犠牲祭で、トルコは9連休中。リラの動きも鈍い
今週(7月19日~)は、イスラム教の二大祭りのひとつである犠牲祭(クルバン・バイラム)が月曜日から始まっていますので、トルコは9連休中で市場もお休みです。
【参考記事】
●FX会社が警戒するトルコの「犠牲祭」とは? 日本発のトルコリラショック再開はある!?(2018年8月16日公開)
上の写真はトルコと同じイスラム教国、パキスタン・イスラム共和国(通称・パキスタン)での犠牲祭の様子。このように家畜を吊るして神に祈りを捧げるという。 (C)Anadolu Agency/Getty Images
トルコリラの動きも鈍いですが、いくつか重要なマクロ指標が発表されていますのでそれらを検証したいと思います。
トルコの景気回復期待が後退…。その最大要因とは?
まず、輸出向け製造業の物価指数は、6月に前年同月比でプラス43.72%となり、昨年(2020年)の12月比でプラス20.51%になりました。これは、今起きている原材料高によるコストプッシュインフレをはっきり表している象徴的なデータです。
今週(7月19日~)発表されたもうひとつ重要なマクロ指標は消費者信頼感指数です。
TUIK(トルコ統計局)の発表によると、7月の消費者信頼感指数は前月比で2.7%減少し、79.5となりました。
(出所:TUIK)
景況感指数も前月比で3.3%減少し、83.2となっています。経済正常化による景気回復期待が後退したことが明らかです。
その最大の原因は変異株に対する懸念ではなく、政治的な不透明感です。象徴的なのは、トルコへのFDI(海外直接投資)がトルコの歴史で初めてマイナスに陥ったことです。つまり、エルドアン政権に痺れを切らした外資は、トルコから撤退しているということです。
通貨安(トルコリラ安)によるインフレの上昇と、パンデミックが国民生活を直撃しているので、エルドアン政権は国内でも支持率を急速に失っています。政権交代の時期と、次にどんな政権が生まれるのかについて現時点で予想は難しいですが、次はEU(欧州連合)への加盟を掲げる欧米寄りの政権が生まれる可能性が高いと考えます。
それは、トルコリラやイスタンブール株式市場にとって大いに追い風になるでしょう。
原油相場がレンジ入りすれば、リラは秋まで底堅いか
今週(7月19日~)のトルコリラは堅調に推移していて、米ドル/トルコリラは、8.50リラ~8.60リラ、トルコリラ/円は12.70円~12.90円の狭いレンジで推移しています。
今週(7月19日~)に入ってから、世界同時株安で投資家のリスクセンチメントが悪化しましたが、新興国通貨が対米ドルで大きく下がることはありませんでした。
米10年債利回りの下げが、むしろトルコリラに追い風となり、米ドル/トルコリラでは、米ドル安・トルコリラ高が進みました。
(出所:TradingView)
また、原油価格が下げたことも、トルコリラにとってプラス材料となりました。一時、77ドルまで上昇していたブレント原油価格は、現在70ドルを割っています。原油価格が大きく下げると思いませんが、新型コロナウイルスの変異株への懸念から、しばらく65ドルから75ドルのレンジで動く可能性が高いと考えます。これにあわせて、トルコリラも秋まで底堅く推移すると考えます。
(出所:TradingView)
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