■確定申告は2月16日~3月15日。億り人や自由億は大変?
1億、10億と、億単位の収入を投資で稼ぎ出せるようになれたら…。トレーダーなら、誰もが一度はそんな妄想をしたことがあるかも。
現実に、FXでも株式でも億単位で利益を上げているトレーダーさんは、ときどきいらっしゃいますが、2017年、億り人、自由億をわんさか輩出した取引と言えば、ビットコイン投資などで話題になった仮想通貨取引でしょう。
【参考記事】
●仮想通貨で億り人になったひろぴーが語る米ドル/円よりビットコインが儲けやすいワケ
●偏差値100超えの天才はどんな検証をしてFXで資産10億円大幅超を達成したのか?
2017年は、改正資金決済法が施行され、仮想通貨交換業者も登録制になるなど制度面での整備が進むとともに、ビットコイン価格は、一時230万円あたりにまで跳ね上がるという規格外の動きを見せました。ブームに乗って仮想通貨取引を始めたという人もいるのでは?
【参考記事】
●ザイFX!で2017年を振り返ろう!(6)暴君ビットコイン、天を衝く上昇相場を演出!

(C)yuruphoto / PIXTA(ピクスタ)
利益が出ているならそれに越したことはないのですが、儲けた人ほど気をつけなければいけないのが税金です。仮想通貨取引で得た利益に対しては、所得税と住民税を合わせて15%~55%(※)の率で税金が課されます。
(※2013年~2037年は、所得税に対して、さらに2.1%の復興特別所得税が課される)
仮想通貨取引で利益が出た人は、一定の額を超えると、誰でも納税する義務があるのです。しかも、自分で確定申告しなければ誰も納税の手続きをしてくれません。
普段、確定申告になじみがない会社員や主婦(夫)、学生の人なんかは特に、「知らなかった…」とか「忘れてました…」なんてことがないようにしてください。
2017年(平成29年)分の確定申告期間は、2018年2月16日(金)~3月15日(木)です。対象となる人は、お忘れなく。
なお、同じように仮想通貨取引をしていても、損失が出ているという人は、基本的に確定申告不要です。
■確定申告が必要なのは、どんな人? 会社員や主婦(夫)も?
当記事では、そんな仮想通貨の税金に関する基本的な事柄を確認していきたいと思いますが、まずは、どんな人に確定申告が必要になるのか? ということを見ていきましょう。
以下には、例として「自営業・自由業」、「主婦(夫)・学生」、「会社員」の場合に、確定申告が必要になる目安を掲載しました。
確定申告が必要な例 | |
自営業・自由業 | 仮想通貨取引などで得た所得が38万円を超える場合 |
(フリーランスやフリーターなど) | |
主婦(夫)・学生 | |
(主婦・主夫、学生、家事手伝いといった扶養家族の場合など) | |
会社員 | 給与所得や退職所得以外の所得(仮想通貨取引を含む)で20万円超の所得がある場合 |
(給与収入額が2000万円以下の給与所得者など) |
※所得(所得税算出の元となる金額)=収入-必要経費
●「自営業・自由業」
「自営業・自由業」の人は、例年、確定申告をしているケースが多いのではないでしょうか。基本的に、仮想通貨取引での利益を含め、所得(収入-必要経費)が基礎控除(※)の38万円を超える場合、確定申告が必要となります。
(※「基礎控除」とは、税負担を軽くするための制度で、所得控除の1つ。所得控除には医療費控除や配偶者控除、扶養控除など全部で14種類ある。そのうち、特に適用要件がなく誰でも使える所得控除が「基礎控除」)
ただし、仮想通貨取引を事業として営んでいるということが認められれば、個人が受けることができる控除とは別の控除を受けることができたりして、最終的な納税額に違いが出てくる可能性はあります。
また、簡単ではなさそうですが、法人を設立するという方法も理論上は考えられますので、気になる人は税理士などの専門家に、一度、相談してみるといいかもしれません。
●「主婦(夫)・学生」
「主婦(夫)・学生」といった自分の収入があまりない扶養家族の人なども基礎控除の38万円を超える場合、確定申告が必要となります。
裏を返すと、「自営業・自由業」や「主婦(夫)や学生」にあたる人は、仮想通貨取引での利益を含め、年間の所得が38万円以下であれば確定申告は不要です。
●「会社員」
「会社員」の人は、年末調整を受けて税の過不足の計算が完了しているのが通常ですので、あまり自分で確定申告する機会はないかもしれませんが、仮想通貨取引をしているなら無関係ではいられません。
「会社員」の場合は、仮想通貨取引での利益を含めて、給与所得以外で20万円を超える所得があれば確定申告が必要です。
ただし、給与を2カ所以上から受け取っている、あるいは給与収入額が2000万円を超える会社員の場合、また、医療費控除や住宅ローン控除など他の所得控除を申請する場合は、いずれにしろ確定申告が必要となります。
ついでにお伝えすると、ここ数年、話題のふるさと納税についても、、ワンストップ特例(寄付した自治体に必要書類を提出して確定申告を免除する制度)を利用しなかった(間に合わなかった場合も含む)場合や6カ所以上の自治体に寄付を行った場合は確定申告が必要ですので、お忘れなく。
■必要経費を差し引いた所得に対して課税される
なお、仮想通貨取引で得た利益については、そのまま、まるっと全額が課税対象になるというワケではありません。利益(収入)から必要経費を差し引いた金額が、上述の一定の金額(主婦(夫)・学生なら38万円、会社員なら20万円など)を上回った場合、所得として申告することになります。
ならば、仮想通貨取引の必要経費とはいったい何ぞや? という話になりますが、法律などで「これが経費だ」という明確な規定はありません。
とりあえず、ここでは、巷でよく言われている「これは経費に算入できるだろう」という例を挙げておきましょう。
<必要経費として算入できそうなモノの例>
・ 取引手数料
・ セミナー受講料
・ 書籍代金
・ インターネット代金
・ パソコン代金など
【参考記事】
●【2018年最新】FXの確定申告総まとめ。ビットコイン/仮想通貨との損益通算は?
●あの投資家たちのFX確定申告の実態(1) ひろぴーさんが必要経費に入れたものは?
具体的な経費の定義がない以上、どれが正解とは言い切れない部分があります。実際に経費を考える際には、管轄の税務署や税理士などの専門家に相談するようにしてください。
■所得税は10種類。仮想通貨取引で得た利益は「雑所得」
続いて、より理解を深めるために、少し、所得税の基本的な事柄について確認しておきましょう。
そもそも、所得税とは、「個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用」して算出されるモノ。
●所得税算出の基本的な計算式
収入-経費-各種控除=所得税算出の元となる金額
所得税算出の元となる金額×税率(※)=所得税額
(算出された所得税額から、税額控除が適用されるケースもある)
※2013年~2037年は、所得税に対して、さらに2.1%の復興特別所得税が課される
そして、所得税は、性質に応じて以下のとおり、10種類に分類されています。
10種類ある「所得」の分類 | ||
No. | 所得の種類 | 概要 |
1 | 利子所得 | 預貯金などの利子による所得 |
2 | 配当所得 | 株式の配当などによる所得 |
3 | 不動産所得 | 土地や建物など不動産の貸付による所得 |
4 | 事業所得 | 事業から生じる所得 |
5 | 給与所得 | 勤務先から受け取る給与や賞与による所得 |
6 | 退職所得 | 勤務先から受け取る退職手当などによる所得 |
7 | 山林所得 | 山林を伐採して譲渡したりすることで生じる所得 |
8 | 譲渡所得 | 土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することで生じる所得 |
9 | 一時所得 | 懸賞や福引の賞金品、競馬の払戻金などによる所得 |
10 | 雑所得 | 先に挙げた9種類のどこにも該当しない所得 ※仮想通貨取引で発生した所得はここに分類される |
※「国税庁ウェブサイト>ホーム>税について調べる>タックスアンサー>所得税>所得の種類と課税のしくみ>No.1500 雑所得」より一部抜粋
仮想通貨で得た利益は、仮想通貨取引が事業として認められ、そこから得た利益を事業所得として申告する場合でない限り、基本は「雑所得」に分類されることになります。
■仮想通貨取引の利益は「総合課税」。15%~55%が税金!
所得税の課税方法には、所得の種類に関係なく合算して課税する「総合課税」と他の所得と切り離して課税する「分離課税」という方法がありますが、日本の所得税制は、原則「総合課税」です。税率には、所得が増えるほど掛け率が高くなる「累進課税」というルールが適用されます。
●総合課税と分離課税
・ 総合課税とは?
…所定の他の所得と合算して課税する制度
※仮想通貨取引で得た利益は、この制度で課税される
・ 分離課税とは?
…他の所得と合算せずに分けて課税する制度
※分離課税は、さらに、源泉分離課税と申告分離課税の2つの課税方式に分かれている
仮想通貨で得た利益にも、原則のとおり「総合課税」が適用され、「累進課税」で税金が課されることになります。
冒頭で仮想通貨の取引で得た利益には、15%~55%(※)の率で税金が課されるとお伝えしましたが、それは、この累進課税というルールが採用されているためです。所得の大きさによって、税率が異なってきます。
さらっと流しましたが、最大55%(※)って利益の半分以上ということですから、結構エグいです…。
(※所得税と住民税を合算した税率。2013年~2037年は、所得税に対して、さらに2.1%の復興特別所得税が課される)
ここで、そんな結構、エグい総合課税の税率を具体的に確認しておきましょう。お伝えしているとおり、所得税の5%~45%に一律10%の住民税を加算し、所得金額に応じて15%~55%となります。
総合課税の所得金額別税率と控除額 | ||
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 15% (所5%+住10%) |
0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 20% (所10%+住10%) |
97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 30% (所20%+住10%) |
427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 33% (所23%+住10%) |
636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 43% (所33%+住10%) |
1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 50% (所40%+住10%) |
2,796,000円 |
4,000万円超 | 55% (所45%+住10%) |
4,796,000円 |
※所得税と住民税を合算した税率。2013年~2037年は、所得税に対して、さらに2.1%の復興特別所得税が課される
※国税庁のタックスアンサー「No.2260 所得税の税率」を参考に、ザイFX!編集部が作成
■仮想通貨取引で得た利益は損益通算できる? 繰越控除は?
さて、これまでFX(外国為替証拠金取引)など他の金融商品の取引経験がある人は、仮想通貨取引から生じた損益を他の金融商品で生じた損益と通算(まるっと合計)することはできないか? などと考えるかもしれません。
FXなどでは、一定のルールの下で、FX以外の金融商品から生じた損益とFXの損益を通算することで所得金額を圧縮し、納税額を抑えることができます。
詳しくは、「【2018年最新】FXの確定申告総まとめ。ビットコイン/仮想通貨との損益通算は?」をご覧いただきたいのですが、かいつまんでお伝えすると、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」に該当する一部の金融商品(FX、くりっく365や日経225先物などの株価指数先物、CFD、バイナリーオプション、商品先物など)の場合は、該当する商品間で損益を通算することが可能です。
【参考記事】
●【2018年最新】FXの確定申告総まとめ。ビットコイン/仮想通貨との損益通算は?
これを仮想通貨にも使えるならば、FXや日経225先物などの株価指数先物取引をしている人は納税額を抑えることができるかもしれないワケですが、FXなどで生じた損益と通算できるのは、先ほど例を挙げた「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」に該当する一部の金融商品のみ。
仮想通貨取引は、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」に該当しませんので、FXなどと損益を通算することはできません。
なお、仮想通貨取引にも現物取引のほか、レバレッジ取引(FX、信用、先物)と呼ばれる証拠金取引がありますが、仮想通貨のレバレッジ取引も「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」には入りませんので、お間違いなく。
【参考コンテンツ】
●「ビットコイン・仮想通貨のFX」ができる取引所を比較。上昇も下落も収益チャンスに
●「ビットコイン・仮想通貨の先物&信用」ができる取引所を比較。対応業者はどこ?
また、FXなどでは損失を翌年以降3年に渡って繰り越せる制度、「繰越控除」を利用することができますが、これも仮想通貨取引では、残念ながら利用することができませんので、こちらも併せて押さえておいてください。
とはいえ、仮想通貨取引から生じた損益と通算できる…
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