昨日の海外市場でドル円は、英米市場が休場だったことから市場参加者が激減し、狭い範囲内での値動きに終始した。NY時間の安値は158.88円、高値は158.96円で値幅は8銭程度と非常に小さかった。ユーロドルは、米国とイランが戦闘終結で近く合意することへの期待からユーロ買い・ドル売りが入ると、22時前に一時1.1653ドルと日通し高値を付けた。
本日の東京市場でも、ドル円は159円を挟んだ狭いレンジ内での取引が予想される。ただ、米イランの和平交渉を巡る報道や、政府・日銀による円買い介入への警戒感などを背景に、不意に市場が動意づくリスクには注意しておきたい。
先週以降、市場では米国とイランの和平交渉進展への期待感が高まり、原油先物価格は上値の重い展開が続いている。株式市場でもリスク選好地合いが強まり、昨日の日経平均株価は65000円台まで上昇するなど堅調に推移した。一方で、為替市場では、これまで進んでいたドル買いの巻き戻しは限定的なものにとどまっている。
実際、先週の週初18日から昨日までのドル円は、18日につけた158.54円を安値に、高値は21日の159.34円と、1円にも満たないレンジでの取引が続いている。今後は、このレンジをどちらにブレークするかを意識した取引になりそうだ。
まず注目されるのは、先週から過度に期待感が高まっている米国とイランの和平交渉の行方だろう。為替市場が原油先物市場ほど敏感に反応していない背景には、トランプ政権の発言がこれまで二転三転してきたことで、交渉進展への信頼感が限定的であることが挙げられる。
トランプ大統領をはじめ政権メンバーは交渉進展を強調しているものの、依然として両国の隔たりは大きい。濃縮ウランを巡っては、米国が放棄を求める一方、イラン側は平和利用目的の核開発は権利だと主張している。制裁解除についても、米国は段階的な緩和を想定しているのに対し、イラン側は凍結資産返還を含めた全面的な解除を求めている。また、ホルムズ海峡を巡る問題でも双方の認識には隔たりが残る。
もっとも、イラン側からも交渉進展を裏付ける発言などが確認されれば、為替市場でもドル売りによる巻き戻しが強まる可能性がある。一方で、イラン側は過去2年間交渉を継続する中でも一方的な攻撃を受けてきた経緯があり、パフラヴィー朝時代を含めた対米不信感も根強い。このため、交渉決裂となった場合には、再びドル買いが強まりやすい点には注意が必要だ。
また、円相場については、高市政権による財政拡大路線への警戒感から、依然として円売り圧力が意識されている。米国によるイラン攻撃後は、補正予算編成による財政悪化懸念も重なり、円売り地合いがドル円の下支え要因になりやすいだろう。
さらに、先週末には高市首相と植田日銀総裁の会談が行われたことで、日銀の金融政策運営が政権の意向に左右される可能性も改めて意識されている。来週3日に予定されている植田総裁の「きさらぎ会」での講演は、6月の日銀金融政策決定会合を占ううえで重要な材料となりそうだ。
昨年11月中旬の初会談時には、市場で12月利上げに向けた環境整備との見方が広がり、その後、日銀は実際に12月利上げを実施した。一方、今年2月中旬の会談時には、10−12月期GDP速報値を背景に追加利上げ観測が高まっていたものの、その後は「高市首相が追加利上げに難色を示した」との見方が市場で広がり、結果的に3月利上げは見送られた経緯がある。来月16日の日銀金融政策決定会合に向けては、日銀関係者の発言や報道にも注意を払いたい。
なお、円安が進行した場合には、政府・日銀による円買い介入への警戒も怠れない。4月後半に実施された今年1回目の円買い介入から1カ月も経たないうちに、その効果は徐々に薄れつつある。為替当局としても、急速な円安進行は避けたいとの思惑が強いとみられ、相場が一方向に振れた際には警戒感が高まりやすいだろう。
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