■成長戦略がマーケットを満足させないのはなぜか?
昨日(6月6日)、米ドル/円は急落した。一時95円台まで安値をつけていたが、前回の筆者のコラムをご覧になった方なら、大したサプライズを感じないだろう。
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何しろ、行きすぎた円安トレンドは常に修正されるものだから、円高の流れが継続していくのも当然の成り行きである。
材料面では、安倍政権が放った第三の矢、すなわち成長戦略があまり評価されていないのも、想定範囲内だ。
トレンドが先で材料が後についていくという筆者の持論からすれば、成長戦略の中身がマーケットを満足させていないことは、事前に想定できた。
なぜなら、株も為替も反落トレンドにあるから、成長戦略自体、なかなかマーケットに評価されない運命にあるからだ。異次元の金融緩和と大胆な財政出動を興奮剤にたとえれば、それを飲み込んでいたマーケットはもっと激しい刺激を求めるようになっているため、物足りないのも自然の摂理だ。
余談だが、成長戦略を先に打ち出して、次に財政出動、最後に日銀の大胆緩和といった順番で三本の矢を射っていったなら、違う局面をもたらしていたかもしれない。常識的に考えて、最初に暴走してしまったら、その分、継続力に欠けてしまうのは当然である。
しかし、世の常識をもって相場の常識と思ってはいけない部分が多い反面、世の常識をもって相場の異常を判断できる側面も軽視できない。
株も為替も、取引しているのが人間である以上、市場センチメントの変異がマーケットを左右するもっとも大きな要因であることを看過できない。
■株も為替も行き過ぎた分の修正を行っており、正常な値動き
下の、米ドル/円と日経225の日足チャートを見比べればわかるように、両者は高い相関性を持ち、5月23日(木)にともに頭を打って反落してきたが、株のほうがより速い調整スピードを見せている。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
というのは、チャート上に引いたサポートライン、いわゆる「アベクロライン」を株式のほうが先に割り込み、昨日(6月6日)に米ドル/円が追随した形でそれを割り込んできた。この視点から見ても、6月6日(木)の米ドル/円の下落は、先行した株式に追随しただけで特にサプライズではないではないか。
その上、指摘しておきたいのは、現在株式にしても為替にしても、行きすぎた部分に関する修正を行っており、極めて正常な値動きであるということが、後の値動きを見極めればおわかりいただけると思う。なお、チャート上の矢印は日銀緩和の4月4日(木)を示している。
■日経平均、ドル/円の上昇は異常としか言いようがなかった
安倍さんがアベノミクス宣言をぶち上げたのは2012年11月15日(木)で、同日安値から日銀の異次元緩和日の安値まで米ドル/円は20円超、日経平均は3390円超も上昇しており、アベノミクスという材料を相場はだいぶ先行した形で織り込んでいた。
が、日銀緩和が異次元だったということで、日経平均はさらに3866円も上昇し、米ドル/円も11円程度の上昇を果たした。
強調しておきたいのは、日銀緩和の前には黒田新総裁も決まり、マーケットは日銀緩和をだいぶ織り込んでいたはずだったということだ。
そうでないと、日経平均が1万2600円台、米ドル/円が96.70円まで上昇するはずがなかった(それぞれ日銀緩和前の高値水準)。いくら想定以上の緩和だったとはいえ、その後、日経平均がわずか2カ月足らずで3866円も上昇したのは、異常という以外の何ものでもなかった。
これは程度が違うとはいえ、米ドル/円も基本いっしょだった。
■すぐに下げ止まって反転すると思わないほうが良い
もうひとつ指摘してきおきたいのは、株価、為替レートが上昇するにつれ、素人もプロも同じことを言い始めたのが危険なサインだったということだ。
英FT(フィナンシャルタイムズ)紙の記事で、株価上昇で、美容師が本業をおろそかにして、女の子を連れて銀座を豪遊する様子を紹介していたのは暴落のちょっと前だし、5月23日(木)当日でも、日経平均2万円、米ドル/円110円といった「誰にでもわかりやすかった」ターゲットを掲げたプロがいたほどだ。
誤解されたくないのは、日経平均2万円、米ドル/円110円といった上値ターゲット自体が夢で終わり、これから実現されないということを言っているわけではなく、相場というものは魔力を持つから、誰でも安易に参加し、誰でも同じターゲットを目指す雰囲気になれば、いったん大きなスランプを味わう羽目になるのも世の常ということである。この意味でも、今回の急落はまったくサプライズではないと言える。
話が長くなったが、要するに、日銀会合後の上昇幅が株も為替もオーバーシュートの領域に入っていたから、現在の修正局面では日銀緩和前の安値に戻ってもおかしくないし、戻っても正常である。
したがって、目先すぐ下げ止まり、トレンドが反転してくると思わないほうがよいであろう。
■米ドル/円の下落トレンド継続を覚悟すべき理由とは?
円安トレンドに対する修正に関して、前回のコラムでGMMAチャートを見たので、今回も再点検してみよう。まず豪ドル/円から。
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(出所:アイネット証券)
豪ドル/円は依然リード役となり、2013年年初来の安値に迫っている。ユーロ/円との役割交代が筆者の想定より遅れているだけに、GMMAチャートにおける鰯軍団と鯨軍団の距離も拡大したわけだ。
次に米ドル/円とユーロ/円、英ポンド/円。
(出所:アイネット証券)
(出所:アイネット証券)
(出所:アイネット証券)
前回のコラムで指摘したとおり、米ドル/円は豪ドル/円に追随し、現在GMMAチャートにおける鰯軍団が完全に鯨軍団の下に抜けてきたから、一段と調整の余地があることを示している。
鰯と鯨の逆転は2012年10月中旬以来初めてだから、しばらく鰯が鯨からできる限り遊離していくので、ベア(下落)トレンドの継続を覚悟すべきだ。
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ユーロ/米ドル、英ポンド/円では、鰯と鯨の打診とクロスがまだ途中で、こちらはこれから米ドル/円に追随してこよう。
ちなみに、日銀緩和の日の安値は、米ドル/円、ユーロ/円、英ポンド/円がそれぞれ、92.76円、119.15円、140.38円であるから、同安値を中期スパンのターゲットとみなすなら、これからユーロ/円と英ポンド/円にはより大きな下落余地がある。
もっとも、6月6日(木)の米ドル/円の急落は、米ドル全面安の一環として受け止めなければならない。ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルともに5月高値を更新しており、このことがクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下落を阻止している側面が大きい。
■今夜の雇用統計の結果はだいぶ織り込みずみ?
米ドル全体の話では、最近の米ドル全面安は、主に米ドルロングポジションの偏りによるポジション整理や米FRB(連邦準備制度理事会)政策を巡る思惑に起因していると思う。
具体的な分析は次回に譲るが、結論だけ申し上げると、米ドルの全面安はもう最終段階に来ているのではないかと思う。それには今夜(6月7日)の米雇用統計が、検証材料と成り得る。
ちなみに、同統計が良くないといった観測がだいぶ織り込まれているから、本当に悪くなったとしてもドルインデックスの下値余地は限定されるのではないかと思う。
あと、豪ドルの話だが、一時の買われすぎから今度は極端に売られすぎにあることを記しておきたい。WSJ(ウォールストリートジャーナル)紙が、ヘッジファンドの大物が豪ドル売り準備という記事を取り上げている。ご親切に感謝するが、鵜呑みにしてはいけないことだけを最後に記しておく。では、よい週末を。
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