昨日の海外市場でドル円は、米・イランの戦闘終結に向けた交渉進展への楽観が後退し、原油先物の買い戻しとともにドル買いが強まり、一時159.38円と4月30日以来の高値を更新した。ユーロドルも1.1616ドルまで弱含んだ。
本日の東京市場でも、ドル円はレンジ取引に終始する可能性が高い。ただ、引き続き米国とイランの和平交渉を巡る報道や、本日予定されている植田日銀総裁の発言を受けて、来月の日銀金融政策決定会合への思惑が高まる可能性もあり、市場が急速に動意づくリスクには警戒を怠らないようにしたい。また、円以外では本日は豪州の月次消費者物価指数(CPI)が発表されるほか、NZ準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が政策金利を公表することで、オセアニア通貨は神経質な動きになることが予想される。
先週から高まっている米国とイランの和平交渉進展期待については、昨日は米中央軍がイランのミサイル発射基地などを攻撃し、イラン革命防衛隊が米国の無人機1機を撃墜するなど、交渉進展への期待がやや後退している。モジタバ・イラン最高指導者が「米国の中東の基地に、もはや安全な避難場所はない」と発言し強硬姿勢を示しているだけではなく、穏健派とされるアラグチ・イラン外相も、米国側による度重なる停戦合意違反を受け「米国によるイラン艦船への攻撃は停戦合意違反である」と厳しく非難している。また、和平には消極的とされるイスラエルがレバノンへの攻撃強化を発表していることもあり、交渉進展への期待が徐々に後退すれば、原油先物価格が再び100ドルを上回り上昇基調に戻ることで、ドルも一段高となる可能性が高まりそうだ。
そもそも和平交渉は、トランプ政権にとって国内ガソリン価格が依然として異常水準とされる1ガロン4.5ドルを上回るなど、高インフレによる支持率低下や、中間選挙での大幅な議席減少リスクが高まっていることを背景に、米国側が国内事情を優先し早期収束を急いでいる面もある。
一方で、イラン側は国内指導部内でも一枚岩ではなく、時間的な切迫感も乏しいことから、合意にはなお時間を要する可能性が高い。濃縮ウラン問題や制裁解除、ホルムズ海峡を巡る問題など、依然として相違点は多いとされており、仮に停戦期間の延長などで一致した場合でも、根本的な解決には程遠いとの見方も少なくない。本日も交渉関連の報道次第で、ドル円は上下どちらにも振れやすい展開となりそうだ。
本日国内で注目されるイベントは、日本時間9時から日本銀行主催で行われる国際コンファランス「金融政策の新たな視野」での植田日銀総裁の挨拶だ。先週末に高市首相と植田総裁の会談が行われたことで、過去の会談同様に政府側との政策認識を共有した可能性もあり、植田総裁が6月の日銀金融政策決定会合に向けた一定の方向性を示唆する可能性がある。
これまでも、昨年11月中旬に行われた初会談では、10月下旬にベッセント米財務長官が訪日し、日銀の利上げを促したとされることもあり、会談後には高市首相も利上げを容認したとの見方が広がった。その後、日銀は12月に利上げを実施した。一方、今年2月中旬の会談時には、同日に10−12月期GDP速報値が発表されたことで、景気や追加利上げ観測が市場テーマとなっていた。しかし、その後は「高市首相が追加利上げに難色を示した」との報道や分析が広がり、結果的に3月利上げは見送られた。今回も、今月中旬にベッセント米財務長官が訪日していたこともあり、再び金融正常化を促した可能性が指摘されている。
オセアニア両国に関しては、まず日本時間10時半に豪州の4月CPIが発表される。豪準備銀行(RBA)は、月次CPIについて四半期CPIバスケットの6〜7割程度しか反映されていないことから、四半期ベースの指標を重視している。ただ、3月CPIは前年比4.6%まで上昇しており、高止まりが続いている。4月CPIも市場予想(4.4%)を上回るようであれば、豪金利の先高観が強まり、豪ドルが底堅さを増す展開となりそうだ。
また、豪州CPI発表後まもなくとなる11時には、RBNZのMPCが政策金利を発表する。市場予想では、前四半期GDP成長率が0.2%にとどまっていることなどを背景に、政策金利は現行の2.25%で据え置かれる見通しとなっており、焦点は声明文の内容となる。金融市場では、インフレ加速や世界的な供給ショックを背景に、年後半からの利上げ開始を織り込み始めている。声明がタカ派寄りとなればNZドル買いで反応し、逆にハト派色が強まればNZドル売りが優勢となるだろう。
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