■米国のイラン核合意破棄など地政学的リスク増大
リスクオフ要因に挙げられるのが、まず、新興国通貨危機。
先週のコラムでご紹介させていただいたアルゼンチンに加え、今週(5月14日~)は、トルコリラが急落しています。
【参考記事】
●新興国から資金流出! その行き先は…!? 大型M&Aがドル/円押上げるも攻めきれず(5月10日、西原宏一)
急落の背景は、トルコのエルドアン大統領のコメント。
トルコのエルドアン大統領が率いる政府代表団が14日、ロンドンで有力機関投資家に経済政策の説明会を開いた。通貨リラの急落に見舞われいるトルコとしては、政策運営に安心感を持ってもらう狙いだったが、出席した投資家の間には「衝撃と不信感」が広がった。
投資家が困惑を隠せなかったのは、エルドアン氏が景気刺激のための金利引き下げを目指しながら、物価上昇と通貨安に歯止めをかけるという同氏の計画が、一体どうやって実現できるかのか理解できなかったからだ。
出所:ロイター
(出所:Bloomberg)
次に、米大使館のイスラエルへの移転。この移転によって、ガザ地区は混乱しており、55人が死亡したとの報道も。
ガザ地区でイスラエル軍発砲、パレスチナ人55人死亡
米大使館移転抗議で中東ガザ地区とイスラエルの国境沿いで14日に開かれたパレスチナ人の集会で、イスラエル軍がパレスチナ人に向けて実弾を発砲した。
パレスチナ自治政府によると、55人が死亡し、2700人が負傷した。集会は、パレスチナ人の帰還権を求め、在イスラエル米国大使館のエルサレム移転に抗議していた。2014年のガザ侵攻以来、最悪の犠牲者数となった。
パレスチナ難民の帰還を求める「帰還大行進」として、多くのパレスチナ人はガザ地区とイスラエルの国境沿いで4月から抗議行動を続けていた。イスラム原理主義組織ハマスが組織するこの抗議行動は1948年5月14日のイスラエル建国と、パレスチナ人が「ナクバ(大惨事)」と呼ぶ強制移住開始の1948年5月15日の70周年に重なった。14日にはさらに、パレスチナが強く反発する在イスラエル米国大使館のエルサレム移転記念式典が行われた。
イスラエル政府は、ガザ地区の警備フェンス沿い13カ所で、パレスチナ人4万人が「暴力的な暴動」に参加したと主張している。
集まったパレスチナ人は石や発火装置を投げ、イスラエル軍は催涙ガスや狙撃兵による銃撃で応戦した。
出所:BBC
■特に不安定なのが、米朝首脳会談
加えて、米国のイラン核合意の破棄。そして、北朝鮮が南北閣僚会談を延期するとの報道など、リスクオフ要因は多数あります。
特に不安定なのが、米朝首脳会談。
北朝鮮、米朝首脳会談の中止を警告 一方的な核放棄要求に反発
北朝鮮は16日、米国が一方的な核兵器の放棄を要求し続けるなら、来月12日に予定されている米朝首脳会談を中止する意向だと明らかにした。
北朝鮮の金桂冠第1外務次官は、米国が向こう見ずな発言をし、悪意を隠し持っていると強く非難。ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を名指しして批判した。朝鮮中央通信(KCNA)が、談話を伝えた。
出所:毎日新聞
北朝鮮がボルトン氏を名指しで批判している理由は、ボルトン氏が北朝鮮核放棄の手順は「リビア方式」(※)で、とコメントしたと報道されたこと。
(※「リビア方式」とは、はじめに、すべての核廃棄を完全に実行し、すべての核廃棄の確認ができたら、経済制裁を解く方式)
ただ、北朝鮮からの揺さぶりに対して、米国の態度は一貫しており、ホワイトハウスのサンダース報道官は、「北朝鮮が会談を望まないなら、それでも構わない。その場合は最大限の圧力をかけ続ける」と、ごもっともなコメント。
このように、地政学的リスクは徐々に高まっており、それが米ドル/円の急騰を阻んでいます。
(出所:Bloomberg)
さらに、現在の米ドル/円を支えている米10年債利回りですが、仮に上昇が加速すれば米国株の下押し要因となり、逆に米ドル/円の売り要因となりかねません。
現在の米ドル/円を支えている要素は脆いものも多く、「通商問題」が再燃すれば、今年(2018年)前半のように、円高トレンドに戻る公算も高くなっています。
地政学リスクが高まる中、米ドル/円の行方に注目です。
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