■イスタンブール市長選後から値上げの嵐
今週(8月5日~)、5日に発表されたトルコの7月CPI(消費者物価指数)は16.65%になりました。市場予想よりはいい結果でしたが、前回から約1%上昇した形になりました。
(出所:Bloomberg)
トルコ政府は、イスタンブール市長選挙のやり直しが終了するまでエネルギー価格や各種税項目の引き上げを我慢していましたが、市長選挙が終わってからは値上げの嵐が続いています。
もっとも直近の値上げは、たばこでした。たばこの値段は8月4日(日)に約25%値上げされました。さらに、ガソリンの値上げに加え、スマホ、家電など主要消費アイテムに対する税率も20%~40%引き上げられています。
■生活必需品の値下げは、トルコリラの底堅さに
TUIK(トルコ統計機構)のインフレバスケットは417項目からなっていますが、過去1年間で値段が下がったのは40項目だけです。
特に夏野菜は、昨年(2018年)に比べ、大幅に値段が下がっています。以前、このコラムで日本の米騒動に例えたタマネギ騒動の話を書きました。
幸いなことにタマネギの値段も前年比で大きく下がっているようです。アパレルや家具といった消費アイテムも大幅に値段が下がったバスケットの項目です。
【参考記事】
●懸念すべきは、トルコ政府の景気刺激策。価格高騰でトルコ「タマネギ騒動」勃発か!?(2018年12月5日、エミン・ユルマズ)
生活必需品の価格下落はポジティブで、消費者信用を上昇させ、間接的にトルコリラの底堅さにもつながっていると考えます。
このトレンドは少なくとも秋まで継続すると予想しているので、トルコリラも、しばらく底堅い動きをすると予想しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
■秋以降のトルコ経済は、原油価格の動向がカギに
PPI(生産者物価指数)も、21.66%まで下がってきました。
(出所:Bloomberg)
トルコのインフレ率の低下は景気悪化の副産物であり、需要低迷による一時的な現象だと主張する現地エコノミストもいますが、個人的には選挙が終わったことと治安の回復による観光収入の増加で景気は緩やかに回復していると考えます。
問題は観光シーズンが終わる秋以降の動きですが、原油価格が50ドル台で推移すればトルコ経済の回復も継続すると考えます。
(出所:Bloomberg)
■米国との関係改善でトルコリラ/円は20円台回復の可能性
今週(8月5日~)のトルコリラですが、対米ドルで大きな動きはありませんでしたが、米中貿易戦争の激化による円高によって対円で19円を割る場面がありました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
気になるS-400ですが、稼働まで1年間の猶予があり、その間、米国とトルコの交渉が継続する模様です。
【参考記事】
●トルコ政府がS-400到着を正式発表! それでも、トルコリラ/円が底堅いワケとは?(7月17日、エミン・ユルマズ)
トルコメディアの報道によると、先週(7月29日~)行われたトルコ軍の人事も米国やNATO(北大西洋条約機構)に配慮した形になりました。
これはとても重要な動きで、トルコ政府は2016年以降推進してきた親ロシア外交を転換させようとしている可能性があります。個人的にはエルドアン政権とトランプ政権は正式合意に至らないまでも、何らかの仮合意に達しているのではないかと予想しています。
米国との関係改善は、トルコリラにとっては大きなポジティブ要因で、大規模な追加利下げがなければ、トルコリラは対円で20円を超える可能性が高まったと考えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
■喜捨祭(犠牲祭)突入で、トルコリラは動きにくい
トルコは8月11日(日)から4日間、イスラム教の2大祭典のひとつである喜捨祭(犠牲祭ともいう)に突入します。
【参考記事】
●FX会社が警戒するトルコの「犠牲祭」とは? 日本発のトルコリラショック再開はある!?(2018年8月17日公開)
トルコでは8月11日(日)からの4日間、イスラム教の2大祭典のひとつ、喜捨祭(犠牲祭)が開催される。その間、連休になるためトルコリラ相場は大きな動きは起きにくいという (C)Anadolu Agency/Getty Images
喜捨祭の前の買い物需要で、週末までのトルコリラ相場も底堅い動きとなるでしょう。来週(8月12日~)の連休について、政府から、まだ正式発表が行われていませんが、9連休になる可能性もありますので、トルコリラ相場は大きな動きが起きにくいです。
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