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ロンドン発!松崎美子のFXマーケットレター

米ドルは新たな方向性を示すのか?6月のFOMCでウォー
シュ新体制が始動!パウエル体制を否定!?マーケットが
考える「ポスト・パウエル時代」の金融政策とは?

2026年05月26日(火)08:00公開 (2026年05月26日(火)08:00更新)
松崎美子

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ウォーシュ新FRB議長に市場は利上げリスクを意識

 先週(5月18日~) 正式にFRB(米連邦準備制度理事会)議長へ就任したウォーシュ氏に対し、市場では早くも「ウォーシュFRB」がどのような金融政策を展開するのか、その分析が始まっています。

 興味深いのは、トランプ政権が「利下げをしてくれるFRB議長」としてウォーシュ氏を選んだと考えられていたにもかかわらず、足元の債券市場ではむしろ「利上げリスク」が意識され始めていることかもしれません。

急変した金融政策の方向性

 わずか数カ月前までは、年末に向け(連続)利下げを織り込んでいました。しかし現在は、「年内利上げ」の可能性まで語られ始めています。

(出所:CME

 この急変の背景には、中東情勢悪化によるエネルギー価格上昇、AI投資ブームによる資産価格上昇、そして予想以上に底堅い米国景気があります。

 特に債券市場は、ウォーシュ氏が「インフレ抑制の信認」を何より重視すると見始めているようです。

「FRB哲学」まで踏み込むウォーシュ体制

 私が考えるウォーシュ新体制は、単なる「議長交代」ではなく、インフレの定義やQE(量的緩和)策の是非などを問い直す転換点になるだろうという点です。

 特に興味深いのは、ウォーシュさんは単なる「タカ派」ではなく、インフレには非常に厳しいが、できれば利下げ余地を確保したいので、インフレの指標変更も視野に入れている事かもしれません。このインフレ指標の変更が実現すれば、マーケットにとって非常に難しい相場になります。

パウエル体制への明確な否定?

 ウォーシュさんの発言を振り返ると、その根底にあるのは「パウエルFRB体制への強い問題意識」と言えるかもしれません。

 米上院での公聴会では「4~5年前の致命的政策ミスの後遺症が今も残っている」と述べており、これは明らかにパンデミック後にFRBが行った超金融緩和政策を指していると思われます。

 2008年世界金融危機以降、FRBはゼロ金利政策とQE策を繰り返し、その後のコロナ危機では多額の資金供給を実施しました。マーケットは「(米国で)問題が起きれば、FRBが助けてくれる現実」に慣れ切っていました。

 その結果、株式や不動産、債券価格は急騰した一方で、一般家庭は深刻なインフレに苦しむことになったのです。

「金利」より「マネーサプライ」?

 ウォーシュさんのFRB体制の特徴になるかもしれないのが、「マネーサプライ重視」という姿勢です。

 ここ数年に渡りFRBは、雇用統計やコアPCE(個人消費支出)など「2つの責務」に関連する指標を中心に政策判断を行ってきました。

 しかしウォーシュさんは、インフレの本質は「貨幣量」にあると考えているようで、今後 この議論が活発になるかもしれません。

「インフレ指標変更」という政治的な問題

 私をはじめ市場関係者が注目しているのが、「インフレ目標判断の際に使用するインフレ指標を変えるのではないか」という観測です。

 現在FRBが使用しているインフレ指標は、「コアPCE」(インフレ率から)食品とエネルギーを除外した物価指標ですが、ウォーシュさんは、「Trimmed Mean PCE(トリム平均PCE)」をより重視する考えを示しているようです。

 これは価格変動の大きい項目を除外する手法で、数値はコアPCEよりかなり低いのが特徴です。

 もしウォーシュFRBが本気でこちらをインフレ指標に導入すれば、2%インフレ目標を早期に達成するかもしれません。しかし私は個人的に「ゴールポストを動かしているだけではないか?」と批判したくなります。

 これを機に他の中央銀行でも同様の動きが続けば、中央銀行の金融政策そのものが政治色の強いものになるような気がしてなりません。

トランプ大統領との距離感

 「政治色」という単語が出てきましたが、トランプ政権との距離感も難しいものになりそうですね。

 トランプ大統領はウォーシュさんの就任式で、「完全に独立して動いて欲しい」と発言しながらも、「FRBメンバーはウォーシュ議長の話を聞くだろう」と述べており、期待を隠していません。

 果たしてウォーシュさん自身が、トランプ大統領の言いなりになるのか?その点にもマーケットの関心は高まっています。

バランスシートの縮小

 ウォーシュ議長は一貫して「FRBの6兆7000億ドル規模のバランスシートは肥大化しすぎている」と批判しており、これを長期的に縮小していく(QT策)姿勢を隠しておりません。

 これは中長期的に米ドルの供給を絞る意味があり、基本的には米ドル高を支援する要因と私は認識しています。

 ただ、実際の為替相場では、今後のQT策の動きと、トランプ大統領からの利下げ圧力、さらには現在のインフレ環境やインフレ指標の変更の可能性などが複雑に絡み合って動いており、米ドル高と米ドル安の材料が同時に飛び交うため、トレンドが分かりにくくなっているのが現状です。

 6月にウォーシュ議長として初めてのFOMC(米連邦公開市場委員会)が控えています。ここで同議長がQT策のペースや利下げについてどう語るかで、米ドルの進路がよりハッキリしてくるはずです。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView

新しいFRBの始まり

 ウォーシュ議長は、単なるパウエル元議長の後任ではなく、インフレ指標見直しやFRB独立性の再定義、トランプ政権との新たな関係といった多くのテーマ、実験を始めようとしているように私の目には映ります。

 そしてマーケットも、その実験の一挙手一投足を慎重に見極めようとしているのかもしれません。マーケットの方向性は時間とともにクリアになってくるでしょうが、年後半のマーケットは神経質な動きになる気がしてなりません。

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