■ハードフォークでもらったアルトコインはどうなるの?
ところで、2017年は、ビットコインのハードフォークが話題を呼びましたよね? 記憶に残っているところだと、8月に誕生したビットコインキャッシュ(BCH)とか10月に誕生したビットコインゴールド(BTG)あたりでしょうか。
この時、ハードフォーク以前からビットコインを保有していた人には、新たに誕生したアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)が自動的に付与されるという、なんとも不思議な事象が起きました(※)。
(※取扱いは各業者の判断に任されていたため、すべての人、またハードフォークによって誕生したすべてのアルトコインに当てはまるワケではない)
ビットコインを持っているだけで、何もせずともハードフォークしたアルトコインがもらえるなんて…! と驚いた人もいたのではないでしょうか?
【参考記事】
●ハードフォーク前倒し!! 新たに誕生したビットコインゴールドがもらえる取引所は?
●ビットコインは、8/1のハードフォーク後に最高値更新! ビットコインキャッシュとは?
では、このように、ハードフォークを受けて自動的に付与されたアルトコインについては、課税関係を考える上で、国税庁ではどのような判断がされているのでしょうか?
「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」によると、ハードフォークによって誕生したアルトコインを取得した場合、取得時点では所得は生じないとされています。
これは、ハードフォークによって分岐した時点では取引相場が存在せず、その時点では価値を有していなかったと考えるからだそう。
ただし、そのアルトコインを売却または使用した時点で所得が生じることになります。その場合、ハードフォークによるアルトコインの取得価格は0円と判断されるため、売却または使用した金額すべてが所得となるようです。
ビットコインキャッシュを見ると、ご覧のとおり、かなり値上がりしていますね。売却しちゃったんだよね…という人は、この判断のとおり、売却で得た利益がまるっと所得とみなされることになります。

(出所:GMOコイン)
ということで、ここまで記者の独断と偏見で気になるところだけをざっとご紹介しましたが、詳細をご覧になりたい人は、国税庁のウェブサイトから、「ホーム>税について調べる>その他法令解釈に関する情報>申告所得税関係目次」と進んで、「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)(平成29年12月1日)」をチェックしてみてください。
■会社員は20万円、主婦(夫)や自営業は38万円が目安
そういえば、当記事冒頭では、「ビットコインなどの仮想通貨取引で利益が出た人は、サラリーマン(会社員)でも学生でも主婦(夫)でも自営業でも自由業でも確定申告を行い、納税する義務があります」とお伝えしましたが、具体的にどのくらい儲かっていれば確定申告が必要になるのでしょうか?
参考までに、ここで簡単に確認しておきたいと思います。
そもそも、「確定申告」とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じたすべての所得の金額とそれに対する所得税額を計算し、申告期限までに確定申告書を提出して、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算する手続きのことを言います。
納税ばかりでなく、医療費控除や住宅ローン控除で納め過ぎた税金の還付を受ける際にも確定申告が必要です。仮想通貨で一定の利益が出た場合はもちろんですが、その他の理由でも確定申告が必要になる可能性があるという点を覚えておいてください。
たとえば、普段は年末調整ですべての手続きが完了し、あまり確定申告になじみがない会社員の場合は、給与収入以外に20万円を超える所得がある場合、確定申告が必要となります。
仮想通貨で20万円超儲かったという会社員の人は、注意が必要です。2017年のビットコインの動きを思い起こすと、結構いそうですよね…該当する人。
ちなみに、会社員は会社員でも年収2000万円を超える会社員の場合は、仮想通貨取引などで別に所得があろうとなかろうと、そもそも確定申告が必要だったりします。
また、自営業や自由業あるいは、主婦(夫)・学生、家事手伝いなど被扶養者に該当する人は、仮想通貨取引などから生じた所得が38万円を超えると確定申告が必要です。
<確定申告が必要な人の例>
・ 会社員
…給与収入以外に20万円を超える所得がある場合
・ 自営業・自由業/主婦(夫)・学生などの被扶養者
…38万円を超える所得がある場合
代表的な例を元に、かなり簡略化してお伝えしましたが、実際には、利益として上がっている金額から必要経費や各種控除を差っ引いて、一定の所得が残る場合に確定申告を行うという流れになります。
素人が行うには、いったい何がどこまで必要経費として認められるのか? という判断が難しいですし、控除の内容などについても、その人その人の状況によってさまざまです。
このほか、仮想通貨取引が事業所得として認められる場合は、雑所得では使えない制度が使えたりして、場合によっては支払う税金の金額に大きな違いが出る可能性もありそう。
国税庁では、仮想通貨取引で生じた所得は原則雑所得としていますが、事業所得になる可能性があることは認めています。該当する可能性がある人は、確認してみても良いかもしれません。
■必要書類などは早めに確認・準備するのが吉だけども
2017年(平成29年)分の確定申告は、2018年2月16日(金)~3月15日(木)までの期間中に行われます。

そして、ビットコインをはじめとする仮想通貨取引などで生じた所得に関する確定申告が本格的に行われるのは、たぶん今回(2017年分)が初めてです。
お伝えしたとおり、「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」が公表されたことで、ある程度、国税庁の基本的な考え方は明らかになりましたが、記載されているもの以外の事例が、いくつも出てきたって不思議はありません。
取引所を提供する仮想通貨交換業者についても、FXなどでいうところの1年間の入出金履歴や損益をまとめた年間取引報告書的なものを用意してくれるのか…?
時期的な問題もあるのか、各業者ともウェブサイトを見る限り、この件については、あまりていねいな解説を見かけなかったので詳しいところまでは調べ切れていませんが、期間別の取引履歴などをまるっとダウンロードできるなど、簡単に確定申告に必要な書類を用意できるしくみを整えてくれるとうれしいですね。
こうした取引所での仮想通貨取引の履歴に加え、商品購入に使用した際の差額なども併せて申告しなければならないということで、本当に各人、そこまできっちりと調べることができるものなのか…? 少々疑問ではありますが、何はともあれ、活発に仮想通貨を利用している人ほど、確定申告へ向けた対応は早めに行うようにしておきたいところです。
ザイFX!でも、本件に関して何か新しい情報が入りましたら、随時お届けしていきたいと思います。
(ザイFX!編集部・向井友代)
当記事で掲載した内容は、あくまでザイFX!編集部が調査した内容であり、税理士などの専門家が監修を行ったものではありません。少しでも疑問などがある場合は、お近くの税務署や税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。
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