トランプ勝利は金融関係者のコンセンサスどおりだったが、圧勝は想定外。「トランプ2.0」が始まる
みなさん、こんにちは。
今月(11月)、いや今年(2024年)最大のイベントとも言える米大統領選が先週(11月14日~)、トランプさんの圧勝で終わりました。
ただ、時期を同じくして欧州で重要な事件が起こっています。
1つずつ確認していきましょう。
注目の米大統領選は「稀に見る接戦!」とメディアが報道していましたが、金融関係者の多くは「トランプさんの勝利」と考えていました。
結果は、金融関係者のコンセンサスどおり、トランプさんの勝利で終了。ただ、想定を大きく超える圧勝という結末でした。
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⇒米ドル/円、豪ドル/円の上昇に注目! 「トランプノミクス2.0」はリスクオン要因で、S&P500は最高値を更新、選挙翌日として過去最高の上げを記録。基本は株高・円安(11月7日、西原宏一)
米国のメディアで「米国民はトランプが嫌いだが、不法移民はもっと嫌いというムードが拡大している」と解説していたところがありましたが、米国の友人達に聞いても、そう考えている人が多いといった印象。
ともあれ、マーケットは「トランプ2.0」がスタートするということになります。
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トランプ2.0とはビットコイン高、テスラ株高、ゴールド安
トランプ2.0とはなんでしょうか。
まず、トランプさん勝利で一番急騰したのは、株でも米ドルでもなくビットコインで、初めて9万ドルを突破しました。
本稿執筆時点でのビットコイン/円で1400万円レベルに急騰しています.
(出所:TradingView)
ビットコイン/円は数年かけて1000万円を超えるのかなと考えていましたが、トランプトレードやトランプ2.0により、1000万円を軽く突破。
仮想通貨(暗号資産)の急騰は、次期米大統領のトランプさんがデジタル資産を受け入れていることに加え、仮想通貨に理解のある議員が米議会に多数選出される見通しとなったことが追い風になっている模様。
そしてテスラ株。
11月8日(金)のテスラ株終値は321ドルと、米大統領選投開票日の11月5日(火)から30%近く急騰(30%ですよ、30%!!!)。
(出所:TradingView)
次期政権でマスク氏の要職起用も取り沙汰されており、支援への見返り期待が高まっています。
もうひとつはゴールド。トランプさんの返り咲きを受けた米ドル高進行がゴールドを押し下げています。
(出所:TradingView)
ユーロ/米ドルの下落が顕著に。ドイツの政治的混乱とトランプ2.0で
為替は基本、米ドル高基調。
基本という表現をしたのは、米ドルよりもっと明確にトレンドを示しつつある通貨があるからです。
それはユーロ。
主要通貨の月初来の対ユーロ騰落率を見てみると、ユーロはすべての主要通貨に対して大きく値を下げています。
トランプ2.0では米ドル高ばかりが注目されていますが、米ドルに対して円安が進行しているスピードより、ユーロ/ドルの下落が顕著になっており、ユーロ/円が値を下げています。
ユーロ下落のきっかけは、まず先週末、ドイツ連立政権が崩壊したこと。
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⇒FXではユーロ安がトランプトレードのメインかも。ドイツの連立政権崩壊と、関税回避目的でドイツ企業に米国への投資圧力がかかるとの予想から、ユーロ/米ドルが下落!(11月11日、西原宏一&叶内文子)
ドイツの社会民主党(SPD)を率いるショルツ首相は先週、連立を組んできた自由民主党(FDP)のリントナー財務相を解任。「SPDとFDP、緑の党の3党」で構成する連立政権が崩壊しました。
これを受けて、ショルツ首相に対し、1月に国政選挙を行うよう求める圧力が高まっています。
最新の世論調査では、有権者の3分の2が早期の選挙を行うことを望んでおり、ドイツの政局は不安定な状況に陥っています。
加えて、米大統領選挙でトランプさんが歴史的勝利を収めたことで、トランプ2.0が始まったこと。
トランプ2.0では、ドイツ企業に関税回避の目的で米国への投資を増やすよう圧力がかかることが予想されています。
最近のドイツは、高いエネルギー価格と時代遅れの技術と官僚制度が問題になっています。
ドイツ企業も業績が悪化しています。
例えば、過去のコラムでも取り上げた、自動車大手フォルクスワーゲンは以下のように報じられています。
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⇒ユーロ/円の下値余地拡大に警戒! 今年前半の「円売り」が沈静化し、米連続利下げは米ドル/円の売り材料に。欧連続利下げとドイツ経済失速がユーロ/米ドルの上値を抑える(9月12日、西原宏一)
独VW、国内で大規模人員削減し3工場閉鎖へ 労組幹部表明
ドイツの自動車大手フォルクスワーゲンは、予想を上回る大幅な事業再編を計画しており、国内で少なくとも3つの工場を閉鎖し、数万人の従業員を削減する方針であることが28日、労働組合幹部の話で明らかになった。残りの工場も恒久的に縮小される見通しという。
VW事業所評議会のダニエラ・カバロ委員長はウォルフスブルクで数百人の従業員に対し、「経営陣はこの件に関して完全に本気だ。労使交渉における脅しではない」と指摘。ドイツ最大の企業グループであるVWが国内での事業や資産の売却を開始するための計画だと述べた。
(出所:ロイター)
このように、ドイツの政治的混乱と米大統領選でトランプさんが歴史的勝利を収めたことにより、ドイツ企業には関税回避の目的で米国への投資を増やすよう圧力がかかることが予想されています。
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トリプルレッドでトランプ2.0がさらに強固に。ユーロ/米ドルは戻り売りで、目標はパリティ(1.00ドル)か
加えて、本稿執筆時点でトランプ2.0がさらに強固になる報道が入って来ました。
それはトリプルレッド。
米下院選で共和党が多数派を維持する見通しとなったとNBCとCNNが報じています。
赤をシンボルカラーとする共和党が、上院の支配を民主党から奪還すると、ホワイトハウスに返り咲くトランプさんと合わせ、いわゆる「トリプルレッド」が実現し、トランプ2.0が強固されることになります。
結果、ユーロにはさらに売り圧力がかかることになります。
ユーロを売る通貨ペアは、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)でもいいのですが、米ドル高の側面もあるため、注目はユーロ/米ドル。
本稿執筆時点では、今年の安値であった1.0601ドル水準をクリアに割り込み、1.0560ドルレベルで推移。次のサポートは2023年の安値1.0448ドルとなります。
(出所:TradingView)
ゴールドマン・サックスやJPモルガンがユーロ/米ドルの目標値を下方修正しており、パリティ(1ユーロ=1.00ドル)の目標値が増えてきています。
トランプ2.0とは、ビットコイン高、テスラ株高、ゴールド安。
そして為替においては、ドイツの政治的混乱もあり、ユーロ/米ドルの戻り売り。目標はパリティでしょうか。
(出所:TradingView)
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