■衝撃の米雇用統計でバイ・ザ・ファクトへ
先週(5月4日~)発表された4月の米雇用統計はNFP(非農業部門雇用者数)が2050万人の減少、失業率は14.7%でした。
予想されていたとはいえ、衝撃的な数字でしたね。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)
ロックダウン中ですからいい数字になるわけがない、ということですよね。
マーケットも悪い数字に身構えていましたから、実際に数字が出ればバイ・ザ・ファクト的な巻き戻しが起こります。
米雇用統計発表直後から米ドル/円は上昇。今朝は107円にタッチしています。
バイ・ザ・ファクトの動きなんですね。
(出所:TradingView)
そうですね。悪い数字を予想して売っていた人たちの手仕舞う動きなのでしょう。
今日(5月11日)の日経平均も非常に強い動きをしています。
前回レジスタンスとなった年初来高値・安値の50%戻しを勢いよく上抜けてきました。
米国株でもナスダック総合指数が年初来高値を更新しています。
VIX指数が30を割ってきましたし、米原油先物も20ドル台まで戻しました。
マーケットが落ち着きを取り戻してきたのでしょうか。
(出所:TradingView)
■米国でもマイナス金利導入へ?
米国でのマイナス金利導入が話題となっている影響もあるのでしょう。
米FF(フェデラルファンド)金利先物市場では5月8日(金)、2020年10月限が一時、マイナス金利を織り込む水準に達しました。
早ければ年内にもマイナス金利の導入を催促している、ということになります。
FRB(米連邦準備制度理事会)の関係者はマイナス金利の導入に否定的ですが、先物市場の催促が急速に進んでいます。
為替市場への影響でいえば、やはり米ドル安なのでしょう。
難しいのはドルストレートすべてで米ドル安とはなっていないところ。
まず、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])がマイナス金利導入に否定的な姿勢をほのめかしており、豪ドルが買われました。
次に、ユーロ/米ドルが上昇すれば米ドル売りが鮮明となるのですが、ユーロ圏もコロナ禍を筆頭に悪材料が多い。
そうなると、豪ドルの次に米ドルが売られるのは対円となる可能性があります。
(出所:TradingView)
カレンダー的には「セル・イン・メイ」の5月。
過去の検証では、5月は「株を買う月」ではなく、「株を手仕舞う月」です。
株が崩れてくると米ドル高になる可能性はありませんか?
米ドル/円はリスクオンによる円安の動きは限定的ですが、リスクオフには反応しやすくなっています。
上値は107.50円くらいまであるかもしれませんが、リスクとしてはダウンサイドでしょう。
■天体の動きや新興国も気になる
天体の動きも気になります。
5月13日(水)からは金星の逆行が始まります。
前回、金星が逆行した2018年10月5日(金)の前後からクリスマスに向けて株式市場が大きく崩れました。
(出所:TradingView)
114円から、翌年初のフラッシュクラッシュでつけた104円台まで10円の下落となった相場ですね。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(2019年1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?(2019年1月17日)
●フラッシュクラッシュのロスカット等未収金は過去3番目の規模! 25%がくりっく365から発生(2019年1月29日)
新興国の動きも気になりますね。
トルコでは外貨準備が急減しており、金融当局はシティグループ、UBSグループ、BNPパリバグループに対してトルコリラ取引の禁止を通達しました。
レバノン、アルゼンチンに続いて、万が一トルコがデフォルトなんていう事態になったら――。
さすがにトルコがデフォルトすることはないでしょうが、トルコリラは史上最安値を更新中で、リスクは高いでしょう。
【参考記事】
●日本は緊急事態を海外に合わせて解除!? 巨額の政府支出で危険な通貨は?(5月7日、志摩力男)
●原油価格暴落で逆オイルショックに!! トルコリラは対米ドル・対円で下落継続へ(4月22日、エミン・ユルマズ)
●為替相場は当面、レンジが続きそう…。米ドル/円は106.80~109.30円程度を想定(4月16日、今井雅人)
(出所:TradingView)
■原油のマイナス価格の再現は? 5月19日の納会に注意!
為替市場の方向性が定まらないのは、マイナス金利などの話題による米ドル売りの一方で、トルコのような新興国からの資金逃避による米ドル需要が根強く残っているせいもあるかもしれないですね。
今週(5月11日~)の予定ですが、5月13日(水)にRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])の政策発表が予定されています。
据え置き予想ですが、RBNZのオア総裁は「マイナス金利を排除しない」と発言しています。気をつけておきたいですね。
来週(5月18日~)ですが、5月19日(火)は米原油先物6月限の納会。
先月(4月)、5月限の納会直前にはマイナス価格に突っ込みました。
今回は対処が進んでおり、波乱はないだろうと見る向きが多いですが……。
さて、今週(5月11日~)の戦略はどう考えますか?
【参考記事】
●原油価格が史上初のマイナスに! 一体なぜ? 各社の原油CFDはマイナス価格になったのか?
●原油価格暴落で逆オイルショックに!! トルコリラは対米ドル・対円で下落継続へ(4月22日、エミン・ユルマズ)
●WTI原油暴落の背景にあったロックダウン。買われ続けるスイスフランに介入の可能性!?(4月23日、西原宏一)
(出所:TradingView)
マイナス金利の話題もあり、米ドル/円の戻り売りでいいのではないでしょうか。
ただ、米ドル/円が下がるためには高値圏にある豪ドル/円の下落が必要。
豪ドル/円が大きく崩れてくれば、米ドル/円の下値余地も拡大してくるのだと思います。
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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