米ドル/円は大規模介入実施後に膠着。米国とイランが合意に近づき、株価は上昇
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 先週(5月18日〜)の為替マーケットに大きな動きはなし。
通常、大規模介入が実施された後の為替マーケットは動かなくなる傾向がありますが、先週はまさにそういう週だったようです。
しかし、先週末に米国とイランが合意に近づくといった報道もあり、今週(5月25日~)のマーケットはボラティリティが高まることが期待されます。
それでは叶内さん、さっそく先週の株の振り返りからお願いします。
MC叶内 S&P500は前週末比0.88%高で8週連続上昇。2023年12月以来最長記録です。5月14日(木)につけた最高値にあと0.37%に接近。
NYダウは2.1%の上昇で、木曜(5月21日)、金曜(5月22日)と連日で最高値を更新しました。和平期待で幅広い銘柄が買われたとともに、半導体も上昇したのが面白いところです。半導体株指数SOXも最高値をつけています。ナスダック総合指数は0.5%高です。
日経平均は前週末比1929円(3.1%)高の6万3339円と、2週ぶりに上昇し、最高値を更新しました。
週前半は米イラン和平期待が後退し原油価格が上昇、インフレ懸念から金利が世界的に上昇。国内債券市場で長期金利が約29年ぶりの高水準、米国30年債は節目の5%を超えました。これが株式市場を圧迫。AI半導体関連が売られ、S&P500は火曜(5月19日)まで3日続落、日経平均は水曜(5月20日)に6万円の大台を割り込みました。
週後半は一転リスクオンムードに。トランプ大統米領が水曜、イランとの交渉は最終段階にあると述べ、イラン側からも両国間の溝が「一定程度」狭まったとの見方が示されたとの報道を好感しました。和平期待が戻り、原油価格が下落、金利上昇が一服し、株にも買い戻しが入りました。所謂「恐怖指数」、VIXは16台まで低下し、2月2日(月)以来の水準となっています。
また、米スペースXが5月20日(水)、6月の新規株式公開(IPO)に向けた目論見書を公開、OpenAIが早ければ週内にもIPO申請と伝わったことも投資家心理を明るくしたようです。アンソロピックも年内上場との報道です。
水曜には米エヌビディアが決算を発表し、一部の高い期待には届かなかったようですが大幅な成長見通しを出し、市場が穏当な反応を見せたことが安心材料となりました。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 日経平均が史上最高値を更新し、株式市場は活況なマーケットが続いていますが、米ドル/円相場は膠着。前述のように大規模介入が入った後のマーケットは、動かなくなる傾向があります。
たとえば、2011年のSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])の暴力的な無制限介入。
2011年9月6日(火)、SNBはユーロ/スイスフランの最低レートを1.20スイスフランに設定し、「無制限に」外貨買い介入を行うと宣言。マーケットはすぐに追随し、数分以内にレートは1.10スイスフランから1.20スイスフランへ急騰しました。
米ドル/円でいえば数分で10円急騰というより、むしろワープした展開です。
その後、SNBは「1スイスフランも1.2000スイスフラン以下は容認しない」とコメントしたため、無制限介入後3年強もの間、ユーロ/スイスフランは1.2000スイスフラン前半で膠着したことがあります。

(出所:TradingView(トレーディングビュー))
今回の介入は、当時のSNBと比較できる規模のものではありませんので、早晩動意をみせるとは思いますが、GWの政府・日銀介入の余波で、先週の米ドル/円マーケットは膠着。
他通貨もイラン戦争の動向がはっきりしないため、動きようがなく、米ドル/円に追随するように、主要通貨に大きな動きはなし。
ただ先週末、イランと米国に停戦の動きが出てきたため、今週の為替マーケットは活況づくかもしれません。今週の展望は後ほど。
それでは叶内さん、今週のイベントと株の注目点をお願いします。
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米ドル/円の短期160~161円ブレイクは難しそう。160円を意識させるとストップロスが大きくなり、最後は投機筋に崩される
MC叶内 5月25日(月)は米国がメモリアルデー、英国がバンクホリデー、そのほかも休場が多いです。
中東情勢をめぐる情報が交錯しています。ホルムズ海峡の封鎖が続けば実体経済への影響が大きくなるとの不安もあり、トランプ米大統領の発言などには一応注意です。
債券市場、金利の上昇が注視されるなか、5月22日(金)にFRB(米連邦準備制度理事会)の新議長に就任したケビン・ウォーシュ氏は、自らの指揮の下で「改革志向」の政策運営を進めると表明しました。今後の手腕に注目が集まります。
5月27日(水)には日銀植田総裁が国際コンファランスであいさつする予定です(翌週6月3日(月)はきさらぎ会で講演します)。米2年・5年・7年債の入札もあります。
また、今週は金利に直結する物価関連指標もあります。5月28日(木)に米PCEデフレータ、5月29日(金)には5月東京都区部CPI(消費者物価指数)が発表されます。5月27日(水)の4月企業向けサービス価格指数もチェックしたいです。
その他経済指標では、5月28日(木)に米1~3月期GDP改定値、米4月新築住宅販売件数が発表。国内では5月29日(金)に4月失業率・有効求人倍率が発表されます。
決算発表では、5月27日(水)のセールスフォース・ドット・コムがSaas関連で注目度が高そうです。コストコ・ホールセール、ダラー・ツリーの小売も気になります。国内では5月25日(月)に芝浦機械、5月29日(金)にトリケミカル研究所が発表予定です。
為替市場の見通しはいかがですか?
トレーダー西原 米国とイランがホルムズ海峡再開に向けた合意に近づきつつあるとの認識を、複数の米政府高官が示したと報じられています。
主要論点の文言に関して協議を続けており、双方が最終的な承認を得るまでに数日を要する可能性があるとされていますが、トランプ米大統領は「米国としてイランとの合意を急ぐつもりはない」とコメント。双方が「適切な内容に仕上げる」ために時間をかける必要があるとしているようです。
ヘッドラインだけ見ていると戦争終結という印象を受けますが、まずホルムズ海峡の開放に関して合意し、その後、核問題について詳細な議論に入るという流れのようです。
ホルムズ海峡がいったん開放されるのであれば、最初の反応は米ドル売りになりますが、トランプさんの戦争終結コメントはこれまで何度もTACO(※)ってきました。加えて、戦争が終結しても、破壊された多くの施設が即回復できるわけでもないため、このヘッドラインだけでは一気に米ドル安転換というのも難しい。
(※編集部注:TACOとは「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもビビってやめる)」の頭文字をとった言葉のこと。FT(フィナンシャル・タイムズ)のコラムニスト、ロバート・アームストロング氏が「TACO理論」として考案した)
視点を米ドル/円に移すと、政府・日銀はGWのマーケットの薄いところで、介入しています。
本日、東京市場は開いていますが、NY市場を筆頭に主要マーケットが休みで流動性が薄いため、介入する可能性もあるとの意見も報道されていますが、これはまずないとは思います。
しかし今回、4月30日(木)に政府・日銀が介入したときはいつもと違っていました。
通常、介入はマーケットが荒れており、ボラティリティが急騰している時に実施されます。ところが、4月30日(木)のマーケットは極めて静かなマーケットで、いきなりサプライズ的に介入したため、本日も介入には一応警戒しています。
今回の介入手法で、中期的にちょっと問題になるのでは?と思ったのが、この極めて静かなマーケットで介入したこと。
つまり政府・日銀は、過度な変動を抑えるためというより、米ドル/円の160円というレベルを意識して介入を行っているという印象を投機筋に与えたこと。
介入ラインを意識させることは短期では効果がありますが、前述のSNBを筆頭に、最後は投機筋に崩されてしまうため、マーケットにあまり水準を意識させないほうがいいと考えます。
たとえば「政府・日銀が米ドル/円の160円を死守しようとしている」との報道が増えたとしましょう。そうすると、普段まったく米ドル/円のトレードをしない参加者、たとえば、アフリカの参加者まで米ドル/円市場に参入します。米ドル/円をショートにするため、米ドル/円の161.00円や162.00円のストップロスが巨大となり、最後は急騰してしまいます。

(出所:TradingView)
ともあれ、米ドル/円が再び155円を目指して反落するためには3つの条件があります。
それは、(1)イラン停戦、(2)米国が協調しての介入、(3)日銀の連続利上げの3つです。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円155円割れの条件は「イラン戦争終結と原油安」「日銀の利上げ」「米財務長官の協力」の3点! ベッセント氏が単独介入での円安抑制の難しさをよく知るワケは?(5月21日、西原宏一)
(1)イラン停戦
イラン停戦に関してはまさに現在報道されているため、この行方を追っていきたいところ。
(2)米国が協調しての介入
前述のSNBのように、単独介入がどれほど巨額であっても中期では効果がありません。米国の協調ですが、これについては1月、NY連銀にレートチェックを依頼したベッセント米財務長官の判断にかかっています。
(3)日銀の連続利上げ
年内に日銀が1回程度の利上げを行うのはマーケットは織り込み済み。米ドル/円の方向性を変えるには、今後3~4回の利上げが必要と言われています。
仮にそこまで連続利上げが実施できなくても、早晩利上げを実施しなければ、「日銀が金融政策を正常化すれば、自然と円高になる」と何度もコメントしているベッセント米財務長官の協力が得られなくなるため、日銀の早期利上げは必須。
これらのどれかが現実化しなければ、再びマーケットは米ドル/円の160円ブレイクを目指すことになり、単独介入が失敗すれば、一段と円安が進むリスクが進行する公算が高まるため、要注意です。
ともあれ、短期で160.00~161円をブレイクするのは難しいと想定していますので、
戻り売りは継続します。

(出所:TradingView)
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう!
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