2020年に行うFXの確定申告(2019年(令和元年)分)、FXの税金に関する最新記事は、以下の【参考コンテンツ】でチェックしてください
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●【2020年版】FXの税金・確定申告を解説!パソコンやスマホからさくっと申告できる
2012年(平成24年)分の所得税の確定申告は、2013年2月18日(月)~3月15日(金)の期間に行う必要があります。当記事を公開した2月18日(月)は、ちょうど確定申告の開始日、ということになりますね。
確定申告は、会社員の方、いわゆる給与所得者には、あまりなじみのない制度だったりします。ですが、たとえ会社員であってもFX取引をしているみなさんは、知らん顔はできない重要な制度です。
「FXは取引してるけど、儲かっていないから関係ないよ!」って? いえいえ、そんなことはありません。
2011年(平成23年)まで異なっていた店頭取引FXと取引所取引FXの税制が、2012年から一本化されました。
これにより、2012年分の確定申告から店頭取引FXでは、損益通算できる商品の範囲が拡大したり、3年間の繰越控除を受けられるようになったりしているんです! たとえ1年間のFX取引の成績がトータルでマイナスだとしても、確定申告をすることで「節税」ができるかも!?
ならば、知っておかないと損! ということで、今回は、2012年分のFXの確定申告について、税理士の三瀬宏太(みせ・こうた)さんに、いろいろとお話をうかがいました。
三瀬さんは、法律事務所ホームワンに所属する若手税理士。フットサルが趣味というさわやかなスポーツマンです。実は、FXの経験もあるとのことなのでそのあたりのことについても、次回の記事で、ちょっとだけ聞いてみたいと思います。
■まずはザックリと! 確定申告ってそもそも何なの?
確定申告は、ザックリとまとめると、毎年1月1日~12月31日までの1年間に得たすべての収入や経費などを確定申告書に記載して税務署に提出し、納付する所得税額を確定する手続きのことをいいます。
収入から必要経費などを差し引いた金額に対してそれぞれの税率で課税される、という流れです。
ですが、冒頭で記載したとおり、会社員などの給与所得者は、自分で確定申告なんてしないですよね? いったいどうしてなのでしょうか?
「それは、勤め先の会社が所得金額を税務署に申告してくれるからです。だから会社に勤めている従業員は、確定申告をしなくて大丈夫なことが多いんですよ」
給与所得者であっても、勤務先以外に複数の所得がある場合は、トータルの所得がわからないので、確定申告が必要と話す三瀬氏。もちろんFXで得た所得も確定申告の対象となる。
「個人事業主や給与所得者であっても複数の所得がある場合は、トータルの所得がわからないので、確定申告が必要です。たとえば、FXや不動産所得、副業で得た収入があるなど、会社が把握している所得以外に収入がある場合は、確定申告が必要です」
■FXの税金について、いろいろと教えて!
ここからは、肝心のFXの税金について、アレコレうかがいます。
所得税は、その性質ごとに10種類の所得に分けられると聞きました。FXの税金は、その10種類の所得のうち、どこに区分されるのでしょうか?
「FXの税金は雑所得に区分されます。この雑所得の中の『先物取引に係る雑所得等』に該当し、通常の雑所得とは課税方法も異なってきます」
「先物取引に係る雑所得等」って、なんだか名称が長くて、言いにくいですね…。普通の雑所得とは、どう違うのでしょうか?
「たしかに、言いにくいですね(苦笑)。普通の雑所得とは、税金計算の方法が違います。通常の雑所得は、いわゆる総合課税。ほかの所得と合算をして、税率が確定します。
一方、FXを含む『先物取引に係る雑所得等』は、申告分離課税です。ほかの所得とはまったく別に、分離して課税されるんです」
なお、原則として、未決済ポジションの含み益・評価益(スワップを含む)は、課税対象外となります。課税対象となるのは、あくまで決済して確定した利益です。
また、申告分離課税の税率は、一律20%(所得税:15%、住民税:5%)。
ただし、2013年~2037年の25年間は、所得税に2.1%復興特別所得税が課されますので、期間中の税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)になりますよ。
■2012年分から店頭取引FXと取引所取引FXが同じ税制に!
では、FXの確定申告において、対象になるのはどんな人なのでしょうか? たとえトータルの利益(為替差益やスワップ)が数百円や数千円でも申告が必要!?
「いいえ、そうではありません。基本的に、1カ所から給与の支払を受けている人で、給与所得と退職所得以外の所得の合計が年間で20万円超になると申告対象ですので、たとえ給与所得者であっても20万円を超えたら申告が必要です。20万円を超えなければ、申告は不要となります」
1カ所から給与の支払を受けている人で、給与所得と退職所得以外の所得の合計が年間で20万円超になると申告対象。会社員でも20万円を超えたら確定申告が必要だ。
なるほど。会社員でも20万円を超えたら申告が必要、なんですね。
続いて、2012年の税制一本化で押さえておきたいポイント、変更点や注意点を教えてください。
「まずは、前提として…2011年まで、店頭取引FXと取引所取引FXは、総合課税の雑所得か申告分離課税の雑所得かで処理が違っていました。
同じFXなのに、取引所取引FXか店頭取引FXかという点で、税金の取扱いが違うのはおかしい! ということで統一され、2012年からこれが申告分離課税で処理が行われることになったようです」
税制一本化のポイントをまとめると、以下のとおり。具体的な話に入る前に、ざっと押さえておきましょう!
【税制一本化のポイント】
・ 申告分離課税で税率一律20%(所得税:15%、住民税:5%)に統一(※)
・ 店頭取引FXと取引所取引FXで損益通算が可能
・ 店頭FXでも3年間の繰越控除を受けられるようになった
(※編集部注:2013年~2037年は、所得税に2.1%復興特別所得税が課されるため、期間中の税率は20.315%)
■店頭取引FXと取引所取引FXで損益通算できちゃう!
冒頭で触れたとおり、店頭取引FXも取引所取引FXと損益通算できるようになったり、3年間の繰越控除を受けられるようになったそうですが…具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?
まずは、損益通算から教えてください。
「たとえば、店頭取引FXと取引所取引FXの両方で取引をしている人がいた場合、年間の損益が店頭取引FXでプラス、取引所取引FXでマイナスになったとします」
「この場合、2011年までだと取引所取引FXで発生したマイナスについて、繰り越すことはできても、店頭取引FXと取引所取引FXで発生した2つの損益を通算することはできませんでした。
先ほど説明したとおり、雑所得の中の区分が異なっていたからですね。それが、2012年からは、税制の一本化によって両者の損益通算ができるようになったんです」
それは、投資家にとっては良いことですね!
「はい。ただ、注意してほしいのは、他の所得とは損益通算できないということ。あくまで、『先物取引に係る雑所得等』に該当する商品としか損益通算できません」
ああ、給与所得と損益通算できたら良いのに…。そう思いませんか!?
「そうですね…(笑)。でも、残念ながらできません」
■損益通算できる商品を確認しておこう!
「先物取引に係る雑所得等」に該当する商品の間で損益通算ができるということですが、ではその「先物取引に係る雑所得等」に含まれる商品にはFX以外にどのようなものがあるのでしょうか?
「商品先物取引、オプション取引、カバードワラントなどがあります」
ちなみに、CFDや日経225先物、バイナリーオプションとも損益通算できますよ。
株式の売却益などとは、損益通算できないのでしょうか?
「できません。株式の売却益はその目的等により事業所得・雑所得または譲渡所得に該当しますが、いずれの場合であっても『先物取引に係る雑所得等』とは、所得の区分が違います。
『先物取引に係る雑所得等』に含まれるかどうかを考えるポイントは、例外もあるかもしれませんが、差金決済かどうか、という点ですね。含まれるのは、証拠金を預入れて取引をする商品ばかりです」
■店頭取引FXも3年間の繰越控除が受けられる!
続いて、繰越控除について教えてください。
2012年から店頭取引FXでも3年間の繰越控除が受けられるようになったと思いますが、これを利用するにはどうしたら良いのでしょうか?
「控除を受けるためには、確定申告が必要です。この点は、個人も法人も同じ。個人の方で税理士を介さず、ご自分で手続きをする場合でも、ちゃんと申告をしないといけません」
では、過去にさかのぼって繰越控除を申請することはできないのでしょうか? 一昨年は申告したのに、去年は「うっかり忘れてた~!」 なんてこともありそうな気が…。
「その場合は、『期限後申告』または『更正(こうせい)の請求』を行ってください」
過去の申告をしていない場合は、『期限後申告』をし、申告はしたが金額に誤りがあった場合には、『更正の請求』という手続きになります。
『更正の請求』とは、納付すべき税金の額が多かったなど、税金の計算に誤りがあった際、一定期間、正しい内容に修正するよう請求することができる制度のことを言います。
「『更正の請求』は、最近、税制改正が行われて、平成23年12月2日以降に法定申告期限が到来するものは、請求できる期間が5年に延長されたんです」
(「【2013年版】税理士・三瀬氏に聞く確定申告(2) 海外FX口座は税率20%でなく最大50%!?」へつづく)
(取材・文/ザイFX!編集部・向井友代 撮影/和田佳久)
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