■株安・米ドル高の進行が加速する兆し
株安・米ドル高の進行が続き、また、加速する兆しがくすぶっている。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の3月4日(木)の講演では、米長期金利の上昇に具体的な対策は示されず、最大雇用の達成を優先するため、一時的なインフレ上昇を容認する立場が示されたと思われる。
これを受け、米長期金利(米10年国債利回り)は、再度上昇。執筆中の現時点では1.571%前後に留まり、米国株の反落につながっている。
(出所:TradingView)
ナスダックスは続落して2021年年初来の上昇幅が帳消しとなり、さらに反落の余地が拡大してもおかしくない。要するに、リスクオフの流れが再度、見られているということだ。
(出所:TradingView)
為替市場への影響といえば、やはり米ドル高・円安の進行が、まず、挙げられる。
なにしろ、米ドル/円は108円の節目をトライし、8カ月ぶりの高値を達成しているから、「リスクオフの円高」ではなく、「リスクオフの円安」とさえ言える状態だ。
(出所:TradingView)
繰り返し指摘してきたように、主要外貨のうち、一番弱い円の立場が、一段と鮮明になっている。
もっとも、「リスクオン・オフ」云々、また、円の視点から市場のメイントレンドを解釈すべきではないと思う。
たびたび強調してきたように、円はあくまで受動的で、主体性を発揮できずにいるから、引き続き、蚊帳の外に置かれている状態だ。その意味では、「リスクオフの円安」よりも「リスクオフの米ドル高」のほうが、理屈に合う。
ゆえに、米ドル/円の急伸は、米ドル高の一環として位置づけられ、円の話は二の次。目先、米ドルのパフォーマンスのみに専念すればよい。
米ドル全体の切り返しは、新たな段階に入ったと思われ、少なくとも目先、一段と上値余地を拡大しやすい環境にあると推測される。
■米ドルは、雇用統計で下がっても「押し目買いの好機」
前回(2月26日)のコラムで指摘したように、ドルインデックスの日足から考えると、2021年2月安値は、2020年3月高値から引かれてきた元レジスタンスラインの延長線を維持し、目先、2月高値を更新しているから続伸しやすいと推測される。
【参考記事】
●ユーロの本格的な頭打ち警戒! 対ドルで1.2ドルの節目割れあれば下落幅拡大か!(2021年2月26日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
今晩(3月5日)の米雇用統計次第で、また波乱があってもおかしくないが、基本的な構造を維持できれば、仮に同統計がもたらした一時の反落があっても、むしろ押し目買いの好機と見る。
■ユーロ/米ドルは、早ければ今晩1.18ドル台へ下落?
米ドルの対極として、ユーロ安の進行がもっとも確実視される。前回(2月26日)のコラムで指摘したように、ユーロ/米ドルの1.18ドルの節目~1.18ドル台半ばへのトライは、早ければ本日(3月5日)、遅くとも来週(3月8日~)週明け以降には達成できると思う。
目先、ユーロの2月安値打診が見られているからこそ、テクニカル上の根拠を、より確実にしたい。
【参考記事】
●ユーロの本格的な頭打ち警戒! 対ドルで1.2ドルの節目割れあれば下落幅拡大か!(2021年2月26日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
テクニカル上の視点はさまざまであるが、筆者自身が一番大事しているのはプライスアクションの視点で、その中でも特に有効なのは「ダマシ」である。
「ダマシ」より正確なシグナルはない、と言えるほど実践に役に立つから、昨日(3月4日)のユーロ/米ドルの急落は、同通貨ペアの3月2日(火)のローソク足を「ダマシ」であると証明したと読み取り、しばらくユーロ売りのスタンスを維持していきたいというわけだ。
より詳細な説明は、昨日(3月4日)配信したレポートをもって行いたい。本文は、以下のとおり。
(出所:TradingView)
ユーロは高値圏での保ち合いを維持しながら、弱含みのサインを点灯している。昨日続伸できずにいたこともサインを強化、近々の安値再更新を警戒しておきたい。
もっとも、主要外貨のうち、ユーロは円に続き、弱い存在であった。ポンドも豪ドルも対ドルの高値更新を果たした先週、ユーロは2月25日にて一旦1.2243をトライしたものの、1月高値に遠く及ばず、また当時大きく反落して大引けしたことで、上値抵抗の厚さを示唆していた。
同日の罫線(緑矢印)、典型的な「スパイクハイ」のサインを点灯、その後の反落もあって、1月11日以来の一時の高値更新自体が「ダマシ」であったことを示した。ゆえに、3月2日一時1.2関門割れを自然の成り行きとみる。
3月2日の罫線自体が陽線であったため、本来「底割れ」回避のサインとして効いてくる可能性もあったが、昨日の反落をもってその可能性が大きく後退している。2月5日や同17日安値を連結した元支持ゾーンの延長線に抑えられた上、陰線で大引けしたことで3月2日陽線の意味合いを否定、従来のトレンドへ復帰する蓋然性を示唆。
従来のトレンドといえば、1月高値から全下落幅に対する切り返し、2月25日の罫線をもって完了されたことが示唆され、同日高値1.2243から再度反落していることが想定される。ゆえに、2日安値を再度割り込めば、同日の陽線自体が「ダマシ」的な存在となり、下落モメンタムの加速も想定される。この場合、再度の戻りをあまり期待できず、下値追いも一手か。
要するに、ユーロ/米ドルの底が堅いのであれば、3月2日(火)の陽線の意味合いは否定されないはずだが、同日安値の割り込みが見られた以上、同日のチャートが逆に「ダマシ」と化し、ユーロ/米ドルの反落トレンドが、一段と示されたわけだ。
(出所:TradingView)
今晩(3月5日)米雇用統計がどうであれ、ユーロ/米ドルの弱気構造を修正できないかと思う。
■市況次第でユーロ/米ドルは、1.17ドル割れも!?
実際、市況次第でターゲットを更新するべきか、とも考えている。
昨年(2020年)のコロナショック後の3月安値から、ユーロは大きく切り返してきた。1月高値まで大型「上昇ウェッジ」を形成したのであれば、2月のいったん安値トライで、すでに同フォーメーションの下放れを果たしたと思われ、目先の安値打診で、全上昇幅の38.2%の反落位置を射程圏に収めるのではないかと見る。
この場合、1.17ドルの節目割れまでの下値打診を、まず、念頭におきたいから、短期スパンでも下値余地が大きいと言える。
■円はユーロより弱いため、ユーロ/円の「底割れ」はない
ユーロ/米ドルの反落が一段と加速してくれば、ユーロ/円の頭打ち、また、反落も連想されやすいが、結論から申し上げると、ユーロ/円をはじめ、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の多くは高値圏での保ち合いを維持できる見通しで、メイン構造(強気構造)は変わらないと思う。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
なぜなら、昨日(3月5日)の米ドル/円の急伸からもわかるように、「リスクオフの円高」が見られなかった以上、円はユーロよりも弱い存在となり、ユーロ/米ドルの反落が続いても、ユーロ/円の強気構造は維持できるわけだ。
高値圏での保ち合いに伴うレンジ変動、それ自体の値幅が拡大する可能性は大きいものの、ユーロ/円の「底割れ」は見られないだろう。
ユーロ/円でさえ弱気変動になれないのなら、英ポンド/円や豪ドル/円はなおさらであろう。
なにしろ、主要外貨のうち、円とユーロは一番弱い存在なので、その他の外貨は、引き続き、優位性を得られると推測される。
このあたりの検証は、また次回。市況はいかに。
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