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■中国株が大発会からいきなり大暴落!
さて、新年早々、筆者の予想どおり、中国発の混乱が世界の金融マーケットを直撃、円高市況をもたらした。

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実際、筆者は中国から帰ってきたばかりで、この間、中国で初のセミナーを開催し、中国株の先行きが厳しいといった内容を話してきたので、予想どおりの展開だ。
とはいえ、中国株が大発会からいきなりの暴落とは、さすがに筆者にとってもサプライズであり、中国株市場の脆弱性を象徴した出来事だった。皮肉にも暴落の引き金を引いたのは市場の変動率を抑えるための制度導入だ。

(出所:CQG)
中国株は変動率が高く、当日決済できないにもかかわらず、ストップ高やストップ安が頻繁に発生、また、売買回転率は500%に達し、世界一のレベルかと思われる。
国民性(ギャンブル好き?)の側面もあるが、その本質は、いわゆるバリュー投資の土壌がないことにある。結局、短期的な投機に走るしかないと皆が思い、個人投資家も機関投資家も目先の値動きを追うばかりだ。その上、個人投資家の比率(≒80%)が高すぎることも市場構造をさらにゆがめていると言える。
ゆえに、変動率を抑え、より健全な市場を育てようとする中国政府の初心は正しい。が、その初心とはまったく逆の事態を招いたのが皮肉で、また、悲劇的なことだ。
■「サーキットブレーカー」がもたらしたギネス級の大混乱
新制度とは、「サーキットブレーカー」と呼ばれる、一定の変動率に達したら、取引を休止するという制度だ。変動率が5%に達したら、いったん取引が休止され、さらに7%に達した時点で終日取引中止となる。
しかし、取引が休止になったら、売るに売れないと焦る投資家たちが逆に売りに殺到、取引が休止されている間、冷静になるどころか、かえって恐怖心があおられ、次のブレーカー発動につながるといった展開になってしまった。

(出所:CQG)
たびたび指摘してきたように、中国発の混乱があれば、たちまち世界の金融市場、とりわけ日本市場に影響を与えるから、日経平均は2016年年初から下落し、リスクオフの動きで円が買われた。その一方で米ドル高基調は維持されているだけに、結果としてクロス円(米ドル以外の外貨と円との通貨ペア)の下落がすさまじく、円全面高の地合いを強化した。
そして、昨日(1月7日)は事態がさらに悪化した。中国株市場がオープンして、13分足らずで1回目のブレーカーが発動され、15分の休止期間を経て取引が開始されたものの、たちまち7%安まで売られ、30分で終日取引休止となった。
あまりにもショッキングな出来事で政府官僚らは自信喪失、昨日(1月7日)夜中まで緊急会議を開き、同制度をいったん停止することを決めた。
4取引日しか実行されていない短命な政策に加え、2回のサーキットブレーカーの発動、そして、オープンしてからたった13分後の発動など、すべてギネス世界記録に残るほどの出来事だった。

(出所:CQG)
中国のスケールの大きさやスピード感が、悪い意味で中国株市場にて再確認された。
■最大の敗者・英ポンド/円の複雑な事情
中国株の急変は、当然のように世界株の全面安、原油安や円高のトレンドを一段と押し進め、昨日(1月7日)の日経平均1万8000円の節目割れや、米ドル/円の117.32円打診につながったわけだ。

(出所:株マップ)

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ユーロ/円は126.77円まで迫り、2015年4月安値126.09円に接近、豪ドル/円も一時81.96円を打診、2015年8月安値81.89円の寸前まで迫った。

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より大きい下げ幅を見せているのは英ポンド/円だ。英ポンド/円は昨日(1月7日)170.68円を打診、2014年10月17日(金)以来の安値を更新した。

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英ポンド/円の暴落は通貨の両サイド、すなわち、英ポンドサイドと円サイドの事情が両方作用した結果であるが、円サイドのリスクオフによる円買いに比べ、英ポンドサイドの事情はやや複雑だ。
英国では今年(2016年)、EU(欧州連合)を離脱するかどうかに関する国民投票が実施されるかもしれない。EU離脱を巡る懸念が英ポンド売りをもたらし、米ドル以外のメイン通貨に対して、英ポンド安の傾向も鮮明になってきた。
その上、英国利上げの後ずれや英国財務相の発言(景気が下向くリスクが多数といった趣旨)も効き、英ポンド/円を今回の「最大の敗者」に仕立てたわけだ。
■クロス円の多くは目先、売られすぎ、買い戻しはいつ?
ところで、英ポンド/円を始め、クロス円の多くは目先、売られすぎの度合いが濃厚で、いったんリバウンドを展開してもおかしくないとみる。
サーキットブレーカー制度の停止を好感し、本日(1月8日)、中国株が反騰しているところも支援材料で、少なくとも本日(1月8日)夜の米雇用統計発表前に、円買いポジションについては、いったん決済が続くのではないだろうか。
■中国株下落は序の口! メイントレンドは円高にシフト!
あくまで中国株次第、といった意味合いでは、近々の為替相場の行方を占うには、中国株の動向から目を逸らせない。
結論から申し上げると、中国株の2015年8月安値から同12月までの反騰は、2015年6月高値を起点とした大型下落波における修正子波と位置づけられるから、2016年年初からの一連の騒動は、ベア(下落)トレンドへ復帰したことが理由であると言える。
要するに、ベアトレンドに位置するから、本来変動率を収めるはずのサーキットブレーカー制度が逆に市場の恐怖心を刺激し、まったく反対の効果をもたらしたわけだ。
言い換えれば、すでにベアトレンドへ復帰した中国株、サーキットブレーカー制度があるかないかと関係なく、これからもベアトレンドを継続するだろう。一時のリバウンドがあってもメイントレンドを修正できず、戻りがあれば再度売り浴びせられる公算が高いから、引き続き警戒しておきたい。
となると、為替市場の行方も自明になってくる。米ドル/円を含めて、クロス円はいったん売られすぎによる修正があるものの、メイントレンドはすでに円高トレンドへシフトされたと言え、安易なチェンジはなかろう。
中国株の下落はまだ序の口なので、目先、日経平均の下落や円高もまだ序の口である。そう遠くないうち、米ドル/円は昨年(2015年)8月安値115.89円割れをもって正式なサインを灯すとみる。市況はいかに。
(14:50執筆)
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