■シリア反政府勢力とシリア政府軍の戦いが激化
今週(2月3日~)のトルコは、またシリア情勢に揺らされています。
トルコが内戦当初から支援してきたシリアの反政府勢力と、シリア政府軍の戦いが激化していて、トルコ軍にも被害が出ています。
【参考記事】
●トルコ人エミン氏がズバリ直言。シリアよ、落ち着け!その時トルコリラは逆に動き出す(2018年5月23日、エミン・ユルマズ)
アサド政権は、実質的には内戦に勝利し、反政府勢力やISIS(イラク・シリア・イスラム国)から国土の大半を奪還しました。
まだ反政府勢力の支配下にあり、最後の拠点となっているのはトルコ国境に近いイドリブ県です。
トルコとロシアの合意によって、1月12日(日)にイドリブで休戦が結ばれたはずでしたが、シリア政府もロシアも休戦を守る気がなく、戦闘が続いています。
シリア政府軍は、イドリブ奪還のために総攻撃を仕掛けていて、イドリブから大量の難民がトルコに押し寄せています。
2019年12月以降、イドリブからトルコに入った難民の数は36万人に及ぶとされています。イドリブは内戦の前も150万人が住む大都市でしたが、内戦で人口が400万人に達しました。
街がシリア政府の手に戻れば、トルコに100万人以上の難民が新たに押し寄せる可能性があります。
■シリア内戦は、トルコとロシアの代理戦争に発展
イドリブにはトルコ軍も駐在していますが、2月3日(月)にアサド政府軍の攻撃によってトルコの兵士5人とトルコの民間人3人が死亡しました。これを受けて、トルコ軍は大規模な部隊を現地に派遣し、アサド政府軍に報復攻撃を開始しています。
アサド政府軍の攻撃によって、トルコの兵士と民間人に被害が。これを受けて、トルコ軍はアサド政府軍に報復攻撃を開始している (C)Anadolu Agency/Getty Images
問題を一段と複雑化させているのは、シリアの内戦がロシアとトルコの代理戦争に発展していることです。シリア政府のバックにロシアがいて、イドリブへの空爆もロシア軍が行っています。
【参考記事】
●トルコ中銀が直接介入でリラを下支え!? イラン情勢より重要なリビア内戦を解説(1月15日、エミン・ユルマズ)
エルドアン政権は、2016年のクーデター未遂以降、ロシアと良い関係を築いてきましたが、直近でその関係が崩れかけています。
【参考記事】
●東ローマ帝国滅亡からクーデター失敗まで! トルコリラ急落の今、トルコの歴史を振り返る
●なぜ、トルコリラは再び下落しているのか? エルドアン大統領がトルコ最大の銀行没収!?(2018年9月19日、エミン・ユルマズ)
エルドアン政権は、2016年のクーデター未遂以降、ロシアと良い関係を築いてきたが、直近でその関係が崩れかけているという。写真は2018年9月に開催された、トルコ、ロシア、イランによる3カ国会談のときのもの (C)Anadolu Agency/Getty Images
その証のひとつとして、トルコは今週(2月3日~)、ロシアと敵対しているウクライナに2億トルコリラ(約36億円)の軍事支援を行うことを発表しました。
トルコ軍が、今後どこまでシリア政府軍と直接衝突するのかは予想できませんが、トルコ軍の過剰な介入は、ロシアとトルコの軍事衝突の危険をはらんでいます。
■トルコリラ/円の低ボラティリティ相場は続きそう
マーケットは、先週(1月27日~)から、新型コロナウイルスの話題で大きく乱高下しています。
【参考記事】
●トルコ東部地震、GDPへのインパクトは? トルコリラ/円は17.50円程度が下値メド(1月29日、エミン・ユルマズ)
トルコは近年、エルドアン政権の親中外交も貢献し、中国人の観光客が増えました。しかし、現時点でトルコ国内に新型コロナウイルスの感染は確認されていません。
新型コロナウイルスによるリスクオフで、イスタンブール株式市場の代表的な株価指数であるイスタンブール100種指数は、1月の高値から一時、5%程度下落しましたが、トルコリラは、対米ドルで、ほとんど動きませんでした。
(出所:Bloomberg)
対円でもボラティリティが低く、18円台前半で推移しています。
シリア情勢によって、2月中に18円割れの場面もあると予想していますが、低ボラティリティ相場は、しばらく続くと考えます。
(出所:Trading View)
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