トルコの1月失業率は若干悪化。問題は今年の観光シーズンが期待できないこと…
TUIK(トルコ統計局)の発表によると、トルコの1月の失業率は11.40%となりました。前月比で若干悪化した形ですが、予想範囲内の結果です。問題は雇用の改善が期待される今年(2022年)の観光シーズンはあまり期待できないことです。
(出所:TUIK)
ウクライナとロシアの戦争が長引く可能性が高まって、トルコのような周辺国だけではなく、世界経済全体に悪影響を及ぼす恐れがあります。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】ロシアのウクライナ侵攻で、トルコの米国やEUとの関係が改善し、トルコ経済が安定する可能性も(3月2日、エミン・ユルマズ)
●【トルコリラ見通し】ウクライナ危機の長期化は、トルコ経済にも悪影響。平和的かつ短期的な解決が、もっとも望ましいシナリオ(2月16日、エミン・ユルマズ)
トルコ経常収支は悪化。エネルギー価格上昇による輸入コスト増加が要因
トルコにとってもうひとつの懸念は足元の経常収支の悪化です。トルコ中銀の発表によると1月の経常収支は71.1億ドルの赤字で、前年同月比で経常赤字が53.40億ドル増加していることがわかりました。年間ベースでは202.20億ドルの経常赤字となります。これは、2017年12月以来もっとも大きい経常赤字額です。
近年の経常収支は改善の傾向を見せていましたが、やはりエネルギー価格の上昇によって輸入コストが大きく増え、経常赤字を拡大させています。
(出所:TradingView)
パンデミック以降、大活躍している製造業の勢いも足元で鈍化していて、1月の鉱工業生産指数は前月比2.4%の減少となっています。年間ベースでは7.6%増で悪くないですが、足元の鈍化は懸念される点です。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコの実質金利はマイナス40%! トルコがウクライナとロシアの仲介役へ、3月10日の会談に注目!(3月9日、エミン・ユルマズ)
トルコ中銀に4.00%規模の利上げ期待。想定外のウクライナ情勢で、エルドアン大統領は利上げ容認の可能性も
今週(3月14日~)に入ってから原油価格が大きく下落したことを受け、トルコリラの下落も止まりました。
(出所:TradingView)
一方で、まだトルコリラの上昇幅も小さく、結局、米ドル/トルコリラは14.50リラ前後、トルコリラ/円は8.00円前後という先週(3月7日~)のレンジと変わっていません。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
3月17日(木)にトルコ中銀の金融政策決定会合が行われます。現地メディアの記事を読むと、今回、4.00%(400bp)規模の利上げが行われるとの期待が高まっているようです。その根拠は、エルドアン大統領が昨年(2021年)12月に打ち出した為替差損保証付き預金制度(※)の開始から、まもなく3カ月になるからです。
(※編集部注:「為替差損保証付き預金制度」とは、トルコリラ建て預金の価値をトルコ政府が保証するというもの。トルコリラで国内銀行に預金している間にトルコリラが対米ドルで下落し、預金した時の為替レートとの差額が金利収入を超えた場合、その差額を政府から支払う)
【参考記事】
●【2022年のトルコリラ見通し】エルドアン大統領の新政策は、大失敗に終わる可能性。政権交代がなければ、本格的な上昇は難しい(2021年12月22日、エミン・ユルマズ)
最短預金期間は3カ月なので、預金者に支払いをしないといけません。米ドル/トルコリラは3カ月前と比べて大きく上昇(米ドル高・トルコリラ安)しているので、預金者に支払う金額も大きくなっています。
(出所:TradingView)
しかし、支払い前に政策金利を引き上げてトルコリラを上昇させることができれば、預金者への支払いも少なくて済みます。
もちろん、エルドアン大統領のことなので、このような合理的なシナリオが実現するかどうか確信は持てません。しかし、エルドアン大統領もウクライナとロシアの戦争は想定外でしたので、「利上げに踏み切るのは戦争のせいだから仕方ない」といって利上げを容認する可能性があります。
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