■戦後最大の「危」は戦後最大の「機」でもある
しかし、金融相場の現状は違う様子を見せている。執筆中の現時点で、日経平均先物は1万9500円に近いレベルにあり、NYダウは昨日(4月9日)、一時2万4000ドルにトライした。
(出所:TradingView)
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実際、米三大指数と日経平均はそろって3月安値から20%以上の上昇幅を達成、テクニカル上の視点では、すでに底打ちを果たした可能性もある、と見なされている(ちなみに、高値から20%下落すればベア(下落)トレンドへの転換、逆に安値から20%の上昇があれば、ブル(上昇)トレンドへの転換とみなすルールがテクニカルの世界において存在するが、厳密なものではないことに注意)。
さらに、ドイツ、フランスなどEU諸国やアジアその他の国々の株価を見るとわかるように、世界の株式相場を平均すれば、それはすでに3月安値から離れた位置にある。防疫事情の深刻化と比例した値動きとなっておらず、むしろ「ダイバージェンス」のような傾向を示している。これこそ重要なサインであることは見逃せない。
言ってみれば、現実における最悪な状況はこれからかもしれないが、金融相場における最悪な状況はすでに過ぎたかもしれない。その可能性があるとしたら、他でもない、FRBを始め、世界の中央銀行や政府が打ち出した一連の政策が好感され、また、実際に市場を支えることができていることを示す。
戦後最大の「危」は戦後最大の「機」でもあることを、今こそ認識しなければならないかと思う。
■悲観的な見方の多くは経済政策の効果を過小評価している
今回のコロナショックは、経済や金融の問題ではなかったから、防疫に成功しない限り相場の底入れなしといった考えも根強く、また間違いとはいえない。また、今回の事態が深刻だから、大恐慌以来の景気後退をもたらす可能性が高く、とても相場が底入れするとは言えない、いった見方が多いことも承知している。
しかし、悲観的な見方の多くは、戦後最大規模の景気刺激策の効き目、また、前人未踏の領域に踏み込んだ主要中銀の政策効果を見逃している。その上、相場は常に現実より先に行き、また、将来のことを考え、いろいろな予測や思惑を織り込む習性を持っているものだ。悲観的な見方をする向きはこのことを過小評価しているリスクも大きい。
確かに「防疫の成功なしでは、金融、財政政策が効かない」といったリスクも大きい。反面、人類の歴史をもう1回勉強すればわかるように、ウイルスや病気との戦いで最終的に勝利したのは常に我々人類であることも歴とした事実である。今は中世の時代ではなく、2020年なので、徹底的な封じ込めさえ行われれば、必ず今回の危機を乗り越えられることも確かだ。
中国(よい見本ではないかもしれないが)、韓国など成功した実例に照らして考えると、夏場までにはなんとか危機の収束を図れるのではないかと筆者は思う。
筆者は感染症の専門家ではないから、もちろん、これは「独断と偏見」の見方ではあるが、その現実性は低くないとも思う。
あのSARSの時も、結局、特効薬や退治方法がないまま、自然に収束したから、今回もそのような行方になることが期待できる。
■経済対策が効きすぎて「コロナバブル」の可能性さえある
ウイルスの蔓延はいずれ収まるが、深刻な景気後退の懸念は根強い。だからこそ、各国中銀や政府の景気刺激案は簡単に撤回されない。
前述のように、そもそも経済や金融の問題ではなかったから、戦後どころか、人類史上最大の景気対策案が防疫成功後も残るわけで、原子爆弾級の景気浮揚力をもたらすことは間違いないだろう。
実際、米大統領は2兆ドル規模のインフラ投資構想を打ち出しており、防疫成功後のさらなる景気浮揚策も準備中と伝わっている。今回のコロナショックはこれからの「コロナバブル」につながる可能性さえあるかとみる。
(出所:TradingView)
「コロナバブル」という言葉は一部の方から反感を買うかもしれないが、前述のように、深刻になりすぎた「コロナショック」を退治する戦後最大規模の対策が効きすぎて、一転してバブルをもたらす可能性があるということのたとえであり、可能性は十分あるかと思う。
このあたりの話はまた次回にでも展開したいが、目先、株式市場の切り返しはまだ序の口であることを強調しておきたい。そして、株式市場の底入れにつれ、為替市場ではクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の浮上が鮮明になってくることに注意しておきたい。市況はいかに。
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