■ユーロ/円は米ドル/円ではなく、ユーロ/米ドルの牽引で上昇
ユーロ/円は高値トライ、130円の心理的節目打診が視野に入っている。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
これは筆者の想定どおりだが、背景となるユーロ/米ドルと米ドル/円の値動きについては、以前行った筆者の予測に当たったものと外れたものがあった。
【参考記事】
●今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の雇用統計が悪くてもさほど売られないかも(2017年6月2日、陳満咲杜)
●過去2回の米利上げ後は米ドル安に…。でも今回は違うとみる! それはなぜか?(2017年6月9日、陳満咲杜)
ユーロ/米ドルは予測が外れ、米ドル/円は正解だったため、ユーロ/円上昇の値動きは当然ではあったが、より強い変動となり、また目先、強気変動が維持されやすいとみる。
というのは、筆者はユーロ/円が早晩130円の節目を打診するだろうという予測を繰り返してきたが、それは主に米ドル/円の上昇を予測の根拠にしていた。
が、6月27日(火)からユーロ/米ドルが大幅上昇し、昨年(2016年)11月9日(水)の高値を突破したから、ユーロ/円の強気変動は、むしろ、ユーロ/米ドルの高値更新がもたらした結果と言える。

(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドルはドルインデックスの対極的な存在であり、ユーロ/米ドルの強気変動はそのまま米ドル全体の弱気変動を意味する。
ドルインデックスは、6月14日(水)安値割れをもって、同日のチャートが示したプライスアクションのサインを否定し、一気に昨年(2016年)11月9日(水)安値を割り込み、2017年年初来の米ドル安の流れは一段と深まった。
【参考記事】
●為替相場にトランプ・ラリー再来!? 米ドル続伸のサイン点灯、米国株もまだ崩壊しない!(2017年6月16日、陳満咲杜)

(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドルの高値トライが当面想定されやすいなら、米ドル全体の下落、また、弱気変動がしばらく続き、従来の米ドル全体に関する底打ちのシナリオは、完全には否定されていないものの、底打ちのサインなしでは目先、安易に底打ちを認定できないだろう。
■米ドルを続落させた5つのファンダメンタルズ要因
ファンダメンタルズ的には、米ドルを続落、また、安値更新させた材料として、主に以下の5つが挙げられる。
1.ドラギECB(欧州中央銀行)総裁の強気発言
2.IMF(国際通貨基金)の米経済成長見通し下方修正
3.イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の「ハト派」発言
4.米上院での医療改革法案投票の延期
5.FRB投票権をもつ委員による「低インフレ」警戒論
また、さらに追加材料として、英中銀総裁・カーニーさんの発言(利上げ否定から利上げの可能性に言及)も数えられるが、同総裁のあだ名は「頼りにならない彼氏」であるだけに、これを材料視するのはやや性急かと思っているところだ。
【参考記事】
●“頼りにならない彼氏”の裏切りに英ポンド怒りの急落! 続く米雇用統計は果たして!?(2015年11月6日、陳満咲杜)
■ユーロ/米ドルの下落サインは「ダマシ」と化した
テクニカル面では、ユーロ/米ドル日足におけるサインが代表的であろう。6月14日(水)の日足は「スパイクハイ」のサインを点灯して頭打ちをいったん示唆していたが、5月30日(火)安値を割りこめず、一転して6月14日(水)高値を更新、同サイン自体が「ダマシ」と化した。

(出所:FXブロードネット)
「ダマシ」のサインがあったからこそ、トレンドの強気が証左されるわけで、目先、ユーロ/米ドルの強気変動は維持され、また、高値トライしやすい構造にあることが想定される。したがって、ユーロ/米ドルの切り返しはすでに最終段階に入ったものの、同サインの点灯を軽視すべきではないと思う。
ちなみに、6月20日(火)までの押しは、GMMAチャートにおける長期移動平均線のサポートを受けた形で再上昇してきたから、同サインも強気変動における「鰯喰い」(スピード調整)のサインと見られる。換言すれば、ユーロの上昇波はテクニカル上、一貫して維持されてきたから、値ごろ感による判断をすべきではないことが示唆される。
■米ドル/円のサインは有効、強気変動を維持できるだろう
対照的に、米ドル/円におけるサインは有効であったため、米ドル/円は続伸できた。
6月14日(水)のチャートが示していた「フェイクセットアップ」のサインが効いてきたわけで、昨日(6月29日)113円の節目手前に迫り、GMMAチャートにおける「トビウオ」(短期移動平均線と長期移動平均線のゴールデンクロス)サインも点灯しているため、これからも強気変動を維持できるだろう。

(出所:FXブロードネット)
■米ドル/円上昇の理由でもある円全面安、背景にあるのは…
もっとも、前述のようにクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)としてユーロ/円の強気変動がユーロ/米ドルと米ドル/円の値動きから形成された結果と言える同時に、ユーロ/円の高騰が米ドル/円の堅調をもたらしたとも言える。
実際、米ドル/円が米ドル全体のパフォーマンスに追随していない背景に、円の全面安が見られたところは見逃せない。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
円全面安について、あえて後づけの理由を言うなら、ファンダメンタルズ上では日銀のスタンスを主な背景として指摘できるのではないだろうか。
日銀は、少なくとも公の場ではいわゆる「出口」政策の早期実施を否定している一方、ほかの主要国中銀の政策は引き締め方向にあったり、それを示唆していたりしている。両者は「ダイバージェンス」を示しているのだ。
その上、今まで米利上げ後に円高になっていた市場の反応パターンが、今回は一転して米ドル/円買いの「バイ・ザ・ファクト」(要するに米利上げ後、円売りとなった)となったわけで、これも円売りの「安心感」につながったと思う。
いずれにせよ、ファンダメンタルズ上の理由は事前に解釈できないところが多いが、テクニカル上、円安のサインが効いているなら、それに従うしかない。
■当面、米ドルの軟調が続く見込み。英ポンドは…
ユーロ/円の目先の高騰は、実は6月15日(木)のチャートに点灯したサインがもたらした結果であるから、同サインの意味合いを6月16日(金)のレポートをもって説明したい。原文は以下のとおり。

(出所:FXブロードネット)
ユーロ/円の日足をみると、昨日の罫線が重要なサインを点灯していたことが分かる。昨日5月18日安値を一時下回ったものの、一転して高く大引き、「リバーサル」の陽線をもって5月高値を起点とした調整波の終焉を示唆した。
もっとも、5月16日、25日の高値を形成した「ダブル・トップ」のフォーメーション、同18日の安値をもって「ネック」を形成したとみなされ、同安値の打診をもってトレンドの転換さえ想定されるが、昨日の安値打診が「ダマシ」であったが分かり、目先の続伸につながったわけで、昨日の「ダマシ」は上昇をもたらす「フェイクセットアップ」のサインに化したわけだ。
更に、5月18日、6月7日安値が重要なサポートゾーンを形成していただけに、昨日の安値打診は「フォールス・ブレイクアウト」のサインでも解釈できる。同見方、目先8日(b)高値のブレイクをもって証左され、これから2日(a)高値の更新につながっていくでしょう。ブレイクがあれば、ブルトレンドの継続を示唆するので、4月安値を起点とした上昇波が延長されることを有力視。
前記プライスアクションの視点に加え、GMMAチャートにおける「鰯喰い」のサインが点灯され、調整一服、またブルトレンドへ復帰することを示している。整合性をもつアプローチでは、ユーロ/円のロングポジションを試すべきであろう。
ゆえに、当面、クロス円がリードする形で円安トレンドが進行する公算が大きい。またそのため、主要通貨ペアにおける米ドルの軟調が継続されよう。
前回述べた英ポンド安の可能性は、「頼りにならない彼氏」こと、カーニー英中銀総裁にいったん否定されたが、英ポンドは主要通貨のうち、最初に頭打ちのサインが点灯しやすいとみる。
【参考記事】
●2017年内は英利上げなしと思った方がよい。英国発のブラックスワンを再度警戒!(2017年6月23日、陳満咲杜)
このあたりの話は、また次回詳説したい。
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