■ドラギ総裁の発言きっかけにユーロが上昇トレンドへ!
6月27日(火)にドラギECB(欧州中央銀行)総裁が「デフレ圧力はリフレ圧力に変わった」と発言し、ECBが出口戦略に向かい始めていることを示唆したことで、ユーロが急騰しました。
【参考記事】
●強烈なレジスタンス突破したユーロ/円は135円へ! ドラギ総裁発言でユーロ急騰!(6月29日、西原宏一)
それまでも、出口戦略への期待は高まっていましたが、6月8日(木)のECB理事会でも、ドラギ総裁はそれを否定し続けていました。
それが、今回の発言でECBが出口戦略に向かっていることが示され、ドイツの長期金利が上昇し、ユーロ/米ドルは6月29日(木)に1.1445ドル、ユーロ/円は7月3日(月)に128.89円まで上昇しました(※)。
(※編集部注:本記事の寄稿後、7月4日(火)の東京時間にユーロ/円は一時、128.97円付近まで上昇した)
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米長期金利は、6月14日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けても2.12~2.20%付近で推移していましたが、こちらもドラギ総裁の発言をきっかけに急騰し、7月3日(月)には2.35%台まで上昇してきました。
(出所:Bloomberg)
それに連れるように、米ドル/円も113.45円まで上昇しています(※)。
(※編集部注:本記事の寄稿後、米ドル/円は一時、113.47円付近まで上昇した)
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【参考記事】
●米ドル軟調も米ドル/円はなぜ堅調なのか? 背景にあるファンダメンタルズ的要因とは?(6月30日、陳満咲杜)
●株式よりも金利の動きが今後もカギに? 米国債利回り上昇なら米ドル/円も続伸!(7月3日、西原宏一&大橋ひろこ)
■カーニー総裁の発言で英ポンドは下がったり、上がったり…
ユーロだけでなく、英ポンドも上昇しています。
6月15日の英MPC(金融政策委員会)で、利上げ支持が3票あったことで英国についても利上げ観測が強まっていましたが、6月20日(火)にカーニーBOE(イングランド銀行)総裁が「利上げは時期尚早」と発言して利上げ観測を打ち消し、英ポンド/米ドルは下がりました。
しかし、28日(水)にカーニー総裁は、「金融緩和措置を部分的に解除する必要性が出てくる可能性」と、利上げの可能性を示唆する発言をしました。
【参考記事】
●経済不振なのに利上げ!? それは短期的には通貨の買い材料だが、中期的には売り材料(6月27日、バカラ村)
20日(火)の時点で利上げを否定していましたが、翌週には利上げを示唆する発言をしたことで、英ポンドは急騰。英ポンド/米ドルは、年初来高値に迫る1.3029ドルまで上昇しました。
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先週(6月26日~)の私のトレードは、ユーロを買って、英ポンド/米ドルを売っていましたが、カーニー総裁の発言で、すぐに英ポンド/米ドルを手仕舞いました。
また、ユーロ/米ドルとユーロ/円はともに上昇していますが、29日(木)にユーロ/米ドルの方は手仕舞いしています。
■市場のテーマはECBとBOEの金融政策へ
これまで主要通貨は膠着していましたが、6月27日(火)のドラギ総裁の発言をきっかけに動意づき、ユーロや英ポンドは上昇、円や米ドルは下落する動きが続いています。
今週(7月3日~)は、5日(水)にFOMC議事要旨、6日(木)にECB議事要旨が公表されます。
FOMC議事要旨はバランスシート縮小について、ECB議事要旨に関しては出口戦略の内容があるかに注目が集まります。
そして、7日(金)には米国の雇用統計があり、インフレが鈍化しているため、平均時給が上昇しているか注目されます。また、同じ日にFRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策報告書を公表します。
市場のテーマはECBとBOEの金融政策に移っており、これが否定されない限り、ユーロ買い、英ポンド買い、円売り、米ドル売りの流れは継続しそうです。
■ユーロ高・円売り方向の流れは継続しそう
ユーロ/米ドルは約1カ月、1.11~1.13ドルのもみ合いが継続していましたが、それを上に抜けたことで、今度は1.13ドルがサポートになりやすく、そこをメドに押し目買いでいいのではないかと考えています。
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長期的には1.16~1.17ドルがレジスタンスゾーンとなり、そこを一気に越えることは難しいと思われるので、まずは下値を固めてからになるのではないかと考えます。
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主要国で金融政策が緩和から引き締め方向に転換し始めていますが、日本だけは日銀が緩和策をまだ継続しており、そのため、円に関しては売り方向となります。
【参考記事】
●機関投資家が円キャリートレードで勝負!? 急速な円安。注意しつつ流れに乗りたい(6月29日、今井雅人)
ユーロ/円は先週(6月26日~)から急騰しているので、時間調整となりそうですが、まだ上昇が見込めるのではないかと考えています。
各国の金融政策をテーマにしたこの流れは、まだ継続していくのではないかと思います。
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