■直近の米ドル/円の値動きから、やはり「円高は杞憂」
先週(10月2日)は、用事があって本コラムを1回休ませていただいた。その間、トランプ氏のコロナ感染などの「騒ぎ」があったが、市況の進展は、大まかには想定範囲内に留まった模様だ。
前回(9月25日)のコラムのタイトルに、まず、「円高は杞憂」という文字があった。
【参考記事】
●円高は杞憂! クロス円の値動きは米ドル次第で、夏が過ぎても円は「蚊帳の外」(2020年9月25日、陳満咲杜)
7月安値をいったん割り込んだだけに、円高再来の声が多かったが、いったん106円台前半まで切り返してきた米ドル/円の値動きから考えると、杞憂に終わる可能性が大きいかと思う。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
もちろん、円高リスクが完全に消えたわけではない。主要なクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における間接的な円高圧力は、むしろこれからの公算が大きいから、米ドル/円の頭は、なお重いと思われる。
しかし、主体性を発揮する値動き、いわゆるリスクオフの円高の再来は回避でき、また、これからも見られない可能性が大きいと推測されるため、本格的な円高の再来といった心配は、やはり不要だと思う。
■テクニカル的にも米ドル/円底打ちのサインが
テクニカルの視点では、既述のように7月安値をいったん下回ってから切り返し、「フォールス・ブレイクアウト」、つまり「ダマシ」のサインを点灯していたから無視できない。
このまま8月高値、つまり107円の大台に乗せれば、同サインの有効性が示され、一段と底打ちの可能性を示してくれるだろう。
さらに、3月高値を起点とした反落は、7月安値まで大型ジグザグ変動のパターンを形成していたから、本来、7月安値をもって底打ちを果たしてもおかしくなかったが、再度の下値トライで同ジグザグ型調整を否定してしまう恐れがあった。
(出所:TradingView)
結果的に、切り返しが確認されたことで同調整波の完成を示し、フォーメーションの視点では、「ダブル・ボトム」の可能性が暗示されるから、中期スパンにおける底打ちに寄与していると言える。
■英ポンド/円の値動きから円高の可能性を分析
とはいえ、米ドル/円がこのままブル(上昇)基調を回復し、早期に高値トライをしていくとも思わない。
現実路線として、やはり、再度、中段保ち合い、場合によっては104~105円といったサポートゾーンを再確認しないと底固めにならない可能性が大きい。
(出所:TradingView)
換言すれば、円高懸念が杞憂であっても、たちまち米ドル高につながるとは限らない。
その背景には、主要なクロス円の動向に左右されることが、もっとも大きな要素としてあるのだと思う。
前回のコラムでも指摘していたように、円が主要通貨のうち、もっとも弱い通貨になっている以上、クロス円における値動きは、外貨次第となる。そして、外貨の多くはすでに頭が重くなってきている以上、安易な円安局面へ転換できる環境でもなかろう。
【参考記事】
●円高は杞憂! クロス円の値動きは米ドル次第で、夏が過ぎても円は「蚊帳の外」(2020年9月25日、陳満咲杜)
英ポンド/円が好例であることは前回のコラムでも取り上げたから、ここでは再度詳しくは取り上げないが、目先の状況をもう1回点検しておきたい。
英ポンド/円は、9月後半から、だいぶ切り返してきたものの、9月1日(火)高値を起点とした全下落幅の半分程度の回復にすぎず、8月後半の元安値ゾーンがレジスタンスゾーンと化していることもあって、安易なブル基調への復帰が難しいと見る。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
となると、再度頭打ちが確認され、また、英ポンド安につられた円高の進行が想定されやすいだろう。
仮に9月安値の更新を回避できるとしても、もう1回下値がトライされ、サポートが確認できないうちは、受動的とはいえ、円高のリスクがくすぶる。
最近、英ポンド/円の値幅がもっとも大きかったから…
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