■金利差の面におけるユーロ優位はいまだ変化なし!
ドルインデックスは5月5日(木)に急反発した。72.80レベルの安値から74.22まで一時は上昇し、年初来最大の上昇幅を見せた。
それに呼応するかのように、同日のユーロ/米ドルはわずか1日の間に400pips近い下落幅を記録しており、先週のコラムで指摘した「ドル安一服で、対ユーロなどでは急反騰も」の兆しを見せた(「ヘリコプター・ベンの会見に、ニュースなし。ドル安一服で、対ユーロなどでは急反騰も」を参照)。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
先週のコラムにも書いたが、そもそも「米ドル安トレンド」は限界に近づいている。自律反発しやすい時期に入ったので、米ドルのリバウンドは自然な成り行きであった(「ヘリコプター・ベンの会見に、ニュースなし。ドル安一服で、対ユーロなどでは急反騰も」を参照)。
この意味では、トリシェECB(欧州中央銀行)総裁の5月5日(木)の会見における発言が、想定された「タカ派」でなかったことは、ユーロ反落の蓋然性を後追いした形で証明した「材料」にすぎないだろう。
ちなみに、ECBは年内の利上げ継続といったスタンスについては、堅持している。
想定される範囲においては、金利差の面におけるユーロ優位はいまだ変化なしと言える。
■QE2終了を前に、投機筋がいったん手仕舞いに動いた
一方、今回の米ドルの反発に、受動的な側面が大きいことは見逃せない。それは他ならぬ、銀(シルバー)をはじめとする商品相場の急落が米ドルを押し上げていることである。
商品価格と米ドルの逆相関性に基づく相場本来の変動が、相場全体を主導する要素となっているのである。
特に、銀の下落は歴史的な暴落であり、5月5日(木)の安値で計算すると、4月25日(月)の高値から30%超も下げている。
5月5日(木)の銀の下げ幅は、じつに30年ぶりの大きなものであった。銀の下落だけでなく、金(ゴールド)や原油、銅などの反落も激しく、商品相場は「バブル崩壊」の様相を見せ始めている。
一般論として、商品価格は主に米ドル建てで計算されるため、往々にして、商品価格の上昇は米ドル安と相まった形になりやすい。
また、米ドル安ゆえに、金、銀などの商品に資金が流入しやすくなり、ここまでは、米ドル安のリスクを回避しようとする動きが盛んであった。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
リーマン・ショック以降、貴金属をはじめ、さまざまな商品価格の上昇が加速したのは、間違いなく米国の量的緩和策のためである。
「超過供与」された米ドルの氾濫そのものが商品価格を押し上げていた側面は強い。
したがって、今のタイミングで銀の暴落が発生するのも納得できる。「QE2(追加的量的緩和政策)」の終了が目前に迫り、投機筋がいったん手仕舞いに動き、利益確定しようとしただけで、連鎖的な売りを呼んでいるに違いない。
消息筋によると、米国の著名投資家であるジョージ・ソロス氏のファンドも金や銀のロングポジション(買い持ち)を手仕舞いして、市場から手を引いたとのことだ。
■商品市況の急落は「バブル崩壊」なのか
違う視点から見れば、「過剰供与」された米ドルの氾濫なしでは、金や銀などの商品高は続かないと、ヘッジファンドは読んでいる。
だから、商品市況の上昇自体は、米ドル安に依存する「バブル」なのかもしれない。
したがって、銀の暴落が続く中で、ユーロのロング筋が急いでポジションを閉じているのは当然である。
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