■2020年はフラッシュ・クラッシュが起こるのか?
ここで気になるのは、2020年の為替のテーマの中に米ドル/円という通貨ペアが取り上げられていないことです。では、2020年の米ドル/円はどうなるのか?
今年(2019年)の米ドル/円は、結局、8円にも満たない、まれにみる狭いレンジ相場で終了しそうです。
(出所:TradingView)
確認してみると、今年(2019年)の米ドル/円は、オープンが109.69円、高値が112.40円、安値が104.46円、そして、現在が109.50円レベル。結果、年間のレンジは7.94円と、8円にも満たないレンジで終わりそうであることがわかります。
米ドル/円のもうひとつの注目は、今年(2019年)のボラティリティを壊してしまった1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュです。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
では、2020年早々に、再びフラッシュ・クラッシュはあるのか?
ここで、2009年からの月足勝敗表を見てみましょう。
(出所:ミドルマン・高城泰氏のツイッターより)
過去11年間での1月の米ドル/円相場は、3勝8敗と円高傾向が際立っています。
ただ、1月のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は、明確な傾向がなく、むしろ目立つのは「8月の円高」。
こうした点から考えれば、フラッシュ・クラッシュとは言わないまでも、1月の米ドル/円相場の円高というのは、警戒しておいた方が良さそうです。
■米大統領選挙は為替の波乱要因になる?
これを踏まえて、来年(2020年)の米ドル/円を展望します。
来年(2020年)は、米大統領選挙の年。
前回の米大統領選の時、2016年の米ドル/円は、かなりボラティリティの高いマーケットでした。
(出所:TradingView)
まず、ブレグジット懸念から英ポンド/円が急落するのを横目に、米ドル/円も120円レベルから99.02円まで、20円以上急落。
そして、米大統領選でトランプ氏が勝利すると、一気に16円暴騰するという乱高下を演じました。
【参考記事】
●ザイFX!で2016年を振り返ろう!(1)英国がEU離脱! 英ポンドは二度死ぬ!?
●ザイFX!で2016年を振り返ろう!(2)トランプ氏当選でまさかのリスクオン到来!
ただ、2016年と違い、来年(2020年)の米大統領選では、現職のトランプ大統領が再選するということになれば、米ドル/円には今年(2019年)同様、大きな動きは期待できないのかもしれません。
■新たなテーマは? 米ドル/円はレンジ相場が続くのか…
現在の米ドル/円は、2011年の相場に近い環境にあると言えます。
リーマンショックをきっかけに、120円から下落を続けた米ドル/円は、2011年に75円の安値に到達。その後、1年以上75~85円のレンジに落ち込みました。
それは、為替トレーダーにとっての生命線である、ボラティリティが奪われることにつながり、FXは収益性が高いと言われる時代は終わったとの声もありました。
ところが、2013年に入るとアベノミクスという新しいテーマがマーケットに投入され、米ドル/円は上昇を開始。
75円から125円まで、一方的に50円も駆け上がる大相場に変貌しました。
(出所:TradingView)
現在の米ドル/円も、105~115円という狭いレンジに落ち込んでおり、次のテーマ待ちといったところ。
つまり、アベノミクスのような新たなテーマがマーケットに投下されなければ、2020年の米ドル/円も105~112円といったレンジにはまり込んでいくのかも知れません。
2011年当時も、膠着相場にアベノミクスという新たなテーマが投入されることを想像するのが困難だったように、今回も、どういうテーマが米ドル/円相場に投入されるのかを考えるのは困難であると言えます。
ただ、今ある材料の中で、マーケットが大きく動くことが予想されるのは、来年(2020年)の米大統領選でトランプ大統領が敗退して、ウォーレン上院議員、もしくは、サンダース上院議員が勝利した場合。
彼らの経済政策は、あまりマーケットフレンドリーではなく、米国株の反落を誘引し、米ドル/円はあっさり100円を割り込んでくると想定してます。
(出所:Bloomberg)
(出所:TradingView)
ただ、繰り返しになりますが、こうした事態が起こらなければ、膠着した米ドル/円は次のテーマ待ち。
次のテーマでは、リブラやデジタル人民元といったステーブルコインの台頭が影響するのではないか、という意見もありますが、これは新しい分野になるので、どう変貌していくのかはわかりません。
【参考記事】
●ザイFX!で2019年を振り返ろう(3)仮想通貨業界に大手企業の参入相次ぐ
●フェイスブックの仮想通貨Libra(リブラ)がボロクソに言われているのは、なぜなのか?
とはいえ、為替マーケットは新しいテクノロジーの影響を受けながら、変貌を続けてきたので、個人的には、次にどういうテーマがマーケットに投入されるのかを楽しみにしています。
さて、早いもので今年(2019年)も、あと1週間を残すのみとなりました。
来年(2020年)こそ、ボラティリティが高く、収益性の高いマーケットを期待したいところです。同時に、先ほどお伝えしたとおり、ステーブルコインの台頭が為替相場にどういう影響を与えるのかを見届けるのも、楽しみです。
今年(2019年)も1年間、「ヘッジファンドの思惑」をお読みいただき、ありがとうございました。次回のコラムは、2020年1月9日(木)となります。
来年(2020年)も、よろしくお願いします。
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