■ユーロ/円の上昇が米ドル/円を押し上げ
みなさん、こんにちは。
前回のコラムでご紹介させていただいた、米ドル/円の6カ月サイクル。
このサイクル通り、6月14日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)前後に、108.83円に到達し底値を確認した米ドル/円は、その後、じり高で推移しました。
【参考記事】
●米ドル/円は半年サイクルでトレンド転換! FOMCきっかけの米ドル高は継続か?(6月22日、西原宏一)
ただ、米ドル/円は底堅いものの、なかなか節目である112円を上抜けられなかったのですが、ついにそのレジスタンスを突破。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
そのレジスタンスを超えるきっかけとなったのが、ユーロ/円、英ポンド/円を筆頭とするクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の上昇。
特に強烈なレジスタンスだった126.00円をブレイクし、本稿執筆時点で128円台まで急騰しているユーロ/円が米ドル/円を押し上げています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
■ドラギ総裁の発言で、ユーロ/円は急騰
では、何がユーロ/円を急騰させているのか?
ユーロ円を急騰させたのが、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁のコメント。
6月27日(火)にドラギ総裁は「デフレ圧力はリフレ(※)に変わった」とコメント。
(※編集部注:「リフレ」とは、デフレからは脱したが、まだインフレにはなっていない状態のこと)
呼応して、独国債利回りは急上昇 、ユーロ/米ドルも節目の1.1300ドルを超えて大幅に上昇しました。

(出所:Bloomberg)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
米ドル/円が6カ月サイクルに入っているため、ユーロ/米ドルの上昇は、ユーロ/円の急騰につながります。
結果、ユーロ/円は重要なレジスタンスだった126.00円をあっさりブレイクし、本稿執筆時点では、128円台まで急騰しています。
ここで、6月27日(火)のドラギ総裁のコメントを確認すると「Deflationary forces have been replaced by reflationary ones=デフレ圧力はリフレ圧力に置き換わった」とコメントしています。
■ユーロ/円の上昇に拍車をかけた英ポンド/円
5月25日(木)の当コラムでマーケットのコンセンサスを下記のようにご紹介しています。
【参考記事】
●メルケル発言よりも本邦勢の欧州投資がユーロに追い風! 130円突破なら135円へ(5月25日、西原宏一)
「そして、ユーロ/円上昇の背景として一番大きな要因として挙げられるのが、ECBの出口論が活発になっていること。
出口に向かうためには、景気減速で苦しむ南欧諸国を切り捨てるかどうかがポイントになるため、今後のECBの動向に注目。」
このECBでの出口論が活発化していることを、今回のドラギ総裁のコメントでマーケットが確認したことが、今回のユーロ/円を急騰させた要因になっています。
そして、ユーロ/円の上昇に拍車をかけたのが、6月28日(水)の英ポンド/円の急上昇でした。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 4時間足)
■BOEのカーニー総裁も突然、タカ派な声明を発表
今週(6月26日~)はECBのドラギ総裁に続き、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])のカーニー総裁も、突然タカ派な声明を発表しました。
6月28日(水)には、カーニー総裁が「BOEの刺激策の一部解除が必要となる可能性がある」とコメント。
先週(6月19日~)彼は、「今はまだ金融引き締めを開始すべき時でない」とコメントしていました。
これが、カーニー総裁が「頼りにならない彼氏」と揶揄される所以。
ともあれ彼のコメントを受け、英ポンド/米ドルが暴騰。
英ポンド/米ドルは1.2974ドルまで急騰しました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
英ポンド/円は本稿執筆時点で、145.59円まで急伸しています。
以下は、英ポンド/円の週足チャートです。

(出所:Bloomberg)
2015年6月の高値が195.88円。
2年前は限りなく200円に近い位置にいたことにあらためて驚きますが…。
安値は2016年10月の121.61円。
では、フィボナッチの38.2%はいくらかというと、149.97円とほぼ
150.00円となっています。
テクニカル分析では最大そのあたりまでの反発の可能性を示唆しています。
■ECBも金融政策正常化で、ユーロ/円は135円に
ここで、126円という重要なレジスタンスを突破し、上昇トレンドに入ったユーロ/円がどこまで上伸するのかテクニカル分析で探ってみます。
詳細は5月25日(木)のコラムでご紹介しているとおりです。
【参考記事】
●メルケル発言よりも本邦勢の欧州投資がユーロに追い風! 130円突破なら135円へ(5月25日、西原宏一)
(編集部注:以下の箇所は、5月25日(木)に公開した「ヘッジファンドの思惑」からの引用です。ただし、チャートは最新のものに更新して掲載しています)
では、どこまでユーロ円は上がるのでしょうか?
中期でのユーロ/円の動きを確認すると、まず、2016年6月24日(金)のBrexit時に到達した安値となる109.57円をボトムに上昇基調に入っています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 週足)
ユーロ/円は過去4度、75週移動平均線に上値を押さえられていましたが、フランス大統領選後の上昇で、このレジスタンスを上抜けてきました。

(出所:Bloomberg)
まず、これでユーロ/円が上昇トレンドであることを確認します。
では、ユーロ円はどこまで上がるのか?
それは、ユーロ/円の上値のメドをフィボナッチ・リトレースメントで探ります。
起点の高値は2つ選択できます。
まず最初は、2014年12月8日(月)につけたユーロ/円の高値となる149.78円。
これは、米ドル/円がアベノミクスの上昇相場で121円の高値をつけた局面です。
そしてもうひとつは、2015年6月4日(木)高値、141.06円です。
2014年12月高値149.78円と昨年(2016年)6月安値109.57円のフィボナッチ・リトレースメントでは、61.8%=134.42円、38.2%=124.93円で、現在はこの38.2%レベルでもみ合っているのがわかります。

(出所:Bloomberg)
そして、もうひとつの高値である、2015年6月高値141.06円と昨年(2016年)6月安値となる109.57円でフィボナッチ・リトレースメントすると、61.8%=129.03円、38.2%=121.60円となり、38.2%はすでに通過して61.8%に向かう動きの中にあります。

(出所:Bloomberg)
ここでは、149.78円または141.06円から109.57円への大きな下落の動きから戻り高値を計算しましたが、高値計算としてはフィボナッチ・エクスパンションも使うことができます。
昨年(2016年)6月のBrexit時の安値109.57円と、昨年(2016年)12月高値124.10円、そして今年(2017年)4月のフランス大統領選挙を前にした安値114.85円で計算することができます。
フィボナッチ・エクスパンションの計算をすると、最初の目標値(COP)は125.32円で本稿執筆時点はこのレベルで推移。
そして、この先の目標値(OP)は129.38円となります。

(出所:Bloomberg)
チャートをご覧いただくと、先ほどのフィボナッチ・リトレースメントの61.8%(129.03円)と、エクスパンションのOP(129.38円)は全体が40円もの大きな相場の値動きの中で40銭程度しか差がありません。
このため、129円から130円付近はフィボナッチが重なる強い上値抵抗となる可能性が考えられます。
また、この130円付近には200週移動平均線もあり、この点からも、130円前後が上値抵抗となる可能性が考えられます。
当面はこの130円付近が目標となりやすいものの、今後ECBの出口論が活発となれば、ユーロ/円の上昇余地はさらに拡大します。
仮に130円レベルの上値抵抗を上抜けてくるようであれば、149.78円と109.57円の61.8%が位置する135円付近への上昇も想定できます。

(出所:Bloomberg)
このようにテクニカル分析でも、ユーロ/円の上昇余地はかなり拡大しているといえます。
本邦機関投資家の欧州への投資も再開され、130円へ続伸する公算が高まっているユーロ/円の動向に注目です。
(編集部注:以上の箇所は、5月25日(木)に公開した「ヘッジファンドの思惑」からの引用でした。ただし、チャートは最新のものに更新して掲載しています)
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