■トルコ経常収支の黒字化は極めてポジティブだが
昨日(11月12日)、トルコの9月の経常収支が発表されました。結果は24.8億ドルとなり、市場予想を上回っています。
また、直近12カ月の経常収支は合計で58.95億ドルになっていて、万年経常赤字国であるトルコにとっては、非常に珍しい経常黒字化が達成されています。
(出所:Bloomberg)
経常収支の黒字化は、トルコリラにとっても極めてポジティブな動きです。一方で、経常収支の中身を見ると、輸出増というよりも消費の冷え込みと通貨(トルコリラ)安による輸入減という側面が大きいのが気になります。
経常赤字が消えることが、トルコリラの下落リスクを少なくしている一方で、その背景に、景気後退があることがトルコリラの上昇を難しくしています。
(出所:TradingView)
■エルドアン大統領とトランプ大統領の首脳会談に注目
エルドアン大統領は、本日(11月13日)、米国を訪問し、トランプ大統領と会談を行う予定です。直前まで米国訪問が実現するかどうか不明でしたが、トランプ大統領からの強い首脳会談の要望もあり、実現することになりました。
11月13日に訪米するエルドアン大統領は、トランプ大統領と首脳会談を行う予定となっている。写真は6月に開催されたG20大阪サミットのときのもの (C)Anadolu Agency/Getty Images
首脳会談の主題は、「シリア情勢とトルコのS-400購入」になると、トルコメディアが報道しています。特にS-400に関しては、直近のテレビインタビューでオブライエン米大統領補佐官が、「S-400の購入は米国に非常に不快に感じさせていて、これを破棄しなければトルコに制裁が科される」と警告しています。
この制裁とは、「敵対者に対する制裁措置法」、つまり、CAATSA法に基づくもので、直近の米議会の動きを見ると、おそらく両党の支持で米議会を通過する可能性が高いです。
トランプ大統領は、以前からエルドアン政権に対しては友好的で、今回の首脳会談も米議会の制裁を回避するため、トルコ政府に対する最後のアシストになるかもしれません。
トルコはS-400の購入が完了していて、ミサイルもすでにトルコに届いていますが、稼働までに1年近くかかると言われていて、トランプ政権としては、S-400の稼働を何とか防ぎ、米議会によるトルコ制裁を回避したいというのが本音です。
【参考記事】
●トルコ中銀、予想外の2.50%利下げ実施! それでもトルコリラが堅調なのは、なぜ?(10月30日、エミン・ユルマズ)
●トルコ政府がS-400到着を正式発表! それでも、トルコリラ/円が底堅いワケとは?(7月17日、エミン・ユルマズ)
■トルコリラ小動き……これはスワップ狙いの好機に!
今週(11月11日~)のトルコリラですが、対円で18円台後半の小動きが続いています。
(出所:TradingView)
同じく米ドル/トルコリラも、この1週間、5.76~5.78リラという狭いレンジで推移しており、トルコリラのボラティリティは大きく低下しています。
トルコ政府は為替に関して強いグリップをきかせていて、上昇はしないものの下がりものしないという状況が続いています。
現地のエコノミストの間でも、米ドル/トルコリラが6.0リラを超えないよう、今後も中銀と国営銀行による為替介入オペが継続するというのはコンセンサスになっています。
(出所:TradingView)
これは、スワップポイント狙いの投資家にとってはチャンスだと考えます。
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つまり、トルコリラの投資でキャピタルゲインを狙うのは難しいですが、下がりもせず、ボラティリティも低下しているので、スワップポイントを狙うには最適な環境になっているということです。
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