(「ザイFX!で2019年を振り返ろう!(2)米ドル/円0.1銭原則固定のFX会社も出現!」からつづく)
■一時150万円突破! でも200万円到達は時期尚早だった?
2017年に度を超すような盛り上がりを見せ、翌2018年には前年の盛り上がりが幻だったかのように、一転、下落を続けたBTC(ビットコイン)でしたが、2019年は、途中、ちょっといい夢を見せてくれる相場展開が待っていました。
【参考記事】
●ザイFX!で2017年を振り返ろう!(6)暴君ビットコイン、天を衝く上昇相場を演出!
●ザイFX!で2018年を振り返ろう!(3)仮想通貨流出事件&暴落。暗黒時代到来かよ!?
いったいどんな夢を見せてくれたのか…? ビットコイン/円の週足チャートを見ながら振り返ってみたいと思います。
年初こそ2018年の暗澹とした流れを引きずっている印象が強かったビットコインですが、桜が咲く頃(2019年4月頃)になるとグググっと上昇。そのまま上昇トレンドを駆け上がり、6月には、一時150万円を突破したのです!
(リアルタイムチャートはこちら → 仮想通貨リアルタイムチャート:ビットコイン/円(BTC/JPY) 週足)
【参考記事】
●ビットコインが130万円を突破!コインチェックではモナコインの取扱い開始
この急上昇を受け、長かった冬の時代がようやく終わったか?と、久しぶりに沸き立った仮想通貨業界。
著名仮想通貨トレーダーのヨーロピアンさんは2018年夏、ザイFX!×ビットコインの取材に対して、ビットコインが再び200万円台へトライすると予測していましたが、その時期について「来年(2019年)にトライできれば御の字ですし、再来年(2020年)以降になるかもしれない」と発言していたことが、SNSなどで話題になったりもしました。
【参考記事】
●ヨーロピアン氏がビットコインを買う理由。早くて2019年に200万円超えへトライか?
チャートの勢いを見ていると、本当にこのまま200万円を突破する大相場になるかもしれない!と夢は大きく膨らんだものの、残念ながら2019年のビットコインの上昇は150万円台止まり…。
一気に200万円突破とはなりませんでしたが、ズバリ動向を予測したヨーロピアンさんの先見の明には驚くばかりです。
2020年こそ、200万円再トライとなるか!? 2019年に見せてくれた夢が現実のものとなる日は、近いのかも…しれません。
■楽天、ヤフー、IIJ、LINEなど大手企業の参入相次ぐ
さて、2019年の仮想通貨業界を賑わしたニュースと言えば、相次ぐ大手企業の参入でしょう。
まず、2019年1月には、みなし業者(※)だった2018年1月に巨額の仮想通貨流出事件を起こしたCoincheck(コインチェック)が、仮想通貨交換業者として関東財務局への登録を完了。
(※「みなし業者」とは、仮想通貨交換業者として登録申請中の業者のこと。申請期間中は登録の可否の判断がなされるまで、みなし業者として営業を続けて良いことになっていた。2019年12月現在、みなし業者に該当する業者はない)
コインチェックは、2018年4月に金融大手・マネックスグループの傘下に入り、現在は、マネックスグループの100%子会社です。
【参考記事】
●コインチェックはマネックスの子会社へ!買収金額は36億円。意外と少ない理由とは?
●コインチェックの正式登録を金融庁が発表。次は楽天系、LINE系の仮想通貨交換業者も!?
事件後、一時は原因究明や安全確認を優先し、新規口座開設をはじめ主要サービスの多くを休止していたコインチェックですが、新規口座開設は2018年10月に再開、その他のサービスについても同年11月頃にはおおむね再開していました(※)。
(※レバレッジ取引の新規取引は休止中。同サービスについては、2019年12月16日に、2020年3月13日をもってサービスを終了することが告知された)
2019年は、MONA(モナコイン)やXLM(ステラルーメン)など新たな仮想通貨の取扱いも開始。信頼回復に努めるだけでなく、積極的にサービスの拡充にも取り組み始めたようです。
【参考記事】
●ビットコインが130万円を突破!コインチェックではモナコインの取扱い開始
●コインチェックを徹底調査! 国内で唯一ファクトムの取引可能。コスト高って本当?
コインチェックが登録を完了した時、まだみなし業者だった楽天グループ傘下のみんなのビットコインは、その後、楽天ウォレットへと商号を変更。旧サービスであるみんなのビットコインの提供を終了し、2019年3月には仮想通貨交換業者として関東財務局への登録を完了しました。
楽天ウォレットとしてのサービス自体は、2019年8月に開始されています。
また、楽天ウォレットと同じく、2019年3月に仮想通貨交換業者として関東財務局への登録を完了した大手企業系の仮想通貨交換業者が、もう1つあります。それは、ディーカレット。
ディーカレットは、インターネットサービス大手、インターネットイニシアチブ(IIJ)が中心となって2018年に設立された業者で、株主には、伊藤忠、KDDI、第一生命、ビックカメラ、東日本旅客鉄道、電通など日本を代表する大企業がズラり…!
当初は現物取引のみの提供でしたが、2019年8月にレバレッジ取引の提供も開始。チャート機能が充実したiOS版のレバレッジ取引専用アプリをリリースするなど、参入以降、順調にサービス拡充が図られているようです。
続いて、2019年5月には、2017年12月の段階で仮想通貨交換業者として関東財務局への登録は完了していたヤフー出資のTAOTAOが、ついにサービスイン。
趣向を凝らしたキャンペーンを展開するなど、各種プロモーションにも力を入れている様子が伺えます。
そして、2019年9月になるとLINEのグループ会社で仮想通貨事業を展開するLVCが、仮想通貨交換業者として関東財務局への登録を完了。
「LINEウォレット」タブからアクセスできる仮想通貨取引サービス、「BITMAX」(※)の提供を開始しました。
(※このサービスはLINEのグループ会社が、2018年から日米以外の国で提供を開始していた仮想通貨取引サービス、「BITBOX」とは別のサービス)
国内で月間8200万人(※)のアクティブユーザーがいるというLINE。
(※注:LINE株式会社『LINE紹介資料2019年10月-12月期』より)
いつも使っているLINEアプリから仮想通貨取引ができるとなると、これまで興味がなかったという人が仮想通貨に興味を持つきっかけにもなりそうです。
このほか、仮想通貨取引そのものの提供をはじめたワケではありませんが、2019年6月にFacebook(フェイスブック)が発表した独自の仮想通貨「Libra(リブラ)」も話題になりました。
ただし、リブラの運用開始自体は2020年を目標としているようですので、2019年末現在、実際に世に出回っているワケではありません。
リブラは価格決定方法がビットコインなどとは異なり、過度な変動を抑制するしくみが用いられるそうで、安定した価格の下、新たな決済手段として、より低コストな送金を実現する仮想通貨になるかもしれないと一部で期待されているようです。
ただ、懸念を示す声もかなり多く聞かれるようではありますが…。
【参考記事】
●フェイスブックの仮想通貨Libra(リブラ)がボロクソに言われているのは、なぜなのか?
もしも、リブラが実際に世に出回れば、いったいどんな影響があるのか…? 運用開始と言われていた2020年を迎えるに当たって、注目しておきたい仮想通貨の1つと言えそうです。
■2019年にも起こってしまった…仮想通貨流出事件!
お伝えしたとおり、2019年は大手企業の参入という、仮想通貨業界にとって前向きなニュースが相次いだワケですが、逆に残念なニュースもありました。
――仮想通貨流出事件です。
2019年は、2018年ほど流出事件が頻発した印象はありませんでしたが、それでも記憶に残っているところでは、2019年7月に起こったビットポイントの35億円分(※)の仮想通貨流出事件が挙げられます。
(※事件発生時の第一報での概算被害額。第二報では約30.2億円分に修正された。換算レートは2019年7月11日16時時点のもの)
【参考記事】
●ビットポイントで約35億円分の仮想通貨流出!今度はビットコイン含む5銘柄が被害に!?
●ザイFX!で2018年を振り返ろう!(3)仮想通貨流出事件&暴落。暗黒時代到来かよ!?
流出したのは、ビットコイン、ビットコインキャッシュ、イーサリアム、ライトコイン、リップルの5種類の仮想通貨で、法定通貨については被害がなかったとのことです。
ビットポイントは事件後、流出した仮想通貨の調達を完了し、「サービスの再開に合わせ、お客様からの請求により払戻しをするなど、可及的速やかにしかるべき対応をさせていただきます」と発表していましたので、流出分の補償についてはきちんと行われた様子…?
2019年12月現在、すでに各種取引など主要なサービスはおおむね再開されているようです。
記者個人としては、不正流出した仮想通貨の補償は行われて然るべきだろうと考えますが、補償されるなら不正流出してもいい――とは、やはり思えません。
仮想通貨業者の業務フローにおいて、仮想通貨の一部をホットウォレット(※)で管理する必要性がある以上、完全無欠のセキュリティを敷くことは難しいのかもしれませんが、誰もが安心して利用できるよう、各業者にはでき得る限り、最新・最善・最強のセキュリティ体制の構築をお願いしたいところです。
(※「ホットウォレット」とは、インターネットに接続した状態のウォレット。反対に、インターネットから切り離した状態のウォレットは「コールドウォレット」という)
【参考記事】
●なぜ、仮想通貨の盗難はあとを絶たない?仮想通貨はどうやって管理するのが安全か?
■2020年春に改正資金決済法と改正金融商品取引法施行へ
こんな事件が後を絶たないところを見ると、まだまだ黎明期…という印象が強い仮想通貨業界ですが、法規制の面で新たな動きがありました。
2019年5月、仮想通貨業者や取引所などに対する規制強化が盛り込まれた改正資金決済法と改正金融商品取引法が成立。早ければ、2020年4月に施行される見通しです。
(出所:金融庁「国会提出法案(第198回)」関係資料)
改正に伴い、「仮想通貨」の法令上の呼び方は「暗号資産」に改められましたが、ここでは引き続き「仮想通貨」という呼称を使っていきたいと思いますので、ご承知おきください。
かいつまんでお伝えすると、今回の改正では、まず、仮想通貨の不正流出リスクへの対策として、仮想通貨業者に対し、業務を円滑に進める上で必要となる分を除き、顧客から預かった仮想通貨を信頼性の高い方法(コールドウォレットなど)で保管すること、さらに、ホットウォレットで管理する顧客の仮想通貨については、それと同種・同量の仮想通貨を保持することが、資金決済法上で義務付けられました。
【参考記事】
●コインチェックの正式登録を金融庁が発表。次は楽天系、LINE系の仮想通貨交換業者も!?
ここ1、2年の内に起こった国内の不正流出事件を見ると、いずれも何らかの形で流出分の補償は行われていましたが、その方法が現金での補償なのか?仮想通貨での補償なのか?対応は、業者によって異なっていました。
【参考記事】
●流出事件のZaifはフィスコ仮想通貨取引所に吸収!テックビューロは廃業へ。70億円分の補償は?
●コインチェックでNEMの補償に伴う日本円返金。総額466億円! 一部サービス再開も
個人的には、流出した仮想通貨は相応の現金ではなく、仮想通貨で返すのが自然では?と感じていましたが、今回の改正内容を見ると、やはり、仮想通貨は仮想通貨で返還すべし、というのが大原則となるようです。
また、今回の改正では、金融商品取引法上の「金融商品」の定義に仮想通貨が追加され、これまで同法の規制対象外だった仮想通貨の証拠金取引(レバレッジ取引などとも言う)についても、FX(外国為替証拠金取引)と同様に、金融商品取引法上の規制が適用されることになりました。
さらに、金融商品取引法には、仮想通貨取引に関わる不公正な行為、たとえば不当な価格操作などを禁止する項目も盛り込まれます。
ここではこれ以上触れませんが、規制のあり方が曖昧だったものが法令上できちんと整理され、明文化されることは、ユーザーが安心して取引をする上でも大事なことでしょう。
仮想通貨をめぐる前向きなニュースの1つとして、とらえて良さそうな動きです。
■レバレッジ規制については、まだ議論の余地が?
ただし、法改正に関連して、仮想通貨の証拠金取引における証拠金率(レバレッジ)については、内閣府令や関連法令によってその数字や算定法を定めるのではなく、該当する自主規制団体の規制・規則に委ねるべきではないか?とする議論などが、まだ残っているようです(参考:日本仮想通貨ビジネス協会「デリバティブ規制に関する提言書」 ※)。
(※「日本仮想通貨ビジネス協会」とは、仮想通貨関連ビジネスに従事する事業者や参入を検討している事業者同士が交流、意見交換、勉強会などを行うことで知見を深め、仮想通貨業界全体の健全な発展を目指すことを目的とした団体。自主規制団体ではない。ちなみに、ザイFX!も準会員として同協会に参加している)
現状、仮想通貨の自主規制団体であるJCVEA(日本仮想通貨交換業協会)は、「証拠金取引に関する規則・ガイドライン」により、当面の間、仮想通貨の証拠金取引における証拠金率は25%以上(レバレッジ4倍以下)とする、と定めており、ざっと見たところ国内の仮想通貨交換業者は、現状、どこもレバレッジ4倍以下で証拠金取引サービスを提供しています。
【参考記事】
●金融庁が仮想通貨の自主規制団体を認定。証拠金取引のレバレッジは4倍へ引下げ方針
以前は、もっとハイレバレッジで証拠金取引ができる業者もありましたが、協会の自主規制に従い、各業者とも順次レバレッジの引き下げを行ったのです。
ユーザーとしても、レバレッジの倍率が今後どうなっていくのか?というのは大いに気になるところ。改正法の施行までに、何らかの動きがあるかもしれません。引き続き、注目しておきたいと思います。
猫も杓子もビットコイン、ビットコインと騒いでいた時期に比べると、世間の仮想通貨熱はずいぶん冷めてきたように感じますが、お伝えしたとおり、2019年は大手企業の相次ぐ参入や法整備など前向きな出来事も多くありましたし、ビットコイン相場も回復の兆し(?)を見せてくれました。
仮想通貨市場が成熟期を迎えるのは、まだこれから…期待を寄せつつ、FXとともに仮想通貨の動向にも注目しましょう!
2020年も、「ザイFX!」ならびに「ザイFX!×ビットコイン」をどうぞよろしくお願いいたします。
【参考記事】
●ザイFX!で2019年を振り返ろう!(1)大暴落後は動かない、動かない、動かない
●ザイFX!で2019年を振り返ろう!(2)米ドル/円0.1銭原則固定のFX会社も出現!
【参考コンテンツ】
●ビットコイン・仮想通貨の取引所/販売所を比較。取引コストが安いのはどこ?
●「ビットコイン・仮想通貨のFX」ができる取引所を比較。上昇も下落も収益チャンスに
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)