■NYダウは2015年高値からすでに1000ドル以上も下落
実際、NYダウは今年(2015年)の高値からすでに1000ドル以上の下げ幅を記録し、7月に史上最高値をつけていたナスダック総合指数も転落、今月(8月)に入ってから下げ足を速めている。
(出所:米国FXCM)
(出所:CQG)
S&P500指数構成銘柄のうち、121社の株が高値からすでに20%超、下落している。一般的に、指数については20%超、下落すれば、トレンドが転換される可能性が高いと言われているが、個別銘柄とはいえ、やはり、油断できない。
となると、米利上げ観測が金利の上昇につながり、新興国のみではなく、米国株を調整させる圧力になれば、米ドル/円のロング筋にとって、米利上げ観測を手放しで喜ぶわけにはいかなくなる。なぜなら、株安は確実にリスクオフを伴うから、それはリスクオフの円高をもたらすだろうからだ。
したがって、本日(8月7日)の米雇用統計が良ければ、当面、米ドル/円が上値を追う展開になりやすく、また、高値更新も視野に入るが、一本調子の米ドル高で、一気に130円の節目を打診するといった楽観論とは距離を置きたい。
(出所:米国FXCM)
たびたび強調してきたように、2011年安値を起点とした米ドルの大型上昇波は、足元で最終段階にあり、高値の再トライ、あるいは高値更新があれば、それ自体がクライマックスに近いことを示唆するサインとなるから、警戒が必要だ。
【参考記事】
●ドル/円を「黒田レジスタンスライン」で売ると投機筋のカモに!? 130円の大台トライは?(2015年7月24日、陳満咲杜)
●ブラックマンデー再来に注意! 米利上げが世界的金融恐慌を起こしてもおかしくない!(2015年7月31日、陳満咲杜)
■「頼りにならない」カーニーBOE総裁に市場は失望
そのほかのメイン通貨では、米利上げ周期に追随し、一番利上げする可能性の大きい英ポンドが、目先ちょっとマダラ模様になり、市場参加者をいらいらさせた。
事の発端はカーニーBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])総裁の発言だっただろう。
カーニー総裁が少し前に、利上げの可能性を強く示唆し、米利上げを待たないといったニュアンスもにじませただけに、マーケットは強い関心を持っていたのだが、昨日(8月6日)のBOEの政策声明文は、意外にもハト派色が濃厚だったことにマーケットは落胆している。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 1時間足)
もっとも、カーニー氏のあだなは「unreliable boyfriend」、すなわち「頼りにならない彼氏」であったから、一部市場関係者は彼の言論を警戒していた。案の定、彼はまたマーケットを失望させ、やはり「頼りにならない」を再証明したわけだ。
■豪ドル高牽制文言を削除したRBAの魂胆は…?
英ポンドさえ冴えないから、緩和政策が続くユーロと円はなおさらだ。金融政策のみでは米独り勝ちの局面は変わらないが、10年近い長い空白を経て、初めて利上げ局面に直面する米資本市場自体が重圧に耐えられるかどうかは、今後を占う重要なポイントである。
そのほか、中国の景気後退の可能性がささやかれる中、豪ドルを始め、資源国通貨の動向にも注意が必要だろう。
豪州はいったん金利を据え置き、また、声明文から豪ドル高を牽制する文句を削除したから、豪ドルは目先反発しているが、過大評価すべきではないだろう。
なぜなら、一国の中央銀行が、普通は自国通貨安志向を露骨に表すことはできないからだ。この意味では、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])が毎回、豪ドル高を牽制する文句を声明文に入れていたこと自体が異例で、今回はそれが正常に戻っただけという話。
その上、今回が「正常」になったのだからこそ、実は怖いのではないかといった観測も浮上している。何しろ、RBAがチャイナショックに備え、さらなる利下げを実際に考えているから、今回の声明が「紳士的」になったというのだから…。
いずれにせよ、マーケットは激動期に入りつつある。夏枯れ相場だからこそ、急変、異変に弱いから、十分注意しておきたい。市況はいかに。
(14:30執筆)
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