米ドル高の継続を支持する材料が多い中、米ドル全体が反落する
という異変。米ドルの行方は楽観視できない
米ドルの頭の重さを検証する材料が、また浮上してきた。それはほかならぬ、米CPI(消費者物価指数)通過後の市況だ。米CPIが米インフレの高止まりを示唆していたにもかかわらず、米ドル全体が買われていないから、専門家の多くが解釈に苦しむところではないかと思う。

(出所:TradingView)
もっとも、1月米CPIは想定より高く、2025年年内米利下げなしとの観測が高まった。さらに、一部過激な予測では、FRB(米連邦準備制度理事会)が再度利上げをするのではないか、との話もあった。しかし、米ドルは買われるところか、むしろ売られてきた。このような「異変」を見逃せない。
いろいろな解釈がある中、筆者はトランプ政権の政策が米ドルの信頼を損なったのが大きな原因ではないかと思う。またFRBとの軋轢を公にしたところも大きなマイナスだと思うが、ファンダメンタルズをいちいち説明していたらきりがないので、マーケットの反応に集中しておきたい。
要するに、材料面では米ドル高の継続を支持するものが多い中、米ドル全体が反落してきたので、米ドル全体の弱さが一層目立つ。理由はどうであれ、このような「異変」が続くなら、米ドルの行方を楽観視できない。
米ドル高は終焉。ユーロ、英ポンドなどの諸外貨が対米ドルで買い戻される段階に
1月CPIのリリースを受けて、米10年物国債利回り(米長期金利)が2月12日(水)にていったん4.660%まで反発したものの、昨日(2月13日)は反落。12日(水)の上昇幅をほぼ帳消しにした。

(出所:TradingView)
米長期金利の頭の重さがこのまま米ドルの頭の重さにつながる、という話ならわかりやすいが、そう単純ではなかったようだ。
なにしろ、米ドルの対極として位置付けられるユーロ/米ドルは2月11日(火)から続伸したが、12日(水)の米長期金利の急伸によって、本来は反落してくるのが正常な値動きだった。12日(水)のユーロ/米ドルは陽線で大引けしたから、昨日(2月13日)米長期金利の反落を受けて一段と続伸したのもいたって自然な成り行きであった。

(出所:TradingView)
要するに、米長期金利の反発があっても米ドルが買われなかったから、同金利の反落があれば、米ドルが売られ、諸外貨が買われるのは当然の結果である。米ドル買いが、なぜ続かなかったかに関する解釈は評論家にお任せして、ここではごく自然な結論を出すとしよう。それは、米ドル高の終焉のほかあるまい。
換言すれば、ユーロ、英ポンドなどの主要な諸外貨が、対米ドルでは売られすぎの状況にあったので、これ以上さらに売られていくのが難しくなったから、買い戻される段階にあるということだ。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
ファンダメンタルズ上の解釈はどうであれ、結局、値動きの後を追う形で修正してくるから、米ドルの高値を追わないことだけ覚えておけばよい。
米ドル/円は150円割れを覚悟! ユーロ/円は154~155円台を再打診か
主要通貨ペアの中で、2月12日(水)の米CPIに大きく反応したのが米ドル/円であった。しかし、結局155円の大台を回復できず、また反落してきたので、1月高値の158.89円を起点とした反落波の継続を有力視、このままではやはり、まず150円割れを覚悟しておきたい。

(出所:TradingView)
ゆえに、ユーロ/円など主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)のほうが2月10日(月)から大きく反発し、一見すればV字型回復を果たしているように見えるが、米ドル/円と同様、上値が重い構造を形成しつつあるだろう。
去年(2024年)夏の「円売りバブル」の崩壊以来、154円台前半から166円台の半ばまで切り返しがあり、またその後、大きなレンジを形成、横這いの市況を示しているが、大まかに「ソーサートップ」のフォーメーションを形成し、頭が重い構造の再確認となっている。

(出所:TradingView)
だからこそ、米ドル/円しだいで速度が緩やかになるかもしれないが、基本的にはメインサポートゾーンの154~155円台の再打診につながる見通しだ。
前述のように、ユーロ/米ドルは底打ちを果たした可能性が大きいから、ユーロ/円の下値打診があるならば、それはほかならぬ、米ドル/円の一段反落というシナリオが推測されるから、これからの「円高傾向」に引き続き注意しておきたい。
ちなみに、日本の長期金利も急騰してきており、日米金利差云々による米ドル高の見通しも崩れてきた。場合によっては、市場の想定よりも日銀の利上げが押し進められる可能性もあるから、油断できない。市況はいかに。
【※初心者にうれしい「FXを少額から始められるFX口座」の情報はこちら!】
⇒FXを少額から始められる初心者におすすめの口座を紹介! 最低取引単位が「1通貨」で、100円で自動売買ができるFX口座も!
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)