■アルケゴスを運営するビル・フアン氏とは?
みなさん、こんにちは。
今週(3月29日~)は、ヘッジファンドのアルケゴス・キャピタル・マネジメントへのマージンコール関連の話題がマーケットをにぎわしていたので、この報道を振り返ってみます。
まず、ビル・フアン氏という人物は、ヘッジファンド界の伝説的存在である、ジュリアン・ロバートソン氏のタイガー・マネジメントから分離独立したタイガー・アジア・マネジメントを運営していた人物です。
【参考記事】
●ノーベル賞を信じるな!? 巨大ヘッジファンドLTCM破綻の余波で米ドル/円が22円暴落!(2018年10月8日公開)
そして、アルケゴス・キャピタル・マネジメントは、彼が運用するファンドになります。
■「クジラ」の手数料に魅せられた、ゴールドマン・サックス
ビル・フアン氏は、まず、個人資産200億円を元に運用をスタートさせました。
2018年後半まで、ゴールドマン・サックスは、元ヘッジファンドマネジャーで、インサイダー取引で有罪を認めた経歴のあるビル・フアン氏との取引は危険だとして断っていたようです。
しかし、そうした危惧は長続きしませんでした。
ウォール街の一流投資銀行であるゴールドマン・サックスですが、ビル・フアン氏のような大金を賭ける、いわゆる「クジラ」が同業者に支払う年間数千万ドルの手数料に魅せられ、同氏の名前を取引注意人物リストから削除し、主要顧客とすることを認めました。
そして、モルガン・スタンレーやクレディ・スイスなどと同様、ゴールドマン・サックスもビル・フアン氏に数十億ドルの与信を行い、中国の百度(バイドゥ)や米メディア企業のバイアコムCBSなどの株式への、大きくレバレッジを効かせた賭けを可能にします。
結果、今年(2021年)はじめのアルケゴス・キャピタル・マネジメントの資金は5000億円規模だったようですが、それを3倍にし、個人資産は1.5兆円規模だったようです。
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■ビル・フアン氏は、史上最大級のマージンコールの渦中に
そして、彼がポジションを取っていたのは、中国株のロング、S&P500のショートと言われています。
しかし、現在、ビル・フアン氏は、史上最大級のマージンコールの渦中にあり、ゴールドマン・サックスでは2兆円規模、モルガン・スタンレーでは1.3兆円規模のブロックトレード(※)が執行された模様。
(※編集部注:「ブロックトレード」とは、証券会社を通じて、同一銘柄の大口の注文を相対で一度に売買する取引のこと)
他には、野村ホールディングスやクレディ・スイスが名を連ねます。
当初、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレー、野村ホールディングス、クレディ・スイスは、ブロックトレードの相手方を静かに探して、マーケットにインパクトを与えないようにしようと話し合っていたとのこと。
しかし、モルガン・スタンレーとクレディ・スイスが秘密裏に少しずつ売り始めたのが判明。これを受けてゴールドマン・サックスは急遽、残っていたポジションをすべて売却。モルガン・スタンレーもそれに続いて、ポジションを精算しました。
残されているのは、クレディ・スイスと、まったく売っていないと言われている野村ホールディングだけという状況です。
■株安でも円高へ反応しないのが「ゲームチェンジ」と見る要因
こうしたリスクオフの環境下、一時不安定になるも、米ドル/円は反落せず、安値は109.37円止まり。
(出所:IG証券)
先週(3月22日~)のトルコリラショックでも証明しましたが、今回のアルケゴスショックも同様で、今年(2021年)の米ドル/円は、株安でも円高への反応は限定的です。
【参考記事】
●中銀総裁更迭でトルコリラ/円が大暴落!ドル/円はいずれ120円との見通し変わらず(3月22日、西原宏一&大橋ひろこ)
●トルコリラが15%超の暴落! なぜ、トルコ中銀総裁は突然更迭された?(3月23日、エミン・ユルマズ)
(出所:IG証券)
これが、私が米ドル/円は「ゲームチェンジ」と見ている最大の要因です。
株安でも円高にならなくなった米ドル/円は、反落する大きなひとつのファクターが消滅。一方、米金利が上昇する局面では、米ドル/円は即座に反応して値を上げていきます。
加えて、菅政権からは、円高抑制コメントとともとれる発言が相次ぐため、急速に円高になるリスクも減っています。
結果、今年(2021年)に入ってからの米ドル/円は、ダウンサイドリスクが限定的となり、ロングポジションを極めてキープしやすくなっています。
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■IMMポジションは5.3万枚の円ショートとさらに増加。
一方、3月29日(月)に公開した今週の作戦会議でもピックアップしていますが、先週(3月22日~)土曜日に発表されたIMM(国際通貨先物市場)のポジションでは、5.3万枚の円ショートとなっていて、さらに増えています。
【参考記事】
●米ドル/円の押し目買いを継続! 株が落ちても円が買われない傾向が鮮明に(3月29日、西原宏一&大橋ひろこ)
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
IMMのポジションは、経験豊富な参加者の動向を反映しているとも言え、マーケットのコンセンサスとは違い、この変化を米ドル/円にとってポジティブではないか?とするスタンスに変わりはありません。
彼らが一気に円売りを加速させたこともあり、米ドル/円は110円台を回復していると考えています。
(出所:IG証券)
■米ドル/円は、短期112円、中期120円のターゲットは不変
そして、今週(3月28日~)驚かされたのが、日立製作所による1兆円規模の大型買収。
日立、米ITグローバルロジックの買収発表 1兆円規模
日立製作所は31日、米IT(情報技術)企業のグローバルロジックを買収すると正式に発表した。買収額は総額で96億ドル(約1兆500億円)で、電機業界では過去最大級となる。
出所:日経新聞
詳細は、まだまったくわかりませんが、このニュース自体は円安ファクターです。
4月から外債投資を増やす本邦勢も多いと見られており、新しい期に入っても米ドル/円の底堅さは変わらず。
短期では112円まで、中期は120円へと上昇トレンドが変わらない米ドル/円の動向に注目です。
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