■原油急騰がトルコ経常赤字拡大の最大要因
トルコ中銀は、3月11日(木)に1月の経常収支を発表しました。1月は18.7億ドルの経常赤字で、市場コンセンサスである15.5億ドルを上回る赤字額でした。
トルコの12カ月累積経常赤字も、366億ドルに拡大しています。
経常赤字が拡大した要因は、原油価格の上昇です。エネルギーと金(ゴールド)を除いたベースだと、1月は12億ドルの経常黒字に浮上します。米国の大統領選挙が終わった直後から原油価格が急騰し、経常赤字拡大の最大要因となっています。
(出所:IG証券)
もうひとつの重要なマクロ指標は、3月10日(水)に発表された1月の雇用統計でした。1月は失業率が12.2%に低下していて、雇用状況の改善が続いています。
一方で、若い世代における失業率は24.7%と引き続き高く、農業を除くベースでの失業率も14.2%でした。経済の再開に伴って雇用の改善は今後も継続すると思われますが、若者の失業率をどう減らすかが大きな課題となっています。
■ロックダウン解除で新型コロナ感染者数が再び増加
トルコ政府は、一部の都市でロックダウン(都市封鎖)の解除もしくは緩和に動きましたが、これを受け、2月に1万人を下回っていたトルコの1日の新規感染者の数は足元で再び増加に転じ、3月13日(土)に1万5000人を超えました。
【参考記事】
●コモディティ価格上昇がトルコ経済の重しに。ワクチン相場は息切れ。リラ上昇も一服か(2月24日、エミン・ユルマズ)
(出所:WorldometerのデータよりザイFX!編集部にて作成)
ロックダウンを早く解除したいトルコ政府は、ワクチン接種を急速に進めていて、現時点で最初の接種を受けた人の数は780万人、2回目の接種を受けた人の数は313万人です。トルコの人口は、ざっくり8000万人なので約10%は、すでにワクチン接種済みということになります。
■トルコ中銀会合とFOMCを控え、投資家は動きにくい
今週(3月16日~)のトルコリラですが、対米ドル・対円ともに安定した動きになっています。
米ドル/トルコリラは7.50リラ前後まで下げ、トルコリラ/円は14.50円を越えましたが、3月18日(木)にはトルコ中銀の政策会合に加えて、FOMC(米連邦公開市場委員会)もあるので、トルコリラの投資家が動きにくい環境です。
【参考記事】
●トルコCPI上昇と世界的なインフレ期待でリラ下落。3月政策会合での利上げは必須!(3月10日、エミン・ユルマズ)
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
■トルコ中銀、住宅価格上昇局面での利上げは考えにくい
トルコ中銀は直近のインフレ上昇を受け、利上げをするとの予想が少数ながらもありますが、個人的には据え置きの可能性が高いと考えます。
トルコ中銀が発表したデータによると、トルコの住宅価格は1月に前年比で30.4%上昇しました。インフレを除いた実質ベースでは、13.5%の上昇率になります。
特にイスタンブール、アンカラ、イズミルというトルコ3大都市における住宅価格の上昇が目立っています。エルドアン大統領の支持・支援基盤は住宅・不動産セクターが大部分を占めているので、住宅価格が勢いよく上げ始めているこのタイミングでの利上げは考えにくいです。
【参考記事】
●トルコ経済のジレンマ。利上げ反対だけどトルコリラ安も望まないエルドアン大統領(1月20日、エミン・ユルマズ)
エルドアン大統領の支持・支援基盤は住宅・不動産セクターが大部分を占めている。そのため、住宅価格が勢いよく上昇しているタイミングでの利上げは考えにくいというのがエミンさんの見方だ (C)Anadolu Agency/Getty Images
一方で、米長期金利の動きによっては、たとえ今回やらないとしても、年内に150bp~250bpの利上げの可能性は十分あると考えます。
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