金曜日は雇用統計の日だったが、まずはアジア時間の早朝にトランプ政権から中国の貿易問題についてクレームが出てきた。中国の態度に腹を立てたものか、もっと関税をかける品目がないかをUSTRに調査検討を命じたというのだ。戦う姿勢は北朝鮮のときと同じようなものである。
強がりが先に来て、その後に対話に持ち込む。今は対話する前の化かしあいなのだ。それで前日までかなり急反発をしていた米国株だったが、グローベックスセッションで大幅安に転じた。S&P先物が50ポイントも下がってきたのだから、2日分の大相場を一気にやってしまったようなものだ。
ドル円も徐々に下がってきて、107円割れ近辺までリスクオフ。しかしその後は下げ足が止まってしまった。むしろ雇用統計を期待してのリスクテークも出てきた。ドル円は107円台の中盤まで戻す。
そして雇用統計を迎えたわけだが、内容はマチマチだった。就業者数と失業率が悪かったが、平均時給がそれほども伸びていなかった。インフレ懸念は後退し、「適温相場」がまだ続きそうだという都合のいい楽観論だけが先行することとなった。米国株は昼間に大きく下げた分のほぼすべてを取り戻し、現物株のオープンを待つ。
中国を材料にして安いところを売らされたプレーヤーからすれば、中国問題はどうなったんだといいたいところだ。このまま株価が上がってプラス転でもしようものならば、評論家はこぞって「雇用統計で安心感を得たから」という理由を述べまわすだろう。
しかし今は個別のマクロ指標の時期ではない。もっと大きなマクロである中国との貿易が問題だ。より重要なほうに反応してこそのファンダメンタルズである。ニューヨーク時間の午後からは米国株は再度の売りものに押され、ついに昼間の安値も下抜けしてしまった。
米国株の本領を発揮している。日本株と違って実体のある動きをしているのである。ドル円もやっと107円割れを喫した。それでもユーロ円はそれほども下がらず、為替相場ではリスク回避に動いたとはいいがたい。それほど値幅も小さかったということだ。
今週は金曜日の米金融の決算がいくつか出てくる以外には、イベントが少ない。市場の関心は言うまでもなく、中国との貿易戦争の行方だ。これで楽観視したり、恐怖したりするのは、先週までの動きと変わらないだろう。しかるに米国株の変動値幅も大きいままであろう。
それに加えて今週あたりからは南北会談や米朝会談のアジェンダも気になってくるところだ。ただ双方が会って融和的にすればよいというものでもない。どこまで妥協して生産的な方向へ持っていけるのか。政治マターで忙しくなってきそうな週である。
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