■米国株はバブルでなくともスピード調整はあるだろう
もっとも、日本株は米国株と連動する傾向が強く、米国株の高値更新についていくなら、日本株も上昇していくはずだ。
しかし、日本株の低迷がこのまま続くなら、日米株価の格差が違う形で解消される可能性も無視できない。
言い換えれば、「米国株バブルの破裂で米国株が反落、先行した日本株に追随」という、従来のシナリオだ。
そもそも、米国株の現在の状況が仮にバブルではないとしても、オーバーボートの疑いは否定できず、最低でもスピード調整の公算が大きい。
そして、緩和頼みの日本株と米ドル/円が、金融緩和余地の一段縮小によって早期上昇を果たせないなら、ロング筋の疑心暗鬼が広がり、さらなる投げ売りを引き起こす可能性もある。
■緩和への期待や思惑がなおマーケットを支える要素に
換言すれば、マーケットの思惑が完全に消えていないから、それを織り込むまでは、なお下値余地が大きいと言える。
具体的には、インフレターゲットに関する日銀や黒田さんの強気は、そのまま次回緩和時期の後ズレにつながっているものの、マーケットセンチメントは、追加緩和実施を完全に諦めているわけではない。
すなわち、今回は見送りされたけれど、では次回はいつかといった思惑が消えないから、緩和策の見送り自体が相場に期待感を残していることになり、相場を支える要素でさえあり得る。
逆説的になるが、日銀総裁の黒田さんの強気見通しが日本株や米ドル/円の低迷につながった云々を言うのなら、黒田さんの政策見送りがマーケットに期待と思惑の余地を残した側面も言わなければフェアではない。
黒田日銀総裁による政策見送りが、マーケットに期待と思惑の余地を残したとも言える。(C)Stringer/Xinhua Press/Corbis
そして、こういった期待や思惑の余地があるからこそ、マーケットは支えられているはずだ。
しかし、日銀の見通しが現実となれば、次回の緩和はいつかではなく、そもそも必要なし、つまり「次回はなし」ということになる。
■政策頼みのなくなった時がホンモノの相場
皮肉にも、アベノミクスの成功云々で日本株に強気の方が多いが、彼らの大半は以下の質問に答えられないのではないか。すなわち、「こんなに成功しているなら、さらなる緩和はもういらないではないか」ということだ。
現段階では、市場関係者の大半はなお、次回緩和ありという前提条件、あるいは先入観をもってシナリオを組んでいるだけに、ハシゴが外されたら、一段と狼狽するハメになりそうだ。
現段階で、アベノミクスが成功している部分があるとすれば、それは金融政策だと言うほかあるまい。同政策の浸透効果が大きければ大きいほど、緩和頼みのマーケットにマイナスの効用をもたらし、マーケットはこの点を完全に織り込んでいない分、これからも波高しとなろう。
日本株や米ドル/円の押し目買いチャンスにはいつか恵まれると思うが、その時にはもう誰も、日銀の政策云々を語らなくなっているに違いない。詰まるところ、政策頼みの相場はホンモノではなく、偏った思惑や期待を吐き出した後のパフォーマンスがホンモノとなるはずだ。
■海外投機筋が円買いを仕掛けているというウワサも
円高傾向について、もう1点指摘しておきたい。ウワサでは、海外投機筋は円買いを仕掛けており、動機は前記のとおり、マーケットの期待と思惑がはじきだしていない点を見込んでいるからだという。
ウワサの真相はともかく、極端に低下している為替相場の変動率は、そろそろ拡大されるタイミングが来ているから、注意が必要だ。
(出所:米国FXCM)
本日(5月2日)の米雇用統計の発表が、その幕開けを告げるか。
海外出張中につき、今回は短文にて失礼する。
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