■大幅下落した英ポンド/円も、円高ではなく英ポンド安が原因
次に、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の状況を見てみよう。
主要クロス円のうち、英ポンド/円は反落が一番大きく、9月1日(火)高値142.74円より、一時10円近い下落幅を達成したのだから円高と言えるだろうといった反論が出てもおかしくない。しかし、それもまた違うと思う。
(出所:TradingView)
最近、英ポンド/円が高値を付けた日付に注目すれば、問題の核心を理解できると思う。
その日、つまり9月1日(火)は、ドルインデックスの直近の安値打診と同じ日であった。
(出所:TradingView)
それは、英ポンド/円の上昇にしても下落にしても、推進力は英ポンドであり、円はあくまで二の次であることを示唆する証拠だ。目先、英ポンド/円の下落は、あくまで英ポンド安の影響であり、円高ではないことを語っている。
言い換えれば、米ドル全体が急落し、9月1日(火)にいったん底打ちしたから、英ポンド/米ドルも同日、いったん頭打ちとなった。
リンクしたように、英ポンド/円も同時に頭打ちとなり、その後、英ポンド/米ドルの大きな反落につられた形で反落してきただけの話だ。英ポンド安とは言えるが、円高とは言えないゆえんである。
もう夏は過ぎたが、円はなお「蚊帳の外」に置かれる状況を再認識できる。
ユーロ/円、豪ドル/円などの主要なクロス円も、英ポンド/円ほど鮮明ではないものの、基本的な構造は同じだ。このような市場の内部構造から考えて、円高云々を言うナンセンスを改めて指摘しておきたい。
■今後のクロス円の動向は、米ドル全体の値動き次第
これからの市況を予測するのにも、前述の「常識」は重要だ。
要するに、クロス円における反落の進行がこれから続くかどうかを測る上で一番重要なのは、米ドル全体の値動きで、円の動向は、まず無視しても良いだろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
米ドル全体の切り返しが続ければ、クロス円の反落が続くといったロジックは、当面、有効だと思う。
米ドル全体の切り返しは、9月に入ってから米株市場の乱高下と連動しているところも見逃せない。
3月高値から米株高・米ドル全体安といった「セット」が見られただけに、9月に入ってから、その逆転が生じたわけだ。肝心なところはやはり、米国株の動向だと言える。
米国株について、最近ホットな話題であるだけに、、巷では市況や材料が克明に報道され、いろんな分析や解釈が満ちているから、ここでは詳しく触れないが、1つだけ言っておきたい。
コロナショック当時、米国株の売られすぎやこれから大きく切り返してくることをまったく予想できなかったセンセイたちは、今、口を揃えて米国株の底固さを語っているから油断は禁物だ。
筆者は米大統領選の行方が懸念されていることもあって、当面、米国株の動向を楽観視できないと思う。
ゆえに、米ドル全体の切り返しが続き、英ポンドをはじめとする主要な外貨のさらなる反落あり、また、リンクしたクロス円のさらなる反落ありと見る。
米ドル/円は、引き続き「蚊帳の外」で、弱含みの保ち合いの状況が続くのではないかと思う。検証は、また次回。
市況はいかに。
(事情により、次回のコラムを休載させていただきます。ご了承ください。)
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