■PMIの好結果を受け、売りに傾いていた米ドルが急騰
米大統領選が終わり、新型コロナウイルスのワクチン実用化が近いことなどもあって、今月(11月)に入ってからはリスク選好の動きとなり、為替市場は米ドル安へ推移していました。
【参考記事】
●米大統領選はバイデン氏勝利が既成事実化。米ドル安継続、豪ドル/米ドルの押し目買い!(11月9日、西原宏一&大橋ひろこ)
●米大統領選とは? 制度のしくみや特徴、米ドルなどの為替相場や株価への影響を解説
米ドル/円は103.65円まで下がり、ユーロ/米ドルは1.1905ドルまで上がるなど、米ドル安が進んでいましたが、昨日(11月23日)発表された米製造業PMI(購買担当者景況感指数)が、市場予想中央値53.0のところ、結果は56.7。
さらに、サービス業PMIが、市場予想中央値55.0のところ、57.7と良い数字が出たことで、短期的に市場は米ドル売りに偏っていたこともあって、米ドルが急騰しました。
(出所:TradingView)
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ゴールド(=金)が、約4カ月間サポートされていた1850ドルを下抜けたことも、米ドル高に影響したと考えられます。
(出所:TradingView)
■やや米ドル安だが、主要通貨は横ばい状態
ただ、米大統領選の一般投票日だった11月4日(火)から見ると、やや米ドル安にはなっていますが、主要通貨の多くは横ばいとなっています。
【参考記事】
●じわじわとした推移で長期的に米ドル安へ。年末に向けたリスク選好の動きにも期待!(11月10日、バカラ村)
●米大統領選が終われば、リスク選好に期待できる! 今の米ドル高は短期的な動きに(9月29日、バカラ村)
●米ドル/円は戻り売り。11月から年末にかけて、リスク選好の米ドル安に期待!(9月15日、バカラ村)
米ドル/円は、104.50円を中心に往来しているだけでトレンドがなく、ユーロ/米ドルも、1.1800ドル付近を中心とした推移です。
(出所:TradingView)
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英ポンド/米ドルは、ブレグジット(英国のEU離脱)交渉の合意期待があるため、上昇はしていますが、勢いはない状態です。
【参考記事】
●注目はブレグジット交渉! FTAの協議合意なら英ポンド/米ドルは1.34ドル台到達か(10月13日、バカラ村)
●ブレグジット=英国のEU離脱とは?欧州連合離脱の経緯、離脱までの過程を解説
(出所:TradingView)
■NZドルは上昇も、全体的にはトレンドレス
NZドル/米ドルだけは、長期のレジスタンス0.68ドルを超えたことによるテクニカル的な面や、緩和期待の後退もあって上昇しています。
(出所:TradingView)
豪ドル/米ドルも上昇しましたが、直近2週間ほどは横ばいです。
(出所:TradingView)
株式市場は、米大統領選が終わったことによる不透明感の払しょくや、ワクチンの報道もあって堅調ですが、為替市場は米大統領選が終わっても、主要な通貨ペアは横ばいとなっています。
リスク選好での米ドル安に、若干、推移しているものの、金融政策はどこの国も同じような状況のため、トレンドが出ていない状態です。
■緊急融資プログラムの一部が年内で終了!?
市場の目先の注目材料としては、米国の閣僚人事・追加の経済対策などがあります。
先週(11月16日~)、ムニューシン米財務長官が、緊急融資プログラムの一部を終了すると発言したことも、気になる材料です。
FRB(米連邦準備制度理事会)に対し、緊急融資プログラムの未使用部分を政府に返却するよう求めており、それを景気対策へ回すとしています。
FRBと共同で立ち上げた緊急融資プログラムの一部を期限となる年末で終了させ、FRBに対して未使用の資金を返却するよう求めているムニューシン米財務長官。FRBはプログラムの延長を求めており、対立していると伝わっている (C)Bloomberg/Getty Images
未使用部分のため、影響はないようにも思いますが、これまでの経済対策の出口をもイメージすることができるため、リスク回避の材料にもなりえます。
■さらなる対策に期待できなければ、株式の上昇も止まるか
追加の経済対策の協議が再開されますが、まだ、折り合いはついていません。コロナ感染が拡大していることや、今後もロックダウン(=都市封鎖)が拡大していく可能性があることから、早期に合意することが求められます。
ただ、ワクチンが、早ければ12月11日(金)には使用できる可能性があります。
使用できたとしても、すぐに経済が元に戻ることはないですが、出口が見えてくることにはなります。
さらに、昨日(11月23日)のPMIが良かったこともあって、追加経済対策の必要性が低下しているため、金額が小規模になる可能性もあります。
実際に小規模となった場合や、協議に合意したようなときには、それ以上の経済対策は期待できないこともあり、これまでの株式市場の上昇も止まるように思います。
(出所:TradingView)
今はまだ、季節性から上昇しやすく、金融緩和もあって、大きく下がることはないと思いますが、これまでの楽観的な動きも終わるのではないかと思います。
【参考記事】
●じわじわとした推移で長期的に米ドル安へ。年末に向けたリスク選好の動きにも期待!(11月10日、バカラ村)
■長期的な米ドル安見通しには変化なし
昨日(11月23日)のPMIが良かったのは、一時的なのか、今後の経済指標にも注目しなければいけないかと思います。
悪い数字が続くようであれば、まだ、緩和策や財政出動が期待できますが、良い数字が続くようであれば、これまでの金融相場が終わる可能性が出てきて、実体よりも行き過ぎた動きが調整されることになります。
為替市場は、主要な通貨が横ばいのため、様子見でもいいと思いますが、長期的には米ドル安になるのではないかという考えのままです。
【参考記事】
●じわじわとした推移で長期的に米ドル安へ。年末に向けたリスク選好の動きにも期待!(11月10日、バカラ村)
●米ドル/円は戻り売り。11月から年末にかけて、リスク選好の米ドル安に期待!(9月15日、バカラ村)
(出所:TradingView)
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