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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

NYダウ崩れずリスクオフは徐々に沈静化。
英ポンド下落の背景には中東と中国あり

2016年03月03日(木)17:57公開 (2016年03月03日(木)17:57更新)
西原宏一

FXトレーダー・羊飼いに聞く、初心者におすすめのFX口座の選び方とは?

■本丸のNYダウ崩れず、センチメントは徐々に改善

 みなさん、こんにちは。

 先月(2月)のSQ(※)ショックはマーケットに大きな影響を与え、多くの投資家が日本株への投資にためらいがちとなり、2月後半の日本株と米ドル/円のマーケットは方向感なく、乱高下が続いていました。

(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと。株価指数先物は3月、6月、9月、12月の第2金曜日、オプション取引は毎月第2金曜日がSQ算出日となっている)

【参考記事】
日銀マイナス金利導入が円高・株安誘引!? ドル/円急落の裏で何が起こっていたのか?(2月18日、西原宏一)

 しかし、今月(3月)に入ってセンチメントは徐々に改善

 これは「日銀の追加緩和期待と政府の大規模補正予算期待」が背景にあるのですが、もっとも重要なことは先月(2月)にNYダウが崩れなかったこと。

 先月(2月)、ヘッジファンドが日経225オプションのSQをうまく利用して「日経平均と米ドル/円」の暴落劇を演出した後、リスクオフ相場が継続しなかったのは、本丸のNYダウが底堅く推移していたためです。

NYダウ 日足
NYダウ 日足

(出所:CQG)

■NYダウは2月SQショックにまったく追随せず…

以前コラムでも何度かご紹介しましたが、金融市場の本丸は米国株であり、昨年(2015年)8月のチャイナショック同様、仮にNYダウが崩れれば、日経平均と米ドル/円は暴落する公算が高かったのですが、NYダウは今回の2月SQショックにはまったく追随しませんでした。

【参考記事】
ソロスも警告! リーマンショックが再来!? 株安・円高の行方占う2つのポイントとは?(1月14日、西原宏一)

 NYダウはザラ場では、注目の200週移動平均線を下抜けましたが、週の終値ベースではサポートされています。

NYダウ 週足
NYダウ 週足

(出所:CQG)

 NYダウは、昨年(2015年)8月のチャイナショックの安値である1万5370ドルにも届かず、反発しています。

 本丸のNYダウが値を戻す中、日経平均もマジノ線(※)である1万6500円をやっと回復し、2月のSQショックは徐々に沈静化しつつあります。

(※編集部注:「マジノ線」とは第二次世界大戦前にフランスがドイツとの国境に築いた難攻不落と言われた要塞のこと)

日経平均 日足
日経平均 日足

(出所:株マップ.com

 日経平均の回復につれて、米ドル/円もやっと114円台まで値を戻しています。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

2月のSQショックでもNYダウが相場の大きなカギを握っていたことを再確認した格好です。

■英ポンド急落の背景に中東や中国マネーの動きアリ

 一方、2016年年初から続落しているのが英ポンド。前回のコラムでご紹介したボリスショックの影響はもちろん大きいのですが、そもそも年末年始から英ポンドは続落しています。

【参考記事】
月足終値で1.40ドル割れなら31年ぶり!英ポンドを暴落させたボリスショックとは?(2月25日、西原宏一)

 欧州やアジアの友人によれば、この英ポンドの下落は資金移動が起きていることが要因のようです。

 そもそも、昨年(2015年)前半までの英ポンド高は、中東や中国から英国への資金流入が続いていたことが材料視されていました。

 ところが、中東は原油価格の下落、そして、中国は資金流出が続いているため、彼らが英国に投資していた資金を徐々に引き揚げていることが、英ポンド安を誘引している模様。

英ポンド/米ドル 日足
英ポンド/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足

 そして、その中東や中国が引き揚げた資金の帰還先は米ドル

 これは米国のファンダメンタルズが良好という理由で、そうなっているわけではありません。

 現在のグローバルマーケットは「中東情勢、原油急落、Brexit(英国のEU(欧州連合)離脱)、中国経済急減速」といったリスクオフ要因に事欠かないことから、現金でもあり、流動性も高い安全資産である米ドルへ資金が回帰しているということのようです。

 ただ、年末年始に一番強烈に急落したのは当コラムでも注目していた英ポンド/円。昨年(2015年)11月から見れば、一時34円も暴落しており、強烈なダウントレンドを形成しています。

【参考記事】
2016年は英国のEU離脱懸念が高まる!? 英ポンド/円は下落余地拡大で170円へ(2015年12月24日、西原宏一)

英ポンド/円 日足
英ポンド/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足

 ただ、これは前述の「2月SQショック」で米ドル/円が暴落したことも要因。投機的な円買いが収まると、米ドル/円も本稿執筆時点では、114円台を回復しています。

■円買いは短期的、今後の主役は英ポンド/米ドル

 前述の友人によれば、2月の急激な円買いは、SQをうまく利用したヘッジファンドのリスクオフ演出であり、極めて短期的に円ロング(買い建て)にしたのみで、その後、円ロングをキープするわけではないとのこと…。

【参考記事】
日銀マイナス金利導入が円高・株安誘引!? ドル/円急落の裏で何が起こっていたのか?(2月18日、西原宏一)

 つまり、通常、リスクオフ相場では「米ドル買い・円買い」となり、今回もそうした流れなのですが、円買いは短期的なものであり、継続しないということです。

 こうした背景から考えれば、この先は英ポンド/円ではなく、英ポンド/米ドルが主役となりそうです。

 そして、英国のみならず、欧州からも資金が米ドルに回帰している流れが顕著であるため、ユーロ/米ドルもじり安の展開。

ユーロ/米ドル 4時間足
ユーロ/米ドル 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足

 今週(2月29日~)はユーロ/英ポンドの巻き戻しも出ており、英ポンド/米ドルは調整局面を演じていますが、流れは「英ポンド安・米ドル高」です。

英ポンド/米ドル 4時間足
英ポンド/米ドル 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足

 グローバルな資金移動のウワサもあり、欧州通貨安、米ドル高の流れは変わらず。英ポンド/米ドル、ユーロ/米ドルの行方に注目です。


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