(「ビットコインの衝撃(1) マネパでビットコインが買えるように!?そもそもビットコインとは?」からつづく)
■ビットコイン上昇は「自作自演」!?
2013年につけた1242ドルの高値──この高値をつけたことは、バブル感を漂わせながらも、ビットコインへの期待の高さを感じさせ、再度の中長期的な上昇への夢をふくらませてもくれる。
しかし、この高値そのものが虚構だった可能性がある。2014年に経営破綻した取引所「マウントゴックス」(Mt. Gox)による「自作自演」の疑いがあるのだ。
多くの人にとって、ビットコインから連想されるのはマウントゴックスだろう。マルク・カルプレス元CEOが逮捕されたとき、新聞記事には「ビットコイン、社長立件へ」「『ビットコイン』逮捕」「ビットコイン事件」など、あたかもビットコイン=マウントゴックスであるかのような見出しが立っていた。
もちろんビットコイン=マウントゴックスではないし、カルプレス容疑者の逮捕をビットコインコミュニティは大して気にしてもいない。マウントゴックスに関心を持つのはマウントゴックスにビットコインや現金を預けていた債権者くらいで、マルク・カルプレス元CEOの逮捕が報じられてもビットコイン価格に影響は見られなかった。
■以前から指摘されていた内部犯行の可能性
ビットコインコミュニティが動揺していないのはマウントゴックス事件が「ビットコインのしくみの欠点」ではなく、「カルプレス容疑者個人の問題」であることが早くから周知されていたからだ。
ビットコインセキュリティの専門会社「Wizsec」(ウィズセック)はカルプレス容疑者の逮捕前から、内部犯の可能性を示唆するレポートを公開してもいた。
2015年1月、スイスショックにより、世界的な大手FX会社だったアルパリが破綻した。だからといって、「FXは危ない!」という声は聞こえてこない。あくまでもアルパリ1社の問題だ。マウントゴックス事件についても基本的には同じようなものと考えていいだろう。
【参考記事】
●ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!
●スイスショックでアルパリUKが破綻! スイスフラン大暴騰で損失をカバーできず
●ついに破綻も! スイス中銀の爆弾発言は欧米のFX会社にどう影響したのか?
マウントゴックスはたまたま渋谷を拠点としていたため、日本での扱いが大きくなってもいるのだろう。
2015年2月には香港のビットコイン取引所「マイコイン」で460億円相当のビットコインが紛失する事件もあったが、日本ではまったく話題になっていない。
■ビットコイン紛失事件の真相とは?
では、マウントゴックスでは何があったのか。当初、カルプレス容疑者は「システムに弱いところがあって、ビットコインがなくなった」としていたが、実際はそうではなかったようだ。
一部は実際に盗難されたようだが、今回の逮捕容疑は業務上横領。カルプレス容疑者が口座を不正に操作して利用者から預かったビットコインや資金を私的に流用した、ということになる。今回の逮捕容疑の金額は3億円超だが、カルプレス容疑者の個人口座には数十億円が残されているとの報道もある。

■過去にはFX業界でもよくあった犯罪
FXで言えば、「FX会社の社長が預かったお金を持ち逃げした」といったところか。ここ数年にFXを始めた人は「そんなこと、あるはずがないだろう」と思うかもしれないが、過去には実際、この手の事件が頻発、社会問題化した時期がある。
1998年から2005年まで、つまり外為法改正で為替取引が自由化されてから、金融先物取引法改正でFX会社が登録制になるまでの間、FX会社の経営に認可も登録も必要がない無法地帯だった時期のことだ。
今のビットコインが置かれた環境はFX業界が無法地帯だったころと似ていると指摘する人は多い。FX業界が金融庁の監督下に置かれるまでには7年の歳月を要したが、ビットコインではすでに規制の議論が始まっている。

■FX会社がビットコインを取り扱うのはいつか
前回紹介したマネーパートナーズとアメリカの大手ビットコイン取引所Kraken(クラーケン)の提携協議開始に示されているように、ビットコインに高い関心を示すFX会社は多い。そうした動きが表に出てこないのは、金融庁など「お上」の態度を慎重に見極めているためだ。
【参考記事】
●ビットコインの衝撃(1) マネパでビットコインが買えるように!?そもそもビットコインとは?
「お上の姿勢が明確になれば、あるいは先行したマネーパートナーズの動きをお上が黙認するようなら、今すぐにでも始めたい」といった声は複数のFX会社から聞こえてくる。
すでに金融庁の監督下に置かれているFX会社は本業への影響を懸念して、お上の動向を気にせずにはいられないが、「ビットコイン専業」ならば顔色をうかがう必要はない。
日本でもKrakenをはじめ、BTCボックスやビットバンク、コインチェック、bitFlyerなどのビットコイン取引所がサービスを開始している。中にはレバレッジ取引やショート(売り)が可能な取引所もあり、FXのようにビットコインを取引できる時代は、すでに始まっている。

■マウントゴックスがビットコイン価格を吊り上げか
ところで、マウントゴックスの「罪」としては、不正な価格形成を行なっていた疑いがあるという面も大きい。
先ほど紹介したように、ビットコインセキュリティの専門会社・ウィズセックはマウントゴックスのビットコイン消失事件について、当初から内部犯の犯行を示唆するレポートを発表していたが、それに加えて、マウントゴックスによる価格操作を示唆するレポートも発表している。
ビットコインが飛躍的に上昇したのは2013年。前回も紹介したように、1242ドルへの上昇については、一般的にはビットコインの魅力に気がついた中国人の「爆買い」によるものとされている。
【参考記事】
●ビットコインの衝撃(1) マネパでビットコインが買えるように!?そもそもビットコインとは?
しかし、実態は違う可能性がある。
2013年の上昇をより細かく見ると、2つの上昇波がある。年初10ドル台から4月の266ドルへと向かう上昇第一波と、その後、調整局面を挟んで、7月末から11月の1242ドルへと向かう上昇第二波だ。
(出所:bitcoin charts)
4月から7月までの調整局面で引いたトレンドラインを上方にブレイクしたのは7月28日(日)。この日、マウントゴックス内部で「ウィリー」(Willy)が動き出した。ウィリーとはボットの1つ。そして、ボットとは、自動売買プログラムのようなものだ。
■2つの自動売買プログラムが大量購入
ウィズセックのレポートによれば、マウントゴックスは「ウィリー」と
「マルクス」という2種類のボットを利用していた。
架空の250万ドルが複数の口座に割り当てられ、ボットが5分から10分おきに10~20ビットコインをひたすら買っていく。資金が尽きれば別の口座で買っていく。このボットが動き始めたのは、2013年7月28日(日)15時14分。まさにトレンドラインを上方にブレイクした日だ。
「ウィリー」と「マルクス」は7月28日(日)以降…
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