同じように、利上げ観測に支えられたユーロ高も、利上げ実行でそろそろ一服してもおかしくはない。こちらは米ドルとは正反対で、ユーロについてのプラス材料をかなり織り込んでいるからだ。
このようなタイミングで、米ドルサイドに良い材料が出なくても、外貨サイドの何らかの材料でトレンドの修正が起こり得ると思っている。
■ユーロに対して「過剰楽観」の現状は注意すべきだ
ユーロに関しては、利上げという材料自体がプラス材料からマイナス材料に変化する可能性さえある。
3月14日のコラムにも書いたが、短期スパンでは、利上げはユーロ高をもたらすが、中長期的スパンでは、ユーロを押し下げる恐れがある。しかも、利上げ周期が長ければ長いほど、打撃を受けるだろう(「米ドルは中期スパンで3つの材料によって上昇する! ユーロ利上げでドル高に!?」を参照)。
EU(欧州連合)内部に経済格差があることは、みなさんもご存知のとおりだ。ドイツ、フランス、オランダなどの「勝ち組」と、ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインのような「PIIGS」と言われる「負け組」では、その差は歴然である。
インフレ傾向に対抗するために利上げに踏み切るECBの決定は明らかに「勝ち組」寄りで、「負け組」を見捨てる行為だと言っても過言ではない。
今週になってポルトガルがEUに支援要請を正式に表明したが、スペインに関するウワサも絶えない現状では、利上げが「PIIGS」の資金借り入れコストを上昇させ、根本的な解決策が見つけられないまま、混乱にさらに拍車をかけることは間違いない。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
皮肉なのは、ユーロのソブリンリスク(国家に対する信用リスク)が昨年6月頃に比べて拡大しているのに、マーケットのユーロに対する見方が、当時の「過剰悲観」から、最近は「過剰楽観」になっていることだ。だからこそ、警戒すべきだ。
それでも円の場合は、震災後のG7による協調介入と原発事故の処理という特殊事情があったから、円高傾向が劇的に修正された。
だが、ユーロなどの他の通貨に関しては、サプライズ的な材料がなければ、利上げによるマイナス効果がジワジワ出てくるとも予想される。そのため、米ドル全体の底固めはなお時間を要するだろう。
■米予算案の攻防は、米ドルにはあまり影響がない
ところで、米国の予算案を巡る与野党の攻防が激しくなり、今週中に合意できない場合、米国の政府部門が一時的に閉鎖されるというニュースが流れている。
これは明らかに米ドルにとってのマイナス材料ではあるが、激しい「米ドル売り」につながるものではないと思っている。
その理由は2つある。
まず、米国の政治体制の仕組みを理解している方ならば、このような予算案に関する攻防が政治パフォーマンスに過ぎないということがわかるはずだ。
交渉述に長けた米国の「政客」はギリギリまで戦うだろうが、最後は、何らかの合意を行うだろう。政府部門の閉鎖は誰も望んでいないし、そのようになった場合は議員の利益が損なわれる。
また、米国には政府部門の一時閉鎖の先例がある。最近では1995年と1996年で、米国政府部門が2回ほど閉鎖され、1995年末から1996年初に行われた2回目は20日間と、比較的長い期間にわたって閉鎖された。
だが、米ドルは、1回目の閉鎖ではユーロや円に対してほとんど動意薄で、2回目では対円で上昇した程度だ。
したがって、もし政府部門の一時閉鎖があっても、米ドルにはあまり影響はないだろう。
■米ドル/円は歴史的な転換へ
最後に、サイクル論の視点で見ると、米ドルは円に対して一足早く底を打ち、16~17年の周期での歴史的な転換を果たすだろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足)
そして、米ドル全体は遅れを取りながらも、今年から来年にかけて歴史的なリバーサル・ポイントを探ることになると見ている。
ゆえに、筆者は今度のセミナータイトルを「乾坤一擲~円安時代の幕開け」としているし、自身の資産運用も円資産からの脱出に布石している。
このあたりの話は、また次回。
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