■エルドアン政権が再び政治対立を煽る理由とは?
しかし、なぜこのタイミングでエルドアン政権は再び政治対立を煽ることにしたのでしょうか。
個人的には、解散総選挙が近いのではないかと考えます。エルドアン大統領には、急いで解散総選挙に持ち込みたい理由がいくつかあります。最大の理由は、元経済担当大臣のアリ・ババジャン氏の新政党ではないかと考えます。
【参考記事】
●G20サミットでS-400問題は進展したのか? リスクオン追い風に、トルコリラ/円は上昇(7月3日、エミン・ユルマズ)
新政党の準備は着々と進められていて、秋口には正式に立ち上がると予想されています。トルコの法律上、新しい政党が選挙に参加するためにはトルコの41以上の県で地方組織を形成する必要があります。
これには少し時間がかかるので、エルドアン大統領としては、新しい政党の選挙準備が整う前に総選挙をやりたいというインセンティブが大きいと考えます。

エルドアン大統領は、元経済担当大臣・ババジャン氏の新政党の選挙準備が整う前に総選挙をやりたい、という考えがあるとエミンさんは解説している (C)Anadolu Agency/Getty Images
ババジャン氏は、エルドアン大統領との意見の相違が理由で政治からいったん退いたわけですが、彼はまだ若く、市場関係者や欧米諸国と良好な関係を持っている人物であり、新政党は、たくさんの右派票を与党・AKP(公正発展党)から奪う可能性があります。
■トルコリラ/円は17円台前半まで下落する可能性あり
フラッシュクラッシュ後の米ドル/トルコリラは、5.8リラ前後で推移しています。本当に解散総選挙となれば通貨安(トルコリラ安)が進む可能性もありますが、選挙の決定はもうちょっと先だと考えますので、米ドル/トルコリラは、しばらく5.7~5.9リラのレンジで動く可能性が高いと考えます。

(出所:Bloomberg)
一方で、トルコリラ/円は18円台前半まで下がっていますが、今後も米中貿易交渉の進行具合や香港情勢の悪化による急な円高の可能性があり、トルコリラも対円で17円台前半まで下がる可能性があると見ています。

(出所:Bloomberg)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)