ちなみにユーロの金利とユーロ/ドル、ユーロ/円相場との関係も岡崎さんは調べたということだが、これについては特に目立った“法則”が見つからなかったという。
■信用リスク拡大時には経常収支赤字国通貨が弱くなる
最後に岡崎さんは単行本には収録しきれなかった話として、「信用リスクの循環」について教えてくれた。
「信用リスクとは国債の利回りと社債の利回りの金利差のこと。この金利差も循環するんですが、これが今はずっと広がっていく方向にあるんです」
国債と社債を比較すると、国債は比較的安全で、社債はそれよりリスクが高いため、国債より社債の方が利回りが高くなっている。
投資家がリスクをとれる時は、破綻の恐れが多少あったとしても高利回りの社債をチャレンジして買ってみようという動きになる。すると、社債の利回りは下がり、信用リスクは縮小するわけである。
一方、投資家がリスクをとりにくい、現在のような危機的状況になると、会社が破綻してしまう恐れが高くなるので社債を買うのをやめて、より安全な国債を買っておこうという動きとなり、信用リスクは拡大していくのである。
つまり、投資家のリスクをとる、とらないという姿勢が信用リスクに数字として表れてくると言えるのだ。
「今回、当面の金融危機からは抜け出しつつありますが、実は社債の利回りはまだ低下しておらず、信用リスクは拡大したままなんです。
こういう時は経常収支赤字国の通貨は弱くなる傾向があります。たとえば、南アフリカ、オーストラリア、アメリカ、そして最近では韓国といった国が経常収支赤字です」
国の経常収支が赤字ということは、企業でいえば、営業キャッシュフローが赤字ということ。つまり、貿易などの“本業”が赤字ということだ。それでも、高金利であることなどを理由にその国に投資する資金が集まればその通貨は下落しない。
けれど、今のように信用リスクが拡大している状況、つまり、投資家がリスクをとらない状況になると、「赤字の国なんか危なくて投資できるか!」ということになり、投資資金が入ってこなくなる。
こうしたことから、信用リスクが拡大している状況だと、経常収支赤字国の通貨は弱くなる傾向があるのだ。
■豪ドルや南アフリカランドが上がるのはいつか?
「金融商品をリスクの低い方から順番に並べてみましょう。一番リスクが低いのは国債の期間が短いものです。それから国債の期間がより長いものが並び、その次はモーゲージ債(不動産担保証券)、その次が社債となって、最後が株や高金利通貨になります。
危機が徐々に去っていくと、それらが順番に買われていく流れとなるのですが、今は国債の短いものから長いものまでは買われた段階です。ですが、社債はまだ買われていません。社債が買われれば、信用リスクが縮小していく循環に入ります。
そうなれば、やがて株の全面高となっていき、その時には豪ドルとか南アフリカランドなど経常収支赤字で高金利の国の通貨も買われる流れになっていくと思いますよ」
(ザイFX!編集部・井口稔)

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