強烈なユーロ買いのニュースが出ていること。
これを確認しましょう。
ドイツ次期政権樹立に向けて連立交渉中の政党は、5000億ユーロのインフラ基金設立と、借り入れ規則の全面見直しで合意したと発表。
この報道を受け、ベレンベルク銀行のチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は「この発表はドイツが防衛に真剣であることを明確に示すシグナルになる」と指摘。「これは欧州を強化し、ユーロ高の支援となる」とコメントしています。
このドイツの大胆な財政改革案は、欧州の政策立案における大きな転換点として称賛され、同地域の株式や通貨、国債利回りを押し上げています。
過去5営業日の主要通貨の対ユーロ騰落率を見ると、ユーロ/米ドル、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)は全面高。

このユーロの反発は要注意です。
叶内さん、ここで今週(3月10日~)のイベントをご紹介していただけますか?
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ユーロ/米ドルの次のターゲットは1.1200ドルか。「ドイツ復活」という声が多数!
MC叶内 はい、今週のイベントスケジュールを確認します。
米国では物価指標に注目が集まりそうです。
3月12日(水)に米2月消費者物価指数(CPI)、3月13日(木)に米2月卸売物価指数(PPI)が公表されます。CPI総合は前月比+0.3%で8カ月ぶり、前年比+2.9%で5カ月ぶりに鈍化する予想。コアは前月比+0.34%、前年比+3.2%と、ともに2カ月ぶりの鈍化を予想しています。
3月14日(金)には米3月ミシガン大学消費者マインド指数、期待インフレ率も発表になります。
ほか、3月11日(火)には米1月雇用動態調査(JOLTS)求人件数、オラクル、アドビ、フォルクスワーゲンの決算発表もあります。また、つなぎ予算が週末に期限となります。
国内では、3月10日(月)に1月毎月勤労統計調査、3月11日(火)に10~12月期GDP確報値、3月12日(水)に1~3月期法人企業景気予測調査が発表されます。
マーケットが注目しているのが、3月12日(水)の春闘集中回答日です。一次集計は3月14日(金)に出ます。
3月14日(金)はメジャーSQ(※)。三井ハイテック、GENDA、神戸物産などが決算発表を行います。
(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと。株価指数先物は3月、6月、9月、12月の第2金曜日、オプション取引は毎月第2金曜日がSQ算出日となっている)
今週の株式市場は翌週(3月17日~)の日・米の金融政策決定会合を控え、神経質な値動きになりそうです。
日本の長期金利が1.5%台と15年ぶりの高水準になっている影響を、市場関係者が取り上げるようになりました。春闘の集中回答日が3月12日(水)になりますが、賃上げ率が6%になりそうだと伝わる中で、日銀利上げへの思惑が高まっています。
さらに日本の金利は、防衛費増強による財政赤字拡大の懸念から上昇している面もあるようです。ドイツからの連想でしょうか。
先週末は任天堂・ソニーなど海外勢が好みそうな銘柄の下落が大きかったことが気になります。ボラティリティの高まりでリスクポジションを落としているなら、まだその動きが続く可能性があります。
一方、米関税政策は「ディール」で安心することもありそうですし、ウクライナとの和解などあれば急戻しもあり得ます。
為替市場はいかがですか。
トレーダー西原 トランプ政権からの円安抑制コメントにより、米ドル/円のダウントレンドは変わらず。
ただ、短期筋の円ロングがかなり増えてきているため、丁寧に戻りを待って売りたいところ。
そして主役は、ゲームチェンジとなったユーロ。マーケットでは「Germany is back(ドイツ復活)」という声が多数。
ユーロ/米ドルは最初のレジスタンスでもある1.07~1.08ドルをブレイクしつつあります。次のターゲットは1.1200ドルでしょうか?

(出所:TradingView)
ウクライナ停戦の可能性が高まれば、ユーロ/スイスフランも続伸。関税のことを考えれば、ユーロ/カナダドルも大きく値を上げる可能性もあるため、ユーロ/米ドルに加え、ユーロクロスにも注目でしょうか?
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレーディングを楽しんでいきましょう!
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