■ECBの声明は本来ならユーロ高になる内容だったが…
この見方は、昨日(3月8日)のECB(欧州中央銀行)理事会後の市況によって一段と証左されたとみる。
政策声明は刺激策拡大を示唆する文言が削除されており、引き締めにさらに一歩踏み出したと言えるため、本来ならユーロ高に寄与するはずだったが、ユーロは反落してきた。
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ドラギECB総裁の話がタカ派になりきれなかったといった「後解釈」もされているが、本当のところ、むしろシンプルな理屈で解釈できるのではないだろうか。
つまるところ、本コラムでも繰り返し指摘してきたとおり、ユーロが昨年(2017年)年初からほぼ一貫して上昇してきた原動力は、その前の「トランプトレード」に対する反動という要素以外に、ECBの「出口政策」観測がもっとも強かったと思われる。
これまでユーロを大きく押し上げてきたのは、こういった観測や期待と思われるが、ユーロのロングポジションの積み上げとともにそれは限界に達し、ECB政策が確実に引き締めになればなるほど、逆にロングポジションの利益確定につながりやすいということだろう。だから、昨日(3月8日)のユーロの反落はわかりやすかったと思う。
要するに、「ウワサで買い、事実で売る」のロジックが効いている、という見方の方が真実に近いかと思う。
■ユーロ/米ドルにはトップアウトのサイン、効き目は今後も
実際、3月1日(木)からユーロ/米ドルはいったん切り返してきたものの、高値を更新できず、再度反落してきたから、2月16日(金)のローソク足が点灯したトップアウトのサイン(フォールス・ブレイクアウト)がなお有効でこれからも効いてくるだろう。
(出所:IG証券)
その真価は、2017年4月安値から引かれるメインサポートライン割れの有無で検証されるが、試される気運が高まりつつある。
今晩(3月9日)の米雇用統計次第では、また一波乱が想定されるが、高値更新なしではユーロの切り返しがあってもロング筋の利益確定に利用されるだろう。
何しろ、猫も杓子もユーロのロング・米ドルのショートポジションを持っているから、トップアウトのサインがすでに点灯した以上、リスクヘッジのためにも一部ポジションの手仕舞いに動くと思われる。
昨日(3月8日)のECB理事会後の値動きから考えると、こういった市場センチメントの変化が確実にあったのでは…と推測される。
■ウォール街のセンチメントは米ドル安に傾いているようだが…
もっとも、ウォール街におけるセンチメントは、少なくとも公においてなお米ドル安に傾いている模様だ。
昨日(3月8日)のECB理事会後の市況が展開されたあとでも、ユーロ/米ドルの上値ターゲットを1.3ドルの節目に据え置くと多くの機関投資家がコメント、あるいは予想を出している。
ユーロの強気筋にとっては、昨日(3月8日)の反落は一時的なものに留まり、押し目自体を押し目買いの好機とみているようだ。
こういった動きがあるからこそ、筆者はかえって米ドル安がすでに一服したのでは…という従来の見方を維持できるのではないかと思う。
記録上最大とされるユーロロングポジションの積み上げをよそに、ユーロが下落する途中において、新たにロング筋が参入して来てもユーロが高値更新できない場合、筆者のロジックがより証明されるのではないかと思う。
■ユーロの頭打ちがあれば、米ドル/円「底割れ」リスクも後退
もう1つの視点では、ユーロの頭打ちがあれば、米ドル全体の底打ちを示唆するから、米ドル/円の「底割れ」のリスクもいくぶん後退したのではないかと思う。この見方は、主要クロス円の値動きで検証できるかとみる。
ユーロ/円の130円節目割れや、英ポンド/円の145円節目割れ、豪ドル/円の81.50円割れがすでに確認されたが、短期スパンでは売られすぎのサインが点灯し、足元は安値圏だが保ち合いをキープしている。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 VS 円 4時間足)
今晩(3月9日)の米雇用統計次第だが、仮に近々波乱があっても、クロス円が安値更新しない場合、米ドル/円の「底割れ回避」が一段と鮮明になっていくだろう。
この意味では、これからドルインデックスの続伸があれば、ユーロが主に受け皿として下落していく公算が高く、逆に円高のモメンタムがやや弱まっていくのではないだろうか。
つまるところ、ユーロ/円をはじめ、クロス円が大転換を果たしたから、中期スパンにおける下値打診といったシナリオは維持されるものの、その原動力は従来の円高から外貨安のほうにシフトしていく公算が高い、ということである。検証はまた次回、市況はいかに。
(13:30執筆)
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