■市場の関心は米国から、危機再燃の欧州へ
先週のコラムでは、アメリカの金融政策についてお話しをしました(「米国はスタグフレーションで緩和は難しい。日本は『財務相が誰になるか?』が重要!」を参照)。
ここまでを見ると、市場もだいたい同じような見方をしているようです。少しの間、アメリカからは目が遠のくかもしれません。
その一方で、欧州で財政危機問題が再燃しています。
私の以前からの主張は次の2つでした。
「ギリシャをはじめとする欧州諸国の財政危機問題に対しての対応はあくまでも応急措置であり、本質的な解決とはなっていない。そのため、いずれまた、この問題に対する懸念が再燃するだろう」
「財政再建のための緊縮財政を実施していくと景気が悪化し、かえって、さらなる財政の悪化を招きかねない」
今まさに、これらのことが現実化しているのだと思います。
ギリシャでは、景気下振れと財政赤字拡大が同時進行し、EU(欧州連合)やIMF(国際通貨基金)からの支援の前提であった赤字削減の見通しが立たなくなってしまい、EUやIMFなどとの協議を急きょ中断してしまいました。
つまり、困り果ててしまったということでしょう。
■ギリシャ問題は「先送り」と「再燃」がこの先も繰り返される
そのギリシャに対するEU諸国からの第2弾の融資に関しては、各国からさまざまな意見が出ています。
まず、フィンランドは「融資をするときは担保をよこせ」と言っています。
ドイツのショイブレ財務相も「ギリシャが支援パッケージに盛り込まれた財政引き締めの目標を達成するまでは、ギリシャ向け融資の次回分は実行されない」と発言しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
実際には、このままギリシャを見捨てるわけにはいかないと思いますので、何らかの妥協案が出てくるでしょう。そうすると、またしばらく相場は落ち着くことになると思います。
しかし、それとて、また問題の先送りですので、またいずれ、問題は再燃すると思います。この繰り返しです。
■米ドル/円は米ドル安が一服し、少し戻しそうだが…
さて、このコラムではずっと、英ポンド/円とユーロ/円の戻り売り戦略(ショート戦略)を推奨してきました。
チャートを確認してみると、両方ともきれいな下げトレンドを作ってきたことがわかります。とりあえず英ポンド/円とユーロ/円の戻り売り戦略は正しかったということだと思います。基本戦略はそのまま維持しておきます。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
米ドル/円に関しては、アメリカの金融政策は当面様子見ということになりそうですので、米ドル安が一服し、むしろ少し戻るかもしれません。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
ただ、少し戻ったとしても、それは一時的な現象だと思います。
■スイスが大量のユーロ買い・フラン売り介入を実施した
最後に、スイスフランのお話しも、少ししておきましょう。
金融不安が起きたり、経済が停滞した状態では、経常黒字国で対外純資産国の通貨が買われるという理論を以前ご紹介しました。その代表的な通貨が円とスイスフランです(「世界経済が低迷すると、なぜ日本円は買われ、豪ドルは売られるのか?」を参照)。
特に、ユーロ圏に隣接するスイスへの欧州からの資金流入は激しく、スイスフランは極端に上昇してきました。
これを受けて、スイス国立銀行(SNB)は9月6日(火)に、「大幅で持続的なフラン安を目指す」「即時実行で、ユーロについて1ユーロ=1.20フランを下回る為替レートを容認しない。この下限レートを断固たる決意を持って防衛する。無制限に外貨を購入する準備がある」と発表し、市場で大量の「ユーロ買い・スイスフラン売り」の介入を実施しました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 日足)
その結果、1日で1.10フランから1.20フラン台まで「ユーロ高・スイスフラン安」が急激に進んでいます。
その後もSNBは1.20フランに大量の買い注文をおいて下落を阻止しており、この先、市場と政府の激しいせめぎ合いが見られるときがくると思います
ちなみに、スイスはG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の国ではないため、他国にあまり干渉されることがなく、比較的自由に市場への介入ができるのです。
その点が日本との大きな違いであることは認識しておいてください。
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