■米利上げ一時停止は米国以外の景気見通し悪化につながる
後解釈とはいえ、ロジック自体は適切で正しいだろう。今回のECB理事会は、経済見通しを大きく引き下げ、2019年内の利上げを断念した上、銀行への新たな資金供給(TLTRO3)策もリリース。市場関係者に「ショック」を与えた模様だ。
その「ショック」の正体は他ならぬ、ユーロ圏の景気見通しが「ここまで悪化したか」という思惑だ。
要するに、ECBのハト派スタンス自体が、マーケットの危機感を引き起こし、ユーロ売りをもたらした側面も大きかった。しかし、そのこと自体、筆者からみれば、むしろ当然の成り行きだ。
消去法の米ドル選好ということは、外貨の事情がより悪化しているということの他あるまい。米利上げの一時停止があれば、それにより、米国のみでなく、そのほかの地域や国の景気見通しが悪化することも避けられないから、今回のECBの景気見通しの下方修正は、むしろ想定の範囲内の出来事だと言える。
だからこそ、米利上げの一時停止をもって米ドル反落を予想するのは、幼稚でリスキーな考え方だと言える。
つまるところ、諸主要外貨のファンダメンタルズ上の事情が、米ドルに比べ「より悪い」以上、米利上げの一時停止は、むしろ米ドル選好のムードを強めていく公算が高い。
ユーロの安値更新はその一環であり、また、なお動きの途中なので、ユーロ安がリードする展開に続き、英ポンド、豪ドルなど主要外貨の米ドルに対する下落も鮮明になってこよう。
■米ドル/円は調整が先行する公算が高い
足元でもう1つ注意すべき現象は、ドルインデックスの上昇スピードだ。本コラムでたびたび強調してきたように、ドルインデックスの上昇スピードが速ければ速いほど、米ドル/円の頭打ちにつながりやすいから、円とそのほか主要外貨のパフォーマンスが異なってくる可能性は大きい。
【参考記事】
●米ドル高構造再確認! 米経済指標が悪化しても、なぜ米ドルは大きく売られなかった?(2019年2月22日、陳満咲杜)
昨日(3月7日)のユーロ/米ドルの大幅続落がユーロ/円の大幅続落をもたらし、結果として円高圧力を高め、米ドル/円も連れ安になった、といった解釈ができるだろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
前回(2月28日)のコラムでも指摘したように、基本的には米ドル/円の上昇変動はホンモノであるが、一本調子の上昇も想定しにくく、目先は調整が先行する公算が高い。
【参考記事】
●一本調子のトレンド加速は想定しにくいが、円高のピークは過ぎた! その根拠とは?(2019年2月28日、陳満咲杜)
もちろん、ドルインデックスの高値更新につれ、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の方がより調整しやすいだろう。
昨日(3月7日)のユーロ/円の大幅下落はその前兆と見なされ、これから豪ドル/円や英ポンド/円など、その他のクロス円の追随が十分想定され、米ドル/円の頭を押さえ込むだろう。
ただし、米ドル/円は年初のフラッシュ・クラッシュからだいぶ切り返しを果たしてきたから、ここから途中のスピード調整があれば、むしろ健全な値動きでこれからの上値余地を拡大するだろう。
筆者のメインターゲット、すなわち2019年年内に120円の大台にトライする可能性も、米ドル/円の然るべき調整で一段と強まると思う。市況はいかに。
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