■FRBの利下げは織り込み済みだった
新型コロナウイルスの影響でリスク回避が続いていますが、3月3日(火)にFRB(米連邦準備制度理事会)が、0.5%の緊急利下げを行いました。
※FFレートの誘導目標レンジ上限を掲載
※BloombergのデータをもとにザイFX!が作成
株式市場はいったん反発しましたが、3月17日(火)~18日(水)に行われるFOMC(米連邦公開市場委員会)での0.5%の利下げが、すでに織り込まれていたこともあって、反発も続かず軟調な展開に。
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●FOMCとは? 米国の政策金利FFレートやイベントのスケジュールを徹底解説!
米ドル/円は、日米の金利差縮小のため、3月4日(水)に106.84円まで下落しました。
(出所:Trading View)
■利下げをしても感染は止まらない!
FRBが緊急利下げを行う前に、G7(先進7カ国)財務相・中央銀行総裁による電話会議が行われましたが、そこで、新型コロナウイルスの経済への影響に関して、「あらゆる手段を用いる」との声明が出たこともあり、FRBはそれを受けて、利下げを行ったことになります。
そして、3月4日(水)には、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])も0.5%の利下げを行いました。
※翌日物金利の誘導目標を掲載
※BloombergのデータをもとにザイFX!が作成
ただ、利下げをしたとしても、新型コロナウイルスの感染が止まるわけではなく、株式市場は再度、下落します。
【参考記事】
●株はリーマンショック以来の大幅下落、3月FOMCは0.5%の利下げか。米ドル/円は105円も(3月3日、バカラ村)
●新型コロナ対策でFRBが0.5%の緊急利下げ! ドル/円は短期で105円台、中期では100円も(3月5日、西原宏一)
●新型コロナのダメージに金融緩和や財政出動は効かない!? 米ドル/円は105円前後へ(3月5日、今井雅人)
●新型コロナの影響で市場は今後どうなる? 世界中が金利ゼロへ!? ドル/円100円割れも!(3月4日、志摩力男)
■米ドル/円は一気に101円台へ!
週末(3月7日・8日)に、米ニューヨーク州が非常事態宣言を出したことや、イタリアが北部の一部を封鎖する措置に踏み切ったことなどから、週明け3月9日(月)は、米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)がギャップダウンで始まりました。
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さらに、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの産油国が、原油の協調減産交渉で決裂したことや、サウジアラビアが原油の増産を検討しているとの報道も重なり、米ドル/円は一時、101.17円前後まで下落しました。
(出所:Trading View)
米ドル/円の先週(3月2日~)の終値は105円台でしたので、昨日(3月9日)だけで、一気に101.17円前後まで下落してきたことになります。
【参考記事】
●米ドル/円、95円が現実的なターゲットに!? 新型コロナに減産協議決裂…リスク満載!(3月9日、西原宏一&大橋ひろこ)
■米ドル安の大きな流れは継続しそう
基軸通貨である米ドルが動き出していることもあり、為替市場全体で、ボラティリティが高まっています。
米長期金利(10年物国債利回り)は、一時的に0.4%を下回るほどの下降トレンドが続いており、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFEDウォッチによると、3月17日(火)~18日(水)のFOMCにおける、0.75%以上の利下げ確率は100%となっています。
(出所:Bloomberg)
(出所:CME)
すでに0.5%の緊急利下げを行い、来週、さらに0.75%以上の利下げが実施されるのは、さすがに行き過ぎではないかと思います。
行き過ぎが修正されて、一時的に米ドル高になる局面もあるかもしれません。ただ、米国と主要国の金利差が縮小していくこともあって、大きな流れの米ドル安はまだ、継続していくのではないかと考えています。
■米ドル/円、100円トライを予想
米ドル/円はこれまで、104円台半ばのサポートが長く機能し続けてきましたが、それを下回ってきたこともあって、まずは100円をトライする動きが考えられます。
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●FXチャートのトレンド分析【前編】サポートラインとレジスタンスライン
短期的には行き過ぎの状態ではありますが、104円台半ばが、今度はレジスタンスとなり、100円をトライする動きを予想します。
(出所:Trading View)
100円を一気に下抜けていくことはないと思いますが、上値を徐々に切り下げてきて、下抜ける可能性があるのではないかと考えています。そのため、米ドル/円は戻り売りで考えています。
ただし、長期的には、100円以下での滞空時間は、短いのではないかと思います。
■豪ドル/米ドルに長い下ヒゲ。押し目買いか
豪ドル/米ドルも、3月9日(月)のリスク回避で急落しましたが、豪ドルクロス(豪ドルと米ドル以外の通貨との通貨ペア)を含めて、下ヒゲが長く出ています。
(出所:Trading View)
IMM(国際通貨先物市場)のポジションでも、投機筋の米ドルに対する豪ドルの売り越しが多くなっており、この買い戻しが出てくるのではないかと思います。
※CFTCのデータを基にザイFX!が作成
豪ドル/米ドルは、0.6660ドルがレジスタンスとなっていましたが、これを超えてきています。リスク回避の場面では、一時的に下がると思いますが、下ヒゲもあることから、豪ドル/米ドルも買いで良いのではないかと考えています。
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