■米大統領選のコンセンサスが変わった理由
先週(10月5日~)の日経平均は、コロナショック後の高値を更新。
米株も強いですし、リスクオンなのでしょうか。
(出所:TradingView)
トランプ米大統領のコロナ感染で、バイデン候補の優勢が強まっています。
それとともに生じているのが、コンセンサスの変化。
JPモルガンあたりが「『トリプルブルー(大統領、上下院ともに民主党勝利)』なら株高」と言い始めて、コンセンサスとなりつつあります。
【参考記事】
●米大統領選、トリプルブルーなら増税を掲げるバイデン氏勝利でも株高・円安に!(10月8日、西原宏一)
●米大統領選で「増税」掲げるバイデン氏が当選しても、中長期では株価にポジティブか(10月8日、志摩力男)
バイデン大統領となり、議会も民主党が制すれば、政策が通りやすくなる。大規模な経済対策は打つし、増税はまだ先だから株価は上がる、という論調ですね。
追加経済対策はまさに今、与野党間の協議中ですが、選挙前に決まらなくても構わないというムードになっています。
トランプにせよバイデンにせよ、株高というコンセンサスには違和感も覚えます。
前回2016年選挙時は、「ヒラリーが勝って株価は多少上がる、万が一トランプなら株価は大暴落」とシンプルなコンセンサスでした。
今回もバイデンが圧倒的有利な情勢ですが、それでもトランプが勝つかもしれないと思っている人は多い。
どちらが勝ってもいいようにコンセンサスが形成されている感じがありますね。
■「日経平均1万円割れ」への備えも
日経225オプションでは、1万円割れのプットが買われています。
大統領選でのリスクオフに備えようというリスクヘッジのニーズがあるようですね。
でも、逆に多くの人が備えていると、往々にして下がりにくいのが相場です。
ファー(遠い価格)のプットを買っておこうという気持ちはわかります。
接戦となり、新大統領がすぐに決まらないと、市場が混乱し、急落するリスクがある。
そう考えると、掛け捨て保険の気分でファーのオプションを少し持っておこうかなと思います。
為替市場は小動きですね。日経平均が上昇しても米ドル/円はついてきません。
日経平均が2万3000円台後半ですから、米ドル/円は108円、110円にいてもおかしくないのですが、動きません。大統領選待ちなのでしょう。
紆余曲折がありながらも、中期は米ドル安だろうとは思うのですが。
(出所:TradingView)
■メイントレンドの米ドル安へと回帰する可能性が出てきた
中国人民元高も進んでいます。
興味深いのが、デジタル中国人民元との関係。深センでは、1人200元のデジタル中国人民元を配るそうです。
デジタル中国人民元を普及させるには中国人民元高のほうが都合はいいでしょうし、中国人民元高なら円高・米ドル安にもなりやすい。
(出所:TradingView)
この対談で何度も話しているように、米ドル安トレンドは9月1日(火)以降、調整局面に入っています。
【参考記事】
●33%急騰してきた豪ドル/米ドルが調整局面入りか! 金の反落に利下げの噂も…(9月24日、西原宏一)
●ユーロ/円は120円へ向けて下落か。FOMCでゼロ金利維持が示唆され、円高圧力高まる(9月17日、西原宏一)
●リスクオフのきっかけはユーロ/ドルの反落。9月1日からトレンドが変わった可能性…(9月10日、西原宏一)
●1.20ドルを背に、ユーロ/米ドルを戻り売り! ラガルドECB総裁はユーロ高を牽制するか?(9月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
米ドルと逆相関になりやすいゴールドも、8月に2000ドルの高値をつけて以降、調整局面です。
(出所:TradingView)
ゴールドの動きからも、米ドル安トレンドの調整をイメージしていたのですが、ユーロ/米ドルは1.15ドルどころか1.16ドルすら割れずに1.18ドル台まで戻っており、調整が完了した可能性があります。
1.20台ではECB(欧州中央銀行)関係者からの口先介入が入るでしょうから、一気に急騰するとは思いませんが、メイントレンドの米ドル安へと回帰する可能性が出てきました。
(出所:TradingView)
株価が3月に底打ち、景気も初夏に底打ちして良くなっていくと考えるなら、ここから大規模な財政政策を打った先に待っているのは、バブル相場。
S&P500からGAFAM(アルファベット(グーグル)、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)を除いて「S&P495」なんて造語が言われるくらいなので、GAFAM系はわかりませんが、株価が上がっていくフェーズにあるのかもしれません。
緊急事態だと言って民主党も共和党も、こぞって財政を出そうとしているわけですから、バブルとなっても不思議はありませんね。
■米ドル/円の「固定相場制」脱却は?
今週(10月12日~)の予定を見ると、大統領選の第2回テレビ討論会は中止に。
対面での実施を求めたトランプさんに対して、バイデンさんが反発したことが原因です。
もうひとつの注目は、ボリス・ジョンソン英首相が決めたEU(欧州連合)との交渉期限。10月15日(木)です。
【参考記事】
●英ポンドは、どう動く!? ブレグジット移行期間終了に向けた予想シナリオとは?(9月23日、志摩力男)
英ポンドは、ボラティリティが高まっており注目しているのですが、交渉の行方は不透明感しかない。
ロンドン勢とミーティングしても、ボリスへの好き嫌いが相場観にも反映されているようです。
今週の戦略は、どう考えますか?
トランプ・安倍コンビでは、1ドル=105円から115円で固定相場制のような動きとなっていました。
安倍さんが退陣し、トランプも代わるとなれば、ボラティリティが上がってくる可能性があります。
その意味でも、勝負は大統領選挙。無理をする場面ではありませんが、あえて言えば104円割れを探る展開もあるでしょうから、106円台は売ってもいいのでしょう。
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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