■FOMC通過で、株価急落へ
先週(6月8日~)、日米ともに株価が大きく崩れました。
NYダウのチャートは「アイランドリバーサル(※)」ですね。
先週(6月8日~)の高値がきれいな離れ小島を作って下落しています。
理由としては、「新型コロナ第2波警戒で下落」と解説されることも多いですが……。
(※編集部注:「アイランドリバーサル」とは、窓を開けた後に相場が反転し、再び窓を開けて元の水準へ戻った際に形成される「離れ小島」のようなチャート形状のこと)
【参考記事】
●第3次世界大戦の危機!? 今はイラン情勢がすべて。ドル/円や豪ドル/円は戻り売りか(1月6日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
第2波が来ていることは事実かもしれませんが、株価下落の理由かと言われるとピンときません。後付けの解説なのでしょう。
先々週(6月1日~)からFOMC(米連邦公開市場委員会)での「YCC(イールドカーブ・コントロール)」導入期待があり、株高やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の上昇が進みました。
ナスダック総合指数はFOMCが開催された6月10日(水)、1万ポイントの大台を初めて達成しています。
【参考記事】
●株価は全戻しで一段落か。二番底はない? ドル/円は106~110円程度のレンジ続きそう(6月8日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
ところが、今回のFOMCではYCCの導入は見送られました。
FOMCを通過したことで株高、クロス円上昇の巻き戻しが始まり、翌日(6月12日)は日本株のメジャーSQ(※)。
SQ値を下に持っていこうとする力が働いたのか、一時2万2000円割れまでオーバーシュートした、といったところでしょう。
(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと)
(出所:TradingView)
FOMCをターゲットにしたポジションが手仕舞われる動きと、SQが絡んでの急落という解釈ですね。
■パウエルが話せば株価が下がる
ナスダック総合指数の1万ポイント到達で達成感がありますし、当面、株式市場では調整が続くのではないでしょうか。
米国では人種差別抗議デモが続いており、週末にはアトランタで新たな事件も起こりました。これもリスクオフ材料です。
選挙を控えたトランプ米大統領が株価下落を放っておくとは思えませんから二番底はないでしょうが、目先は調整が続き、大統領選まで上がったり下がったり、ボラティリティの大きな展開をイメージしています。
【参考記事】
●株価上昇=経済政策が正しいと言えるのか? 迫る大統領選、人種問題がトランプの逆風に!(6月10日、志摩力男)
●株価は全戻しで一段落か。二番底はない? ドル/円は106~110円程度のレンジ続きそう(6月8日、西原宏一&大橋ひろこ)
今週6月16日(火)、6月17日(水)にはパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の半期議会証言です。
FOMCがあったばかりですから、大きなイベントにはならないでしょう。
それにしてもFOMC後のパウエル会見では、話すたびに株価が下げていきました。
パウエルさんが話すと株価が下がる――。ジンクスのようになっていますね。
就任直後はとくに顕著でしたが今回、久しぶりに炸裂しましたね。
【参考記事】
●パウエル議長が話すと株下落の法則再び!? 5月に向けて、米ドル/円は焦らず戻り売り(2018年4月9日、西原宏一&大橋ひろこ)
●パウエル議長が話すと株下落の法則発動!? 株のチャート形状悪化! 米ドル/円は…?(2018年3月26日、西原宏一&大橋ひろこ)
6月10日(水)のFOMC後に行われた記者会見で、パウエルFRB議長が話すたびに株価が下げていったと西原氏は指摘。大橋ひろこ氏は「パウエルさんが話すと株価が下がる」というジンクスのようになっているとコメントした (C)Bloomberg/Getty Images News
■BOE、マイナス金利と量的緩和拡大に注目
今週(6月15日~)は、日本と英国で金融政策発表があります。
結果の公表は、日銀金融政策決定会合が明日6月16日(火)、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])のMPC(英中銀金融政策決定会合)が6月18日(木)です。
日銀は無風となりそうですが、MPCはマイナス金利についてのアナウンスメントと、量的緩和の拡大規模が注目。
マイナス金利について英中銀チーフエコノミストのホールデンさん、副総裁のカンリフさんなどから発言が相次いだこともあり、一部では導入期待が高まっています。
ただ、今回は見送りの予想。
量的緩和の規模については、1000億ポンドの増額がコンセンサスです。
【参考記事】
●トランプの米ドル高発言は神予想の再来!? 米ドル/円、106円台ミドルは買ってもいいか(5月18日、西原宏一&大橋ひろこ)
英ポンドについては「通商合意なき離脱」の可能性がくすぶっており、不確実性が高い。触りにくいですね。
【参考記事】
●ブレグジットの移行期間延長は不可避? 復活したジョンソン首相は奇跡を起こせるか(4月22日、志摩力男)
■コロナが「一物一価」を崩壊させる?
コモディティ市場では、ゴールドのもみ合いが長く続いています。
西原さんが予想するように株価の調整が続くなら、そろそろ水準を切り上げてもおかしくない雰囲気ではありますね。
また、値動きとは関係ありませんが、「モノ」であるコモディティ市場で「一物一価」の原則が崩れ始めています。
現物と先物の価格差は本来、アービトラージ取引により解消されますが、新型コロナで人だけでなくモノの移動が制限されたことにより、現物取引ができない反面、先物市場に資金が流入し、価格の乖離が大きくなっています。
アービトラージが効きにくいことから流動性も低下しており、価格差が解消されにくくなっています。
原油も貯蔵タンクの問題からマイナス価格に陥りました。
モノの取引であるコモディティならではですね。
【参考記事】
●原油暴落! 今日がクライマックスかも!? 為替市場のルールは、変わりつつある!(4月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
●原油価格が史上初のマイナスに! 一体なぜ? 各社の原油CFDはマイナス価格になったのか?
今週の戦略は、どう考えますか?
株価の調整を見込んで、米ドル/円の売りですね。
107円台後半から108円台を丁寧に戻り売りしていきたいと思います。
106円、105円を下抜けるのは容易ではありませんが、どこかで急落する局面があるのではないでしょうか。
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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