昨日の海外市場でドル円は、中国による米国債保有に関する報道を受けて全般ドル売りが進み一時155.52円まで弱含んだ。ハセット米国家経済会議(NEC)委員長が「雇用者数については、国内総生産(GDP)の伸びと整合する、わずかな減少を想定しておくべきだろう」などと発言したことも重しになった。ユーロドルは、全般ドル売りが優勢となる中で、ハト派のビルロワドガロー仏中銀総裁が突然の辞任を表明すると1.1927ドルまで強含んだ。
本日の東京時間のドル円は、ドル安と円安という二つの力を同時に睨みながらの神経質な取引となりそうだ。前日比ではドル円が反落しているものの、ユーロ円やスイスフラン円は依然として円の過去最安値圏での推移が続いており、円安地合いが急変するとは考えにくい。円全面安の流れは、なお底流として残っている。
昨日は「中国の規制当局が主要銀行に対し、米国債の新規購入を制限し、既存の大規模ポジションの削減を指示した」との一部報道がドル売りを誘った。真偽は定かではないが、トランプ政権が内外で生み出してきた混乱が、米国離れ・ドル離れにつながっている構図自体に変わりはない。しかもこの混迷は収束する気配を見せるどころか、新たな問題が次々と表面化し、状況はむしろ混とんの度合いを強めている。
既報の通り、エプスタイン・ファイルを巡ってはラトニック米商務長官の辞任を求める声が強まりつつある。英国では、駐米大使がエプスタインと緊密な関係にあったことが判明し解任されたうえ、その任命を強く推したスターマー首相の首席補佐官も辞任に追い込まれた。国は異なるものの、投資家のからは、こうした動きが米政権中枢にも波及する可能性は否定できず、米国離れの一因となり得る。さらに、内部告発を受けているギャバード国家情報長官が、3月18日に上院情報委員会で公に証言する予定と昨日には報じられるなど、トランプ政権中枢に位置する人物が次々と表舞台で説明責任を迫られる展開は、ドル売り要因として重く意識されやすい。
もっとも、ドル売り一辺倒ではなく、円売り要因もなお根強い。週末の衆議院選挙で自民党が圧勝したことで、これまで市場を主導してきた高市トレード(株高・円安・債券安)は引き続き意識されやすい。政治的不透明感の後退は、リスク選好の流れを後押ししやすい環境にある。ただし、今後も高市政権が積極財政路線を維持するのか、それとも選挙勝利を機に飲食料品の消費税ゼロなどの公約を見直し、放漫財政との批判を回避する方向へ舵を切るのかは、市場が次に見極める重要なポイントとなる。財政スタンス次第では、高市トレードに修正が入る余地も残されている。なお、高市首相は8日、内閣発足から3カ月という短期間での解散総選挙を踏まえても、第1次内閣からの閣僚交代は行わない考えを示しており、当面の政権運営に対する安心感は維持されている。
また、昨日片山財務相は「消費税減税は赤字国債に頼らないことが選挙公約」と述べ、現時点では飲食料品を2年間に限り消費税の課税対象から除外する検討を加速する姿勢を示した。為替市場では過度な円安期待の反動から円の買い戻しが進んだが、債券市場では2年債利回りが1996年5月以来の高水準を記録し、5年債利回りも過去最高水準へ上昇するなど、債券売りの流れは鮮明だ。財源の不透明さを抱えたまま積極財政が継続されるなら、ポジション調整を挟みつつも、円安基調そのものを転換させるのは容易ではないだろう。
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